ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(27)

(27)続・カジノサバイバル   

「一体どういうつもりなの、ジョアン。」

賭博場から少し離れた、屋根のない開放的なバルコニー。まだ夕刻も早いうちなので人影もまばらだ。

「、、、、、姉さん?姉さんなのね、、。」

2つ上の姉を見下ろすジョアン。自分より背の高い妹を見あげるカレン。

この姉妹はなぜかその顔立ちが全く似ていない。赤銅色の肌にブロンド、頬が高くいかにもアメリカ人といったジョアンに対し、色白でキュートな体つき、日本人と言っていいような顔立ちに栗色のストレートヘアのカレン。

「あなたが出て行ってから母さん達どんなに心配したか、、。」

情感豊かなカレンはすでに涙声だ。

「あたしの事なんかかまわないで。」

冷たく言い放つジョアン。

「勝手な事言わないで。あなたを育てるのに二人がどんなに苦労したか、、。」

「治療なんてして欲しくなかったわ。」

「何て事、、、。あなたが今生きてるのは、その治療が成功したからなのよ。」

「こんな肌の色にされて、あんな辛い目にあってそれでもした方が良かったって言えるの?」

「馬鹿!」

「色が黒いってだけで、みんなあたしのこと馬鹿にしたり変な目で見るのよ。治療は失敗したのかってボブにまで言われた。」

「失敗してたら、こんなとこで日本人とゴージャスに遊んだり、お日様の光を浴びて自由になれはしなかったわ。命があるからこそあなたは、、、。」

「分かってる、あたしは自由が欲しかっただけ。」

「だから家を出たって言うの?」

「あたしの過去を知らない人の所で生きたかったの。別の所で違う人生を生きたかった。黒い肌の人間を差別しない世界。それに家族に四六時中気を遣われて暮らすなんてまっぴら。」

「あなたりっぱに仕事してるじゃない。がんばってるって聞いたわ。」

「姉さんが同じ仕事って分かってからね。」

「なぜ、今まで家に連絡もしなかったの。」

「姉さんだって私の事分かってたんでしょ。なぜ、居場所を知らせてくれなかったの?」

「それは、、。仕事上家族に知らせてはいけない秘密も、、。」

「ボブはあたしのことが原因でいなくなったの?」

「違うわ。仕事上のトラブルか何かで、、。」

「姉さんが今関わってる極秘のプロジェクトに関係がある?」

「それ、誰に聞いたの?」

「姉さんが今度配属になったのは父さんを探すために、、、」

「あのオ、お取り込み中すんませんけどオ、、、、そろそろテーブルに戻りません?」

ジョアンが去っていくと、ルパンはジョアンにこっそり付けていた盗聴マイクをカレンに見せながら言った。

「ゆっくり再会さしてあげたいけど、父つあんが怪しむとマズい。やっぱりあいつらイカサマだった。ジョアンがカードの手を教えてた。どっか隠しカメラが相手のカード覗いてる。あの賭け金も多分CIAが用意したんだ、こいつぁとんだサル芝居だ。」

「確かなの?」

「ああ。その証拠に彼女がいなくなったら父つあん途端に負けが込んで、稼いだ分の半分すっちまった。」

「妹は彼と組んで何をしてるの?」

「どうやら俺たちをおびき出す作、、、」

「ルパン逃げて!」

ながあ~く紐がついた手錠がすっ飛んできて、ルパンの手足に絡まった。

「はっはあ、気づくのが遅すぎたな、ルパン!」

同時に被ってるマスクも剥ぎ取られた。しまった、中に花火を仕込んどくんだった。

見れば、さっきテーブルを囲んだ相手の半数は銭形の仲間だった。奴らに取り囲まれた。

「あらま父つあん、新婚の嫁さんほっといて大丈夫?」

「新婚なんかじゃねえ、お前をあぶりだす陽動作戦だ!」

「やっぱり。父つあんにしちゃできすぎと思ったんだ。」

「このカジノに出没している情報は掴んでたが、こうノコノコと出かけて来るとは。」

銃を構えた男たちが数え切れないほど押しかけてきて、ルパンを取り囲んだ。ジョアンも逮捕状と一緒に銃を構えていた。

「父つあん、もしかしてどっかで逮捕状なくした?どやって俺を日本に連れてくのさ。」

「フフン、俺は善良な一般市民だ。犯罪者の逮捕に協力は惜しまない。貴様を牢屋にぶち込んだあと、ゆっくり日本で逮捕状を取る。」

「せ~こ~オ(=セコい)。邪道!」

「るせエ、お前を捕まえるのにせ~こ~ほ~(=正攻法)なんてあるかア!。」

ルパンが愛銃を懐から取り出すのと、その撃鉄に弾が当たるのが同時だった。

ジョアンが恐るべき手腕で狙い撃ちしたのだ。不覚にも取り落とすルパン。

が突然、彼の背中に背負っていた金属の箱から、炎が噴出した。

素早く銃を拾うと、ジョアンに向かってにやりと笑う。

「アンタ可愛い顔して凄腕だな。」

「不二子に聞いてなかったの?ミネアポリスでは勝負がつかなくて、二人で優勝カップを分け合ったのよ。」

ジョアンも負けずに言い返す。

ジョアンが2発めを放つ。同時のルパンの発射は空砲だった。弾はルパンの太ももを掠める。

「わざと外してんのかい。」

「実弾でなかったら心臓を狙ってるわ。」

「殺すなよ、生きたまま連れて帰らねばならん!」

周りの男たちからの集中攻撃。多分実弾ではないが当たれば眠らされる。

ルパンがジェット噴射して飛び去ろうとする寸前、カレンと銭形は左右から飛び出して腕をつかまえた。

左右の腕はやっぱりニセモノだ。手錠をつけたままのゴム手袋を握りしめ、いつものパターンで悔しがる銭形。

ルパンは中空に飛び上がった。リモコン操縦のグライダーを上空に呼び寄せながら。空にいるルパンに向かってバルコニーからエージェントたちが一斉に弾を浴びせる。

と、どこからか現れた数台の小型ヘリ。うるさく飛び回る蚊トンボのようなヘリの間を、すごい推進力のロケットでバッタのようにめまぐるしくルパンがすり抜けていく。

ヘリコプターどうしが衝突・炎上する中、カレンは人ごみをすり抜けて、バルコニーからひとりルパンを目で追った。再会した妹そっちのけにして。

彼女の瞳にはもう彼しか映らなくなっていた。

ルパンの本物の腕の袖には、カレンの短いメモ。腕を捕まえるふりして押し込んでいた。エージェントである以上彼女はルパンの逃亡を助けるわけにはいかなかった。

~ずっとあなたの味方よ。家で待ってる。~

可愛い豹のイラストが添えてあった。

「一緒に連れて行けないのは残念だが、父つあんの前でラブシーンなんて気の毒、目の毒だかんな。待ってなよ愛しのピンクパンサーちゃん、きっとお迎えに来るぜ。」

小型グライダーに飛び乗ったルパンは次に次元を思った。

あいつが加わらないヤマなんてワインのないフレンチ、夢盗まれた蛸以下だ。居所を敵に分からないようにしさえすれば、、いや待てよ、、分からないようにするんじゃなくて、、、。

次回に続く。

いやあ、読むのやめられなくなりましたね。

この小説の次回は、、不定期ですので、いつ次回が載るか判りません。2万回記念イベントもいつ載るか判らないので、こまめにチェックしてお見逃しなく。

ま~た会おうぜ。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (26)

(26) カジノサバイバル(ルパンには恋を、銭形には?)

カジノの絢爛豪華な個室。今はテーブル席に移り、カードにうち興じる銭形とジョアン。

すでに手持ちの金は10万ドルを超えた。

一晩でここまで稼げる客はそう多くない。周りにはすでに見物人がたかり始め、5人のカード客の周りには、一人ひとりにファッションモデルと見まがうようなホステスや、愛人の風情した女が腕を絡ませている。

ゲームはもちろんポーカーだ。

ポーカーフェイスにはほど遠いあんぐり口した銭形の耳に、ジョアンが何ごとかを囁く。

「あと2枚。」

銭形の持ち札を予想して、しばらく勝負師たちは腹を探り合う。

賭け金がそれぞれ前に積まれた。銭形がストレートフラッシュで勝負を決め、周りからため息が上がる。

「私はもう降りる。」

隣の席にいたゴージャスな背広を着た、太った男が葉巻をくわえながら席を立った。

入れ替わりに黒髪で、数本の金色に染めた前髪をまばらに垂らし、涼しい瞳、黒いあごひげを蓄えた背の高いイケ面男がその席についた。

日本で今ブレイクしている人気グループ「猜疑心」の人気歌手の一人にそっくりな彼。アメリカでも人気なのか、数人のドレス姿の女性たちが歓声をあげながら彼の周りを取り囲んだ。

「ロックで。」

酒を注文するや否や、彼はダイナマイトボディの体の線を見せつけ、淡いピンクのドレスを纏った小柄な連れの女の手を取り、隣の席に座らせた。

彼女の頬に軽くキスする。周りの女たちは一様にがっかり、といった顔でそばを離れた。

「もう一枚ね。」

「私も。」

再びテーブルにカードが配られ始めた。

カレンはジョアンにそっと目配せする。だが、ジョアンは気づかない。まさかこんな所で姉に会うとは夢にも思っていないのだろう。

ルパンに合図するつもりで、そっとハイヒールのつま先で彼の足を触った。会話で銭形の気を引いて欲しいのだ。

「初めまして。僕、日本から来た神路と言います、よろしく。」

「ああ、日本の方ね。」

銭形はカードの組み合わせを思案している風で、こっちに関心がなさそうだ。

「あの、おたく日本の有名な警部さんに似てるって言われません?」

「ああ、僕よく言われるんだなア。」

「(ボクってツラかい。)もしかして、あの有名なルパン三世を追ってる、、、。」

「追ってる?」

「毛利小五郎さんて言いましたっけ、、。」

「ありゃ探偵だ、ボクは銭、イタッ!!!」

隣に座ってるジョアンが銭形の足をハイヒールの踵で踏みつけた。

「どうしました?」

「ダーリン。」

ジョアンが銭形の額をせわしなく拭く。

「、、、リアのレストランで修行しましてな。」

「ああ、フレンチのシェフね。」

「いや、そっちは趣味でして。今は日本の企業戦士ですわ。不況の煽りを食って今は海外研修の身です。」

「大変ですね今はどこも。で、ルパン三世なんかを捕まえる暇はない。」

「あんた、何でその泥棒の名を知ってる?」

「噂ですよ、CIAの美人エージェントを誘拐して逃げている怪盗。」

「じつは私、その泥棒を捕まえる、、。」

ジョアンは勢いよく隣に並んだ脛を蹴り上げた。

いってえ!

蹴り上げたものは銭形の脛ではなく、向かいにいるギャング風の男の股間だった。ふんぞり返っていたその男が飛び上がって、テーブルの上にあったものが飛び散った。

「何しやがんでえ!」

男たちがその場をとりなし、女たちはテーブルからこぼれた酒や飲み物で汚れたドレスを拭いて席を立った。

その喧騒の中、絶妙のタイミングでカレンは妹を賭博場から連れ出した。

次回に続く。

ありがとうございます。このブログへのアクセス数が2万を超えました。

最終回にはまだあと39回(最終回は第65章を予定しています。)ありますのでどこまでいけるんだろな、、。

このブログを訪れてくれる方に「面白かった、続きを読みたい。」と思っていただけるようにしたいですね。お一人でも楽しんでくださったら、あまりアクセス数なんかにこだわらないことにしようかな。

ありがとね、一人で2万回もアクセスしてくれた君。、、、たったひとりだとしても感謝です。君のためにこれからも真心込めて書くかんな。

蛇足:この小説を完成した頃は「羞恥心」はまだ解散していませんでした。もちろんアメリカの大統領はオバマさんと決まってなかった。少々ネタは古いですけどそれなりに笑えたかな?

アクセス2万回を記念して、今REDが特別企画を考えてます。乞うご期待!

次回、ま~た会おうぜ。

P.S 今知りました。「羞恥心」は復活するそうです。

ウソだろ、と「猜疑心」に満ちたあなたはニュースを見るべし!

紳助さん、どうせなら限定復活なんて言わないで3人が爺さんになるまでこのユニット応援してやってよ。カミジ君もツルノ君も、ノクボ君も解散なんかすんなよ。

「神路」のあとは「鶴野」を登場させて、このルパン小説でもっと宣伝しちゃうぜ。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(25)

(25) 恋のかけひき

「ほんとに連絡しなくてもいいのか?」

「ええ平気よ。もう本部じゃ裏切り者ってレッテル貼られて、あなた以上のお尋ね者になってるわ。」

「じゃ、君の腕を見込んで手伝って欲しい事があるんだ。」

「私が?」

国営カジノの地下1階、つまり二人の愛の巣の上の階で、かつてのカジノ中央管理ルーム。ここも今ではルパンのアジトの一部になっている。

全世界のギャングや泥棒、海千山千の悪党のブラックマーケットが集まるベガスの、まさか国営カジノの地下にこの大泥棒の秘密のアジトがあるとは、FBIでも気づかないだろう。

ここなら日本にある大型銭湯の地下アジトより安心だ。警察に踏み込まれる恐れもないし、出口を間違って女湯に紛れ込む心配もいらない。

カジノの営業を円滑にするために、何百箇所に配置された隠し監視カメラの映像を映し出すハイビジョンTVが何十も備え付けられている部屋。ルパンのアジトとなった今もまだ稼動している。あの勝鬨橋の近くの「紅屋」の地下の十倍の規模の設備が備わっていた。

たびたび命を救ってくれたルパンに、カレンは感謝以上の感情を持った。少なくとも彼は体を張って彼女を助けたと信じているに違いない。

だが実は、ルパンを誘惑して籠絡し、味方についたと見せかけて行動を逐一報告する指令を受けていた。つまり恋人になったと思わせ、ルパンのこれからの計画と宝の地図の秘密を探り出す任務だ。

ハネムーンのような甘い関係を偽装しながら、後ろめたい気持ちと彼に惹かれていく気持ちでカレンは日々揺れ動いていた。

今夜の二人はちょいとシビアに、これからの盗みの計画を練っていた。カジノのTV映像を部屋全体に映し出しながら、ルパンのノートパソコンの画面に見入っていた。

「どう思う?この映像。」

「一体これ、どこなの?」

「ZEDの中にある古い病院の跡。つまりペンタゴン・CIAが持ってるかつての医学的な研究資料や秘密の開発薬品、生物兵器の倉庫の名残ってわけさ。」

空撮した巨大企業の敷地全体の写真や、たくさんの建物の配置、建物の建築見取り図、設計図、3Dで示されたそれぞれの施設の空調施設、排水管、電気系統の配線図、ガスや水道の配管。

つまり泥棒が盗みに入る前に調べておくあらゆる情報が立体映像になって一つのファイルに収まり、最も適切な侵入ルートを示す線が赤く光って示されていた。

「こんな極秘のデータをどこから盗んできたの、ルパン。」

「この情報が信頼できるかどうか調べて欲しいんだ。」

「待って、この空撮写真は簡単に手に入るわ、私は本部の情報管理室にいたことがある。もしかしたらハッキングして、パスワード入れればこのデータの一部が取れるかも、、。」

彼女はてきぱきとサイトにアクセスし、プロの腕で15分ほどかけてデータを探した。

「あったわ、同じファイルの一部。どうやらデータは本物みたい。ZEDにあるCIA管轄の、かつては軍の病院やCIAの研究施設のあった建物の地下。

今は戦争に悪用されては困る生物兵器、劇物や秘密の開発薬品が厳重にしまってある地下倉庫よ。

でもこのパスワードでもこれ以上詳しいことは調べられないわ。サイトを開けられないようにすごいセキュリティがかかってる。」

彼女はふと、ルパンの目がきらきらし、じっと彼女を見つめているのに気づいて微笑んだ。

「どうしたの?」

「すごいんだ、君って。悪党や泥棒なんか捕まえる仕事より、ネットで商売すれば世界中を相手にできる。いい男が言い寄って来るぜ。」

「でもここへ入り込むのは至難の業よ。」

画像を見ながらさらに情報を引き出すカレン。

「へ~えそうなんだ。よく見せてよ。」

言いながらカレンの肩に後ろから手を置き、彼女が振り向いた弾みにキスしようとする。

そうはさせまいと体をそらして避けるカレン。

「この基地に入るまでにレーダーで探知されてしまうのよ。例え内部に入れても何十ものセキュリティを突破しなけりゃ。」

「それも君に協力して欲しいんだ。」

いかにルパン三世と言えど、ギャングや一般企業とはケタ違いにセキュリティや防衛施設が整っているCIAの秘密基地に潜入するのだ、相当の計画を練らなければならないだろう。

おそらく世界一難攻不落の、最高水準のハイテクな技術力を持った施設に、潜り込もうというのだ。

「こんなデータを一体どこから手に入れたの?」

「ナインシュタインが博物館に置いたニセ地図の羊皮紙の中に、マイクロチップが埋め込んであった。それがこれさ。」

「あなたが盗み出すのを知ってて?」

「俺に盗み出させたかったのさ。こんなに厳重な金庫にしまってある、ある物を。」

「彼の経歴は見たでしょう。あそこの主任研究者なのよ。それなのに自分で持ち出すことができなかったの?」

「奴はCIAに何かの理由でマークされてる。怪しまれるような事をして、国家反逆罪にでもなったらこれまでのキャリアが台無しになるんだろ。この男を知ってる?」

ルパンが差し出したのは、かつての宿敵「白乾児(パイカル)」の顔写真だった。

「十数年前、俺はこの男にすんでのところで殺られるところだった。この男はその当時全く知られていなかった技術で俺を脅かした。

体に塗った薬品のおかげで、弾を通さない超硬質の皮膚を持っていた。俺はその謎を解き、奴の持ってた化学式で合成した薬を全身に塗っていたおかげで命が助かった。このデータには、なぜか、あの薬の化学式が添付されていた。」

「本部で過去の内部の犯罪者のファイルを整理したことがある。確かZEDの、当時は軍専属の病院から特殊な薬品を盗んで、行方不明になった男の履歴を整理したことがあったわ。その男に似てるかも。」

「名前は分かるか?」

「よく憶えてない。確か日本人で、、、カリタとかカバタとか、、。」

「鎌田?」

「そうそう、そんな名前。」

日本人、多分あの化学式と薬を盗み出した男。優秀な研究員だった男が、なぜキャリアを棒に振ってまで盗み出さねばならなかったのか。

「その病院での過去の研究とか、入院患者とかのリストは調べられる?」

「できなくはないけど、、、かなり高度になるわね。産業スパイどころじゃない犯罪行為になるけど、、。」

「やってくれよ。」

「、、、、あのね、あなた私を何だと思ってるの、泥棒の片棒を担がせる気?」

彼を振り返り、腕を組んで言うカレン。口調とは裏腹に目が笑っている。

「もと優秀なCIAエージェント。今は泥棒の恋人兼普通の女の子、、、、になりかけてる。」

今度は肩をおさえ逃げられないようにして、ま正面から額にキス。

「自惚れてるのね。」

再び背を向けて、画面を見つめたまま、後ろに手をのばして彼のモミアゲを触る。

「普通の女の子に戻るんじゃないのかい?この仕事が終わったら。」

後ろから首筋や両頬にキス。カレンがその気になるまでありとあらゆるサインを送る。

「じゃ私にも、協力してちょうだい。」

パソコン画面を見ながらそれ以上キスさせまいと彼の頬に手をあて、彼が掴んでいる片手を振りほどいて言う。

「何を?」

「前に話してた行方不明になってる父を探し出すの。あの巨大基地で働いてて、行方が分からなくなった、、、。」

「お!」

カジノの様子を映し出してるTV画面をチラリと見たルパンが声を上げた。

「父つあん!なーんでこんなとこまで来て遊んでんのオ~。俺を捕まえに来たんじゃねえのかい。」

画面に映っているのは、カジノのルーレットで馬鹿勝ちし、山のような札とチップかかえて高笑いしている銭形だった。がらにもなくタキシード姿。蝶ネクタイがダサすぎ。

何と隣には美しくドレスアップした女まで連れている。

「いやあ、父つあんもやるねえ。」

イカサマなんてワザ、父つあんに出来っこない。でも俺でさえ、あそこまで勝つのは実力では無理だ。

よく見たらその隣で笑いながら父つあんにキスを浴びせているのは、いつかアンデスで引っ掛けて騙した麻薬取締り捜査官、不二子とつるんで俺を拉致しようとしたあの女だった。

「こりゃ参った。とうとう父つあんも、おさまるとこにおさまるってか。」

幸運を祈る、とばかりにTVのスイッチを切ろうとする。

カレンの様子がおかしい。

「どうした?」

「別に、、。」

「隠し事はよそうぜ、俺は君に何もかも話したつもりだ。俺たちが信頼できるパートナーになれなきゃいい仕事は出来っこない、君のやろうとしてる事にもうまく協力できない。」

「あの子、私の妹なの。」

「誰?」

「あの日本人の隣に座ってる子は、私が高校生の時家出した、二つ下の妹よ。」

「CIAのジョアン・スミスが?」

「所属してるのは本部の情報で知ってた。麻薬取締り捜査官は組織管轄が全く違うの。でもまさか、こんな所で会うなんて。」

たちまち大粒の涙をはらはらと落とした。大きな瞳はまばたきもせずに前を見つめている。何か過去の辛い出来事を思い出しているのだ。

横顔をしばらく見つめていたルパン、彼女が愛おしくてたまらなくなった。後ろから彼女を包むように抱きしめた。彼女はされるがままに涙を流している。

自分には分からない彼女の苦しみを、いっときでも忘れさせてやりたかった。頬に唇を押しつけると涙のしょっぱい味がした。

とうとうカレンは彼の胸に顔を埋めて泣き出した。

超フェミニストはどう慰めていいのか分からない。彼女をそばにあったソファーに横たえた。

今日までこの男にしては紳士のマナーを守ってきた。が、惚れた女とここまで四六時中一緒にいるなんて初めてだ。

孫悟空は自分に課していた心の箍(タガ)を、手錠もどきに一瞬にして外してしまった。

「ここでいい?」

「、、、いいわ。」

自分も脱ぎながら手際よく彼女の服を脱がす。

再び唇が近づいてきた時、カレンは観念したように目を閉じた。

しばらく時が過ぎた。

カレンは脱がされた服で体をそっと包まれた。

「一緒に行こ、上へ。」

カレンが目を開けると、彼は後ろを向いたままカジノに行く正装に着替えるところだった。

「スパイなんてやめっちまいな。そんな無理してるとは思わなかったな。ターゲットじゃなくて男としてつきあってくれるまで何にもしないよ。」

「ごめんなさい、そんなつもりじゃ、、。」

彼を嫌いなわけがなかった。でも何も言えない。

「別れた妹がこの上にいるんなら、是非会いに行かなきゃな。」

ジョアンと一緒にいるのは、ルパンを命がけで追っている男だと聞いた。

私のために?誰にも捕まらないため、殺されないためにあなたはここに潜んでいるのに、、。

カレンは起き上がって裸のまま後ろから彼を抱きしめた。そうせずにはいられなかった。

ネクタイ締めていたルパンの方が驚いて、彼女を振り返った。

そしてにっこり笑って言った。

「大丈夫、父つあんにも、君の組織にも気づかれないようにうまく会わせてあげる。」

「私、服持ってないわ、この前のドレス破れてるし。カジノに行くのにこれじゃ、、、。」

「まっかせ~なさ~い。」

隣の部屋から用意していた衣装を一揃い持ってきた。淡いチェリーピンクのカクテルドレス。パールのチョーカーとイヤリング。白い可愛らしいハイヒールパンプス。黒は好きではない。

「君とカジノで楽しもうと思って用意しといた。あ、それとこれも、、。」

一緒に揃えたドレスと同色のランジェリーも渡す。サイズまできっちり調べて。本人の言う通り女にはマメ・マメな性質(たち)らしい。

たちまち真っ赤になるカレン。毎夜ベッドを共にしている男相手に小娘みたいに初心(うぶ)な女だ。

それを見つめる純情男、もうメロメロ。

二人はカジノにふさわしいスタイルに着替え、腕を組んで上へ上がっていった。

もちろんルパンのほうは素顔と言うわけにはいかなかったが。

次回に続く。

日本の銭湯の地下にあるルパンアジトの構造は山上正月さんのお描きになってるルパン三世Yの6巻第23話でお確かめ下さい。

次元と五エ門が出口を間違えて、女湯の方へ上がってしまうという話。

ルパン三世のYとかMとか、モンキーパンチさんのルパンじゃないと思ってる人が結構いるけど山上さんのストーリーは粋で奇想天外で好きですね。

ルパンがいい男過ぎてちょっとTVアニメの主人公のルパンとイメージ違いますけどはまりますよ。

毎回見に来てる君、ありがとよ。来週は俺が父つあんと絡む話だ。題して「カジノ・サバイバル」だ。

え、古い映画の題名みたいってか?

映画より面白いんだな、これが。

次回、ま~た会おうぜ!(山田康雄さんの声で)

追伸:

毎回トラックバックがたくさん来てるんで、俺が好きなのは公開することにしました。でもやっぱりルパン三世の記事が読みたいんだけどな、、。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(24)

(24)天国と地獄

カレンが頭を上げると、車からほんの1メートル先に、ルパンの腕と銃があった。

「お待たせ。」

何事も無かったかのように、平然とした顔で銃を懐にしまう。

カレンははっとして後ろを見た。

追いすがって来た悪漢が、30メートルほど後方で仰向けに血を流して倒れていた。

下りて確かめる。男の額のど真ん中に穴。多分即死だ。

「殺さなくても、、。」

「こっちが殺されてたら、んなこた言えねえだろ。」

軽々と車に跳び乗ってきた。

「良かった、車に傷つけなくて。」

「かまうこたねえ、どうせ借りモンだ。」

この男やっぱり極悪非道、正真正銘の悪党だ。

「ところで運転と撃つのとどっちがいい?」

「殺さない方。」

「じゃ、ハンドル頼む。」

「OK。」

泥棒とスパイはそれぞれ役割分担を果たした。

外へ出るとオープンカーに向けてヘリの男が爆弾を投げてきた。カレンが巧みなハンドルさばきで右に左に避け、ルパンが悪漢を狙い撃ちだ。

ヘリの運転席側のガラスにひびが入る。車は低い屋根のあるアーケード街に突っ込む。ヘリは追撃したが、浮上しそこなって屋根の一部に激突、炎上。迷走しながらどこかへ遠ざかっていった。

車はにぎやかな歩行者天国の道路を突っ走る。人々は逃げ惑い、真っ赤なポルシェは人の波を押しのけて闊歩した。そのまま街の大通りへ抜け、まっしぐらに走って国営カジノの重厚な宮殿の前に到着。

スタッフは恭しく待ち受けてドアを開けてくれた。

ところがルパンは車を預けると、正面玄関へではなく反対側の従業員用の駐車場へカレンの手を引っ張って行った。

「表から入るには、俺は有名すぎるんでね。」

従業員用の立体駐車場の隅に隠れ家直通のエレベータがあった。それに乗る。ルパンは地下2階のスイッチを押した。

個室の薄暗い照明に照らし出される男の無表情な横顔。不気味なほど寡黙だ。それは陽気で脳天気な芸人でも、さっきまで彼女をエスコートしていたセレブなイケ面でもなかった。

一体、幾つの顔を持っているのだろう。外見だけでなく人格さえ一瞬にして変えてしまう恐るべき男。

彼からは血の匂いがした。追って来る敵をその手で殺したのだ、おそらく全員。

カレンはつないでいた手をそっと離した。

アジトについて行くのは果たして安全だろうか。アジトを知る自分を弄んでから始末するか、監禁して人質に取るつもりでは、、、。

彼はさっきからずっと押し黙ったままだ。

ドアが開き、アジトへ向かう薄暗い通路が現れた。少し遅れて歩きながら、カレンはこの静寂を何とかしたかった。

「私を殺すの?」

「まさか。ここで君と生き延びるためさ。」

「私はあなたを轢き殺したかもしれないのに。」

「君は俺を殺さない。」

「悪党は、、、、みんな死んだの?」

「君を助けたかった。殺らなけりゃ殺られちまう。」

「人を殺したら天国へは行けないわ。」

「天国がほんとにあるんなら、君と行きたい。」

ふと、彼が立ち止まって彼女のほうへ振り向く。

「君は殺さない?誰も?」

ふいに見えない弾丸が彼女の心に撃ち込まれた。

「誰も、、、、、誰も殺したくない。」

この仕事についてから今まで数え切れないほど嘘をついてきた。悪党を罠にはめるためだ。嘘をつかなければ殺される、殺さなければ殺される。

でも今は彼に嘘をつくのがこんなにも辛い。心臓に打ち込まれた楔を彼にだけは気づかれてはならない、、、、、、。

「一緒に死ねたら地獄から脱獄して君を盗みに行くかな。でもそれじゃ君が幸せになれないね。」

彼は私のために命賭けで人殺しまでした。私を先に行かせたのはその場を見せたくなかったからだ。ケダモノじゃない、心を持った人間だ。残虐行為をした自分を呪い、心に傷を負って血を流している。この無表情は癒えない痛みを隠すマスクなのだ。

痛みはストレートに跳ね返って彼女の心にも大きな傷を負わせた。

涙が頬を幾筋も伝ってポタポタ落ちた。大きな瞳から心も一緒に溢れた。

「私のために堕ちるんなら、地獄までついてくわ。」

彼が息を飲んで彼女を見つめる。

感情のうねりが二人の中で同時に堰を切った。

暗がりで互いに唇を貪りあう。カレンは地獄の業火で彼とともに焼かれる自分を感じていた。

うっすらと瞳を開けると、心がむき出しの狼の眼がそこにあった。

抱き合ったまま、ルパンが壁の隠しスイッチに手を触れる。

アジトの扉が開いた。

「ようこそ姫君、難攻不落の俺の城へ。」

狼は胸に手を当て、不埒なほど馬鹿丁寧なお辞儀をした。手を取って彼女を迎え入れる。

地下2階にあるアジトは何でも揃った快適な住まいだった。厳重なセキュリティシステムで守られているほかはパリのアパルトマンにでもいるようなたたずまいだ。

10分後、シャワールームでシャワーを浴びているカレン。

案の定、ルパンがあとから無理やり押し入ってきた。あわてて胸を隠すカレン。

「ここ狭いから二人は無理よ。ちょっと待ってて。」

「あのホテルでの続きするはずだったろ?」

「え、そんな約束、、、、だめよ、、だめなの。」

キスしようとするルパン、手で彼の口を押さえるカレン。

「俺はだめ?」

「そうじゃなくて、、、、、。」

ルパンはもう彼女を体ごと抱きしめていた。

お湯が二人の体の隙間を激しく流れ落ちていく。

「こういうの苦手なの。私あんまり感じないって、、」

「そう?俺も。だから気にすんなよ。」

言いながら首筋にキスする。

カレンが可笑しそうに笑い、指で黒々としたモミアゲをつまむ。

「嘘つきねえ、あなたって。」

「泥棒は嘘つきの始まり、いやその逆だってか。感じないって誰に言われたの?」

彼女のその指を握りしめ、ほっそりした白い指を口に入れてなめ回すルパン。

シャワーのお湯のせいではなく、体の芯から熱いものがこみ上げてきた。

「前に付き合ってた人。」

「そりゃひどいね。でも俺なんかもっとひどい事言われた事ある。」

「なんて?」

「この色ボケ変態スケベオヤジ、変なとこ握らないでよ!」

いきなりカレンの声がルパンの口から飛び出した。

カレンはしばらくあっけにとられ、やがて大口開けて笑い出す。笑い声がシャワールームに響き渡る。

「、、、だってよ。俺そん時まだ電車のつり革しか握ってなかったのに。」

あんまり笑いすぎて涙を拭くカレン。

「確かにひどいわね、今同じ事言おうと思ってた。」

「だよな。きれいなモンに触りたいのが男だよ。スケベと違う、サービス精神旺盛。君も元カレを見返してやれよ。アタシは男をその気にさせる天下一のお色気娘よって。」

「そう思う?」

「だからそれ証明しようや、俺と。」

カレンがまた大口をあけて笑ったので、ルパンは口で口に蓋をしてから背中を思い切りくすぐった。カレンはルパンの頭からお湯を浴びせて応戦した。そのまま二人は絡まり合う。

これで3度もこのおかしな悪党に驚かされた。でもなぜか丸め込まれても抵抗できない。彼となら地獄の底ででも楽しめそうだ。

シャワールームの刷りガラスに映る二人のシルエット。カレンは乱れ、このまま天国へ駆け上ってしまいそうな感覚に酔いしれていた。

彼に抱かれてベッドルームに運ばれていくのも気づかないほどに。

次回に続く。

ルパン三世母の会、友の会の奥様、こんな破廉恥なルパンを書いてしまって誠に申し訳ございません。ほんとのルパン三世は、、、、、、もっと破廉恥です。(笑)

日本全国8千万のアダルトの諸君、こんな中途半端でこの章を終えてすんません。お楽しみはハイこれまでよ。

青少年、良い子のみんな、もう寝る時間だゾオ。次回を楽しみにな。

ほいじゃま。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(23)

(23)泥棒VS女スパイ

結局、カフェでの夕食の約束をすっぽかしてしまった。めったに人との約束を破ったことのないカレンだったが、急に仕事が入って待ち合わせ場所に行けなくなってしまった。断りのメールを送っても、相手はしょっちゅうメルアドを変えているらしくて連絡がつかなかったのだ。

帰りがけに自宅のポストを見ると、ルパンの手書きの招待状が入っていた。またしても真紅のバラの花束が添えられて。

あきれるほどしつこい男だ。でもすっぽかした分の埋め合わせだけはしなくては。

正装でと書かれていたので、彼女の持ってるのでは最高のドレスを身に着けて来た。

今夜の夜空の色、踝まである無地のシルクサテンのドレス。照明の当たり方によって銀河が流れるように、岸辺の小波のようにきらきら光っている。

ふわりと羽織った薄地のストールの下に白い肩が透けているが、それほど大胆に胸元はあいていない、上品な仕上がりだ。

アクセサリーはパールネックレスだけ。仕事柄アクセサリーは邪魔になることがあるからだ。

「こないだは待たせて悪かったね。」

ビル最上階、高級レストランの入り口にあるVIPルームで待っていたカレンが目を上げると、レモンイエローの花束を持った白いタキシード姿の男が、人懐こい笑顔を浮かべて立っていた。

胸に小さな生花のコサージュをつけた申し分ないスタイル、イケ面と言ってもいい程の男だ。

誰かしら、まさか彼じゃないと思うけど。

「あの、、。」

「やあ、お久しぶりです。これナマの俺ですけど、、、、分かる?」

手を出して握手を求めるイケ面男。

「あなた、、、、この前の人?」

化かされてる気分のカレン。

「実はルパンに化けたゴリラだったりして。」

彼の瞳が茶目っ気たっぷりに踊っている。

そもそも最初の出会いが悪すぎた。安宿でナンパする男と引っ掛けられる女だもの。目の前にいる男はどう見ても資産家の御曹司か、メルセデスベンツなんかを乗り回す大会社の若社長といったところ、多分イタリア系だわ。

カレンは今までこんな豪奢なホテルのレストランに一人だけ招かれたことがなかった。

ここはラスベガスでも有名なシェフが取り仕切る超高級レストランだ。金曜日だというのに広いフロアに人は思いのほか少なく、窓側は二人の貸切状態。実はルパンが窓側10テーブルを借り切っていた。

最上階の一番窓側の席から、カジノの街の「1000万ドルの夜景」が宝石のように煌いているのが見える。

ルパンに花束を渡され、エスコートされて予約の席についたカレンは何となく落ち着かない。

椅子を引いてくれて席に着いた時から最後のデザートまでの2時間、映画か夢の中のような時が過ぎた。

テーブルの中央の丸いワイングラスの中に色とりどりのキャンドルの炎が燃えて、ファンタスティックだ。

最後のメニューが運ばれてくるとフロアの灯りが落とされ、窓の外の市街地の灯りが二人の足元に絨毯のように広がった。

「あなたとの取り引きがまだすんでなかったわ。」

フルコースのディナーが終わるや否や持って来た資料を渡そうとする。

「もういいんだ。それ、口実。」

「何の?」

「君に見せたいものがある。」

「見せたいもの?」

「こっち来て。」

ルパンがカレンの椅子を引いて窓際へ誘う。足元まである窓だ。外に広がる宝石をばらまいたような光の絨毯と煌く星を並んで見つめる。今夜は晴天、どこまでも澄み切った夜空だ。

「きれいね、、。」

カレンはため息をつく。それ以外の言葉が見つからない。

「だろ。ここがベガスで一番の場所なんだ。君と一緒に見たかった。」

しばらく二人で眺める。

彼がいつの間にかカレンの腰を包むように抱き、彼女は自然に寄り添う。

が、ふとカレンは我に返り、彼の腕を振りほどく。窓のそばに離れて立つ。

「あなた、私を味方に引き入れて何をしようとしてるの?」

「俺の顔、そんなに極悪人って書いてある?」

後ろからそっと寄って、彼女の栗色のストレートヘアに触る。今日はアップにして後ろでまとめている。おくれ髪がサラ、となびいて、右の耳の後ろにそっと何かが触った。彼女がちょっと緊張するのが分かる。

「これ似合うよ。今夜の君は最高だ、とても警官には見えない。」

彼が胸の生花を彼女の髪にそっと挟んでいた。香りのよいフリージア。もちろん発信機などは付けてない。

「あの時は必死だったから、、。」

「君に会いたくてあれからずっと馬鹿みたいにつけ回してた。」

「泥棒なのに警官をつけ回すの?」

「泥棒だからさ、君のハートを盗みたい。」

後ろから再び髪に触ろうとした彼からすり抜けるカレン。

「あのね、あなたに助けてもらって感謝してる、だけど仕事の付き合いよこれは。」

「これからは仕事抜きに付き合うっての、どう?」

「考えとく。」

「君、スパイにも警官にも向いてない。」

「あなたこそ、こんな人生してたら命がいくつあっても足りないでしょ。」

「この前君ん家からの帰りにあいつらにすれ違った。何とかまいたが、今度行ったら嗅ぎ付けられて君も危ないかも。」

「恨まれるような、何したの?」

「まあね、恨まれるって程じゃないが、あいつらの金塊320トン(約9600億円相当)頂いちまって。」

「彼らはそれを取り戻そうとしてるの?」

「いや、もうない。」

「どこへ、、、」

「ばらまいちまった。世界中の良い子のクリスマスプレゼントに。」

データに記されていた。世界的な海賊、広域テロ組織に指定されているあの「スターゲイト」が世界中から集めて隠そうとした金塊を、まんまと盗み出し一夜にして世界中にばらまいた男。

ではこれは怨恨による復讐なのか。

しつこく毎日のようにルパンを尾行する男たちは、同じようにしつこく足繁くカレンの家に通い詰める彼の足取りを追って、いつか彼女の事も知るに違いない。命の危険は彼と同じくらいある事になる。

「で、頼みがある。」

「たまに食事をするのはいいけれど、5分おきにメールくれたり、毎日家へ花束を届けるのはやめてくれる?」

「君の命が危ないんだ。俺と一緒にある場所へ避難してくれないか。」

何処へと言いかけた途端、ルパンの携帯のコール音がした。見知らぬ男からだ。

「ルパン、俺たちをコケにしてのうのうと生きていられると思うな、今度こそ終わりだ!」

夜景を映し出していた厚い窓の向こうに、黒光りの飛翔する物体が見えた、それは二人の立っていた場所の真向かいで静止した。

「伏せろカレン!」

分厚いガラスが粉々になって飛び散った。ルパンはカレンの体の上に被い被さって身を守った。迷彩色のヘリが真正面から機銃掃射してきた。レストランの客やスタッフの上げる悲鳴。エレベータに向かって避難を始める。

ルパンは機敏に彼女の前にテーブルや椅子を組み倒した。自分もその後ろに隠れながら、相手の様子を覗う。ほんの数十秒の間、掃射がやむ。カレンを抱き起こし、フロアの反対側にあったエレベータに向かって走る。

「こっちに乗れ!」

右端をさす。3台のうちの右端はVIP専用。直通で下まで降りられる。ただし4名までしか乗れない小型だ。

ルパンはVIP専用のカードを持っていた。カードでドアを開けた。二人が乗ろうとすると、隣のエレベータには従業員など人がいっぱいだった。一般のエレベータの方に乗れそうもないお客が4名ほど取り残されてこっちを見ていた。

「早く!」

その時カレンが辛そうな顔をしてルパンを見た。

自分たちだけこれに乗ってはだめ。

彼女の瞳がそう言っていた。2人がそのままぐずぐずしてると、4人が先にVIP用に乗りこんでしまった。もう満員だ。

ルパンはカレンの腕を引っつかむと別の道へ回った。あとは階段を行くしかない。二人は屋内階段を駆け下りた。

最上階といえ28階しかない、そう思って油断したのがいけなかった。屋上に降り立ったヘリから、階段を通じて悪漢が追いかけてきた。カレンを連れ、回り階段を必死で駆け下りる。

上から数人の男が弾をぶち込んでくる。駆け下りながら応戦するルパン。

ここで弾切れだ。いったん階段の隅に隠れて、弾を装填しながらカレンに言う。

「先に地下へ降りてて、これ車のキー、行けば分かる。今からアジトに向かう。」

「私も持ってる。」

カレンが自分の愛銃ブローニングを見せる。

「先に行ってくれ、頼む!」

カレンは後も見ずに一人で非常階段を駆け下りた。彼なら大丈夫だ。

途中で悲鳴が聞こえ、誰かが吹き抜けを下まで落ちていったが、そっちに目を向けないで駆け抜けた。

彼じゃない、絶対に。

1階から地下のガレージに抜けた。彼のキーには番号がついている。キーレスエントリー式の車だ、鍵が開いた車が彼のに違いない。

広い地下ガレージを走り回ってどの車かを確かめようとした

駐車場の通路を横切ろうとした彼女の前にハイスピードで灰色の車が突っ込んできた。とっさに身を翻したが、すんでのところで轢かれるところだった。その車から2人男が下りてきてカレンを追いかけた。

ドレスにハイヒールでは追いかけっこに勝ち目はない。ゆっくりと手を上げて降参するふりをした。向こうが女一人と思って油断したその隙に一人の顎を蹴り上げ、ひっくり返って落とした男の銃をさらに遠くに蹴飛ばし、もう一人の男が銃を自分に向ける前に言い放った。

「女一人になんてザマなの?」

一瞬の隙をついて、男より早く彼女の愛銃が火を噴いた。心臓ではなく肩を打ち抜かれて男はそばの柱にすがりついた。素早く手錠をかけ、柱に縛り付ける手際はさすがCIAだ。

その瞬間、彼女が弾よけにすがっていた真っ赤なオープンカー、ポルシェのロックが解除された。鍵についてる番号と足元に書かれている番号が同じだ。

跳び乗って鍵を鍵穴に差し込むと、自動でどこかにランプがつき、車止めがコンクリートの床下に沈んだ。車を発信させ、出口に向かう。

もう一人の敵が再び彼女を追いすがる。

と、100メートル先の駐車場の出口でポルシェと同じ派手な色のジャケット姿のルパンが立っていた。

良かった、無事だった。

彼を乗せるためにアクセルを緩める。

ところが彼は懐からワルサーP38を取り出し、真正面にいるカレンに向かって狙いを定めた。

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片方の眉を吊り上げ唇の端を曲げた男、あれはニセ者?

いいえ、絶対に本人だわ。すると初めからこれは彼の計略だった。私を油断させ、ここで始末するために。

、、、、だったらやるしかない、、。

緩めたアクセルを再び踏んだ。フルスピードで突っ込んでいく。むろん轢き殺すつもりなどない、相手がどんな凶悪犯であっても。

車で突っ込めば避けるに決まってる。それが彼女の狙いだった。

対するルパン、片手でワルサーを構えたまま全く動じる気配はない。

キューン!

弾の発射とともにカレンは身を伏せ、そのままルパンの直前でブレーキを踏んだ。

地下駐車場に怪物の悲鳴のようなタイヤの軋み音が響きわたった。

次回に続く。

この小説は特に女性に楽しんでいただけるように書きました。でも男にも面白いシーンが次回あるかんな、乞うご期待。

ほいじゃま。

テロ組織「スターゲイト」とルパンの確執は、俺の創作小説「炎のたからもの」をお読みいただけば分かります。まだ読んでない君は、右サイトバーにある小説のサイト入り口から入ってお読み下さい。10編の作品、どれも傑作です。自分で言うのも自慢ですが。

(なんか、ルパンに性格が似てきたな、こりゃ。)

PS,女性向けって書いたらトラックバックが女性向けのがすごく来ました。これは「ルパン三世」のサイトです。ファッション系や芸能人の話題は削除します。あしからずご了承下さい。

「ルパン三世の話題を書いてくれ、俺も楽しみにしてっからよ。」

集客目的のトラックバックはお断りします。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(22)

(22)泥棒の休日

「ヒャッホー!も~う最高!君と一緒だもんな!」

カレンはあきれ顔で隣にいるゴリラを見た。

奴の格好といったら本物の猿以下だ。首から下は毛むくじゃら、どう見ても着膨れした類人猿と言うしかない姿で、鉄のバーに肩と腰を縛り付けられている。

ディズニーランドではなく、米国ユニバーサルスタジオ最新のジェットコースターに乗ってさっき360度回転したばかりだ。肩と腰を固定されてるだけの乗り物で、宙づりの両足は浮いたまま。逆さになっても文字通り手放しで喜んでいる。

カレンの方は同じ乗り物に4回で、さすがに飽きた。こちらは「キャー」とも言わない肝の据わった女。

その日指定されたベンチに座って待っていたら、ゴリラの着ぐるみが愛想良く手を振って近づいてきた。そいつはパントマイムで隣の席に座っていいかと聞く。

「いいわ、少しこっち詰めてね、そこは指定席なの。」

毛むくじゃらのでかい尻を振って腰を下ろすと、カレンがベンチからずり落ちそうになった。

「俺が指定したんだけっども、二人で座るには狭すぎたな。」

カパッと着ぐるみの頭の蓋が開いたと思ったら、泥棒の素顔が笑っていた。

「お待たせ、10分遅れですまない。やっかいな奴らをまくのに手間取っちまって。」

「変装の名人て聞いてたけど。誰かにつけられてたの?」

「デートの相手に素顔で会えないなんて悲しいもんな。」

素顔には違いないが首から下はゴリラだ。初デートの日に動物の着ぐるみを着て現れる男なんて彼以外にはきっといない。

「さってと、お約束。ジェットコースターがいい?それとも飯にする?」

「例のデータ持ってきたわ、先に話を終わらせましょ。」

「こんなデート日和に仕事の話?」

「先に面倒な事済ませてからね。」

「分かったよ。じゃ済んだらデートしてくれよ。」

「仕方ないわ、約束ですものね。私の携帯に120回もメール送って54回留守電入れたのはあなたでしょ。」

「121回目さっきすぐそばで入れたんだ、分かった?」

「え?あ、そう?」

カレン、自分の携帯メールを見る。I LOVE YOUと15回書かれたあとに「3タク選べ。1、ジェットコースター 2、お茶か飯 3、映画」となっていた。

カレンは急いで1を選んで返信した。

こんな変てこな男と長居は禁物だわ。

メールを見ている間に変てこな男はカキ氷を買ってきた。カレンにレモン色の方を渡す。自分のは何もかかっていない氷だ。

ビール缶を腹のポケットから取り出した。

それでお腹を冷やすつもり?

どうするのか見ていると缶をあけ、カキ氷にビールをかけて食べ始めた。

唖然とした。食べるのを忘れて見入るカレン。

「も~暑くて暑くて、、、どうした?早く食べなよ溶けちまうぜ、やっぱ氷はこれでなくっちゃ。どう?君も。」

その後ゴリラの着ぐるみを来たままの相手に連れられ、ジェットコースターに乗る羽目になってしまった。乗り場でスタッフとすったもんだした挙句。

「お客さん、そんな服装で乗るのは困ります。」

「でもね、この下な~んもつけてないのよ。」

「だから着替えてまた出直して、、。」

「だあってこれが彼女と人生最初で最後のデートかもしんないでしょ。明日はもう会えないかも知れない人と一生の思い出作りに乗りたいんだと言ったら許してくれるよな、お兄さん。」

スタッフが答える前にさっさとジェットコースターのベルトを締めて座ってしまった。

ジェットコースターから下りたとたん、暑苦しいスーツ姿の怪しい男たち数人が向こうからやって来るのが見えた。

とっさにルパンはゴリラの頭を被って周りの子供たちにパントマイムで愛想を振りまいた。うっほうっほとやりながら、そばにあった屋台のフルーツショップから勝手にバナナを3本掴み、そのままバナナでジャグリングを始めた。そのうちバナナはもう1本増えて4本になった。

子供たちだけでなく大人や家族など、あたりに人だかりが出来始めた。人の波に気づいてか、スーツ男達は一人ずつ消えてゆく。

今度は3本ジャグリングしたまま、1本のバナナを左右に持ち替えながら皮をだんだんむいていき、最後に中身を着ぐるみの口に放り込んで食べた。皮だけになったのを捨てて、3本を後ろ手に放り投げて前で受け止め、深くお辞儀。大拍手。

バナナ屋のオヤジがモンク言いに来た。

「金払ってよ、あんた。」

その場で残り3本のバナナの皮を剥くと、ま、細かいこと言わずにと嫌がるオヤジを捕まえて無理やり口に突っ込み食べさせる。爆笑が起こり、この大道芸は店の宣伝と思った人たちが少しばかりバナナを買って去って行った。

拍手に気をよくした大道芸人はお調子に乗って着ぐるみのまま側転、バック転と大サービス。再び拍手が沸き起こった。愛想を振りまき、観客に向かって10回投げキッス。途端に捨てたバナナの皮でズルリと滑ってドタリとこける。

バナナの皮を引っぱたき、自分のお尻触って痛そうにしているうちにバナナの皮が跡形もなく消える。消えた皮に驚いてそこら中探しまくるオバカなゴリラの演技。あっと指差すと一人の観客の背中あたりから皮が出てくる。爆笑、再び拍手。

やがて日が傾き、観客は一人また一人と去っていった。

芸人はお辞儀をしながらあたりを見回した。デートの相手はとっくに帰ってしまったに違いないとガッカリしながら。

カレンは最初に会った時のベンチに座って一部始終を見守っていた。

ルパンはほっとしながら彼女に近づいた。ゴリラの面をカパとあける。全身汗びっしょり、クタクタ、ヘトヘトだ。

「カレン、ゆっくり話できないから今晩ここで待っててくれ。」

晩飯のレストランの住所を渡す。

「あなたって不思議な人。、、正体が知りたくなったわ。」

彼は笑った。

「俺の事だんだん好きになってきた?」

「あの黒服の人たち、なぜあなたをしつこくつけ回すの?」

「さあね、昔悪い事して俺にやられた奴が仕返しでもすんじゃねえの?」

「あっちが極悪人なのか、あなたがよっぽど悪い人なのか、、、。」

ふと気づくと、そばに5歳くらいの男の子がひとり立って、ルパンを待ち受けている。

「どうした、ボウズ。」

ルパンはその子に寄ってしゃがみ、人懐こい笑顔を向けた。

「おじさん、あしたもやるよね。」

「さっきのか?」

こっくりと頷く。

「明日は、、、もうやらないんだ。」

「どうして?」

男の子の顔がこわばり、泣きそうに見えた。

「ボウズ、どうしても見たいか?」

もう一度頷く。

「分かった、じゃそこで見てな。」

ルパンは面を開けたまま、3回側転、続けて2回バック転し、向こうへ行ったかと思ったら、すごい勢いで走って帰ってきた。つるつるの路面を膝で滑り込んできて止まり、そのまま男の子を肩車した。

「ボウズ、遠くはよく見えるか?」

「ウン。」

「さっき俺がやってた時よく見えなかったんだよな。」

「そう。」

「今度から、前の方で見せてって言いな。」

「ウン、分かった。」

「俺の肩車特別サービスだかんな、あすこの木に登ったら終わりだ。言うこと聞かねえとあのお姉さん魔女だから、お前に魔法をかけちゃうぞ。」

腰の高さの木の枝に男の子を座らせた。彼はお姉さんの方を目を丸くして見つめ続けた。

ルパンはカレンに向かって軽くウィンクすると人ごみに消えていった。

今日の取引はルパンが必要とするデータを渡す見返りに、彼のこれからの計画を聞き、地図の秘密を探る事だった。アルバート・ナインシュタイン博士の過去の経歴と現在の研究の内容をルパンに渡すはずだった。

CIA(中央情報局)の中枢で勤務している彼女は、ほとんど全ての関係者のデータを取り出せる部署に、以前は所属していた。

ルパンはそれを知って自分に接近して来たのだろうか。

彼の経歴は十分調べてきたつもりだった。女たらしのくせに次々と女に言い寄っては振られ、女に貢いでは捨てられ、最近は一味と言われる女にさえ裏切られたらしい。

今までに殺した人間は数知れず、マフィアのドンよりも裏社会では恐れられている世界的な怪盗。

本当にあれが世界に暗躍する凶悪犯なのだろうか。

彼のメモにあるのは彼女の自宅近くの行きつけのカフェレストラン。向こうも私の事を詳しく調べてるのかしら。

カレンはターゲットだからというだけではない好奇心をそそられ始めた。

この非情な仕事を始めてからそれだけは絶対にしないと自分に言い聞かせてきた。

それなのに、、、。

次回に続く。

ルパンが「殺しと善人の金には手をつけない」というポリシーを通してるのは「盗み」の手段としてであって、実際には殺した悪党の数なんて自分でも覚えていないほどだと思いますね。

あるオタク本によれば96人以上殺してるんだって。

どうやってそこまで数えたのか、どの作品までのトータルなのかを調べてみたいと思います。

、、、んな暇なことするわけねえだろ。

殺し屋じゃないにしても、捕まったら生きてるうちに牢屋から出られそうにないほどの犯罪者であることは確かです。正当防衛とは言えない状況で女だって大量に殺してるんですから。

ひとりにつき懲役15年としても1440年。(国によっては終身刑とか死刑とかじゃなくって、量刑を通算するらしいです。)殺しも殺したり、ほんとに極悪人。こんな男に惚れる女は最悪な人生でしょう。一緒に地獄へ行ける不二子のようなタフな女じゃなけりゃ。

ルパンがゴリラに扮する話は二つ。一つは「バビロンの黄金伝説」。ゴリラからだんだんチンパンジーに変身してますね、確か。

もう一つはTV2NDシリーズの第35話「ゴリラギャングを追っかけろ」で、ゴリラに扮した不二子の手下に騙され、仕返しに一杯食わせた話だったと思います。(違ってたらごめん。確認します。

ルパンは優れた軽業師でもあります。その腕前は「生きていた魔術師」でご覧になった方はお分かりでしょう。ジャグリングやトンボ返りはもちろん、綱渡り、マジックなどもプロ中のプロです。

このOVA「生きていた、、」は他の作品とは一味違った独特の雰囲気を持っていて、自分は大好きなんですが、あまり高く評価されていなくて残念です。

ピエロに扮したルパンが様々なマジックを披露しながら、ニセ銭形を翻弄する場面はとてもアーティスティック。他の作品にない「ビジュアルな美しさ」を堪能できると思います。まだ見てない人見てくれや。言っとくが、アクション期待してる君には向かないぜ。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(21)

(21) 海賊    

「五エ門様、私をいつか迎えに来てくださるのね。」

紫は五エ門の腕に飛び込みながら言った。

そして五エ門に向かって無邪気に微笑んだ。可愛らしい真っ白な山椿を右耳の上につけて。

彼女はあの時のままだった。最後に見たのは伊賀の隠れ里。花嫁衣裳を着た彼女のうなじの白さ、うっすらと上気した頬の美しさは、生涯忘れる事ができない。

「修行を積んで必ず戻ってくるゆえ、ご容赦を。」

「いつ帰って来て下さるの?」

「それは、、、。」

「あん!五エ門様のいじわる!いつまでも待っててあげないからねー。」

彼女はくるりと踵(きびす)を返すと、笑いながら走り去って行った。

「いつまでも待ってては、あげないからねー。」

山彦のようにこだまする彼女の声の後を五エ門はあわてて追いかけた。

「待て、待ってくれ、拙者は、、、。」

言葉ももどかしく五エ門は足を前に向けようとする。が、彼女の笑顔は山々に吸い込まれるように遠ざかっていく。転げるように泳ぐように彼女の後を追う。追いついて彼女の横顔を見る。

振り向いた彼女の顔は弁天菊子に変わっていた。

菊子はにたりと笑って、五エ門にすがりついてきた。

「五エ門さま~あ。」

「わ!」

自分の大声で、五エ門は目を覚ました。

目覚めると硬いベッドに横たわっていた。跳ね起きようとするが体が思うように動かない。

やがて部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。部屋が薄暗いせいか相手の顔の輪郭しか分からない。部屋のカーテンが開けられたようだ。

突然明るい光が差し込み視界が明るくなった。しかしどういうわけか、瞼を開けているのに辺りはぼんやりとし、まるで靄がかかっているような感じだ。明るさしか感じることができない。

「目が覚めたのか。」

声の主はあの勇者のようだった。

「ここは何所だ。拙者は一体、、。」

「あなたは私を助けて毒矢にやられた。2週間あまり生死の境をさまよっていた。」

思い出した、あの砂嵐の中で意識を失ったのだ。毒は致死量はあったはずだ。拙者は命を取り止めたのか、、、。

「私がすぐに毒を吸い出した。この近くに幸い、よい医者がいた。解毒する薬があったから良かったものの少し手当てが遅れたらあなたは死んでいた。」

五エ門が体を起こそうとすると彼は制止した。

「まだ完全に回復していない。視力はおいおい回復するだろうが、血液に混じって毒が残っているから安心はできない。」

「かたじけない。何と礼を申せばよいか。」

「礼を言うのは私の方だ。あなたに命を救われた。」

「あの男たちは何故、あなたを殺そうとしたのか。」

「部族同士の争いに見せかけて私を謀殺しようとした。」

「どうして?」

「砂漠の鷹に謀反を起こそうとしている連中がいる。」

「、、。」

「新しいやり方に不満な分子は、何処の世界にもいるものだ。あの連中の半分は、私が武器弾薬をヨーロッパから買い付ける事に不満を持ち続けていた。今までアフリカを搾取してきた敵に利益を与えると思っている。もう一派は金で雇われたようだ。」

「あなた方は盗賊なのか。」

「そう言う見方をする者もいる。」

「弱い者から金品を奪い、命を奪う。あなたもそういう輩の一人なのか。」

砂漠の鷹はベッドのそばの椅子から立ち上がって窓の外の景色を見た。宿は小高い丘の上にあった。五エ門の目には見えなかったが、ちょうどその窓から外国船と思われる大きな船舶がゆったりと通り過ぎていった。

「ここは文明から見捨てられた世界なのだ。あなたはここへ来る途中に見なかったか、無数の貧しい民が差し伸べる手を。ここでは生まれる命より失われる命の数のほうが多い。食べる物も着る物も、すみかもなく飢え死にする数百万の子供や赤ん坊がいる。

一方で、数世紀にわたって巨大な富が巨大な文明によって奪われてきた。かつて豊かだったこのアフリカの大地は枯れ、荒れ果ててゆく。」

「彼らの為に、取り返そうとしているとでも。」

「失ったものは取り戻せない。我々が今出来る事は一人でも多くの命を永らえさせ、養うこと。有り余る富や権力を欲しいままにしている特権階級の輩に鉄槌を下し、虐げられた人間の誇りを示すことだ。」

「つまりヨーロッパやアメリカの金持ちの富を、アフリカの貧しい人々に分け与える使命を負うと、、。」

「その為に今は手段を選んではいられない。我々のしている事はきっと分かる時がくる。」

「義賊と言えど人の道にかなうやり方ばかりをしているわけではあるまい。」

「あなたには恩義を尽くす。砂漠の鷹は恩を仇で返すようなことは決してしない。あなたの目が回復するまで安全にここに匿って差し上げる。」

「拙者は誰かに追われている身でもないが。」

「2つの部族の勇者を20人も斬り倒した男がどんな理由ででも、その肉親に狙われるのはこの国では当たり前の事なのだ。」

「では拙者はお尋ね者になったのか。」

「私についていれば不安な事は何もない。」

鷹はそばに戻ってきた。かがみこんで五エ門の額に触れた。瞼は開いていたが、全く顔は分からなかった。五エ門の視力の回復の様子を見ているらしかった。

「医者に診てもらったが、もう2~3日は安静にしたほうがいい。」

五エ門が無意識にはずしてしまったらしい、そばにあった散らかった包帯を目に巻き直した。鷹は五エ門の傍らに斬鉄剣を置いた。彼なら怒りに任せて無謀な振る舞いに出ることはない。

「サムライ」という言葉は知らなかったが、鷹はそれを感じ取った。僅かなやり取りの中にも、五エ門もまた彼の「誠心」を見取った。見えない目が彼の心をより研ぎ澄ませていた。

鷹がまさか、窓の外を通り過ぎるたくさんの商船やタンカーを襲う海賊の首領である事を、五エ門はまだ知るよしもなかった。

次回に続く。

紫については、今更注釈をつけるまでもなく「風魔一族の陰謀」に出てくるヒロインというのはご存知でしょう。

「弁天菊子」について知らないあなたは、TV2NDシリーズの第55話と56話「花吹雪 謎の5人衆」をご覧下さい。2話続けて登場するヒロインはコーネリアと不二子以外には確か、彼女しかいないと思います。

え?ヒロインとは言えないって?

ここでネタばらしすると面白くないので。もう見た人は秘密をばらすなよ。

余談・雑談。今年4月25日オープンの東京ドームシティアトラクション=「ルパン三世、迷宮の館」もう行ってみたかい?結構面白いかも。動画があったので右サイドバーにご紹介。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (20)

(20) 弟子入り

べルトコンベアにのって、左右に人型の標的が次々と現れては消えていく。上段のは右に、中段のは左に、最下位のはアトランダムに上下に消えていくのを、次元は使い慣れないレミントン700-M24(=狙撃銃の機種)で次々と撃ち抜いていた。

ベガスまで500キロ、ニューメキシコ州サンタフェの町。次元が昔から使っているクラブ会員制の射撃場だ。誰でも入れる場所ではない。

成金やベガスに観光に来た庶民などはこのセレブ御用達の施設には入れない。もっとフレンドリーな射撃場がここらにはいくつもある。

ここへは殺し屋をしていた頃の馴染みの口利きで入った。世界中の秘密を持ったVIPが集まる場所で、ルパンもおそらく知らない隠れ家だ。ミネソタ・ファッツも利用していたことがある。

弾は全部で360発。なまった腕にはほどほどのところだ。

最初の60発を箱から出して手元に置いた。59発全てを、彼は動く標的のそれぞれど真ん中に命中させていた。邪魔する敵もいない、動きを単純に読める標的など目をつぶってでも撃てる。

60発目を狙って防弾用のゴーグルをずらした。彼の動体視力は抜群だが、この位置からは次に現れるターゲットが見えにくい気がした。

突然いっせいに全部のターゲットが隠れ、どの位置から現れるのか予測がつかなくなった。

一瞬、天井から下りて来た人型に向かって弾を浴びせた。もちろんど真ん中だ。

早撃ち0.3秒とはいかないがこのタイミングなら十分実戦で使える。ターゲットが射程距離150までなら、バイオリンの内弦A線1本でも正確に撃ちぬく自信があった。

背後でパチパチ拍手する音が聞こえた。今日は付け髭がなくトレードマークの帽子をかぶらないあの若造だった。

「やアお見事オ、やんや、やんや。」

嫌な奴だ、口調がルパンにそっくりだ。俺の顔をしたルパン小僧め、VIPカード無しでどうやって入り込んだ?

銃を置き、ソファに腰をおろす。煙草に火をつけようとすると、奴が気を利かしてライターを取り出した。次元の煙草に火をつける。煙が二人の間を漂う。

「何でここが分かった?」

「しつこくつけ回されるのに飽きたから、こっちから出向いてやったんだ。」

次元が付けておいたイモムシ型の盗聴器兼発信機をそばのテーブルに投げ出す。ついでに次元の財布からすり取ってスキミングしたニセカードも。

「金持ちのボンボンはこんな高級クラブでも、物おじしねえんだな。」

「俺はボンボンじゃねえ。」

「親父に言われて来たのか。ルパンのアジトを探して、お宝をひっさらえって。」

「親父は関係ねえ。あいつはホントの親じゃねえしな。」

「?」

「俺、あいつの養子。子供の頃ニューヨークの近くの施設に預けられてたのを引き取られた。あいつの交通事故で死んだ息子が俺にそっくりだったんだとさ。」

「なるほどな、そういや似てねえ。苗字も違ってるしな。」

「跡継ぎなんて真っ平だ。飯が食えればいいと思って言われる通りにしてたが、もうギャングなんて飽き飽きしたぜ。」

「泥棒だって似たようなもんだろう。」

「あんたらは違う!俺はけちな車泥棒なんかやめて、あんたらみてえにBIGになるんだ。」

「死んだら美味いもん食えねえぞ、女も抱けねえ。」

「そんな事分かってるさ。俺が欲しいのはモノじゃない。」

「じゃ何だ?」

「それは、、何つうか、、、。」

次元は台に置いたライフルを取り上げ、止まっている的を再度狙った。

「夢って奴か。」

「簡単に言うな、ルパン4世ってでっけえ夢叶えるのに命なんか惜しがってちゃ、男がすたるんだよ。」

「帰ってドタマ冷やせ。」

ライフルを置いてソファーに戻る。

「次元さん、頼みがある。」

「さんづけはよせ。」

突然、ルイスは次元の足元にガバリと伏して土下座した。

「お願いだ、俺をあんたの弟子にしてくれ!」

さらに頭を地面にこすりつける。

「だ~ア!!!」

「何でもする。あんたを見て思ったんだ、奴一人がBIGなんじゃない、あんたがいてこそ世界一なんだって。」

「、、、、、。」

「俺は今までたった一人で意気がってた。あんたの仲間にしてくれ。俺はまだ駆け出しだがきっと役に立つ。」

次元の脳裏に自分の若かった頃が蘇った。

俺はこんな風に誰かに素直にものを頼んだ事があっただろうか。若い頃の俺はひねくれ、やさぐれて世間にはむかっては、自分の居場所を失ってきた。

八方塞がりの人生、裏社会の泥水の中でのた打ち回った孤独な一匹狼が、唯一信じることができた男がルパンだった。

奴となら俺は何でもやれる、、。命さえくれてやっても惜しくはない。

こいつは信じられる何かを、あの時の俺のように俺たちに求めてる。だがこいつの言葉をまともに信じてやっていいものか。不二子の片棒を担ぎ、俺たちの仕事を妨害してきた、自分の身を守る事さえおぼつかねえ奴。お荷物を背負い込むことになったら、、、。

次元は残りの300発を箱ごとルイスの方へ押しやった。

「これで賭けだ。この弾を一発でも的に当てたら、考えてやる。」

「弟子にしてくれるのか、ほんとに一発で?」

次元は狙撃用のライフルを持たせ、ルイスの姿勢を直し、手を添えて基本の動作と撃つタイミングを指南した。

「お前、初めてだな。なまなかな筋力じゃ銃に遊ばれるぞ。」

ルイスは自動小銃を撃った事はあったがライフルは初めてだった。そもそも武器の使い方など誰にも教わった事はなかったので、次元に言われた内容の半分も分からなかった。

次元はすぐそばのソファーに寝転び、帽子を顔の上に載せて目を閉じた。

「終わったら起こしてくれ。」

彼は最近、夜寝つかれなかった。自分の脳味噌がいつ破裂するか分からないのにゆっくり眠れる奴なんて心臓に毛が生えててもいないだろう。

ルイスはゴーグルをつけると、動かない的に向かって自己流で黙々と撃ち続けた。

200発位まで撃ち終えた時、次元は顔の上に載せた帽子をどけてちらりと様子を見た。まだ弾は一発も当たっていなかった。もちろん中心どころではなく、掠りもせずに。

次元はあくびをしてもう一眠りした。

数時間がたち、残り2発になった時、ルイスはついにネをあげた。銃をほうりだして地面に長く伸びた。

「やっぱ俺、射撃は無理。」

「あきらめるんなら帰ってくれ。」

眠い目をこすりながら答える。

「俺がルパンの秘密を知ってると言ったら?」

「奴は敵地に乗り込む算段つけてる頃だ。」

「なら、罠が掛かってる。俺が行けば助けられる。」

「お前場所知ってるのか。」

「いつか盗んだ地図に、盗みの計画の手書きのメモがクリップしてあった。俺はそこに行った事があるからすぐ分かった。」

次元は跳ね起きた。ルパンは昔から盗みの計画を紙に書くおかしな癖があった。アナログな泥棒とミシェルに言われたのに、性懲りもなくまだやってる。

「お前、親父にその話漏らしたのか。」

ルイスは肩をすくめる。

「まさか。ルパンさんが忍び込もうとしてるのはシリコンバレーにある巨大兵器産業「ZED」だぜ。あそこにゃ、ペンタゴン(米国国防総省)が秘密に開発してる武器や兵器がしまってある倉庫や兵器工場がくっついてる。

生物兵器や、世界で最先端の医療なんかも研究してる病院もあるが民間人はほとんど入れねえ。政府の役人かペンタゴンの偉い奴、CIAエージェント以外はステルス戦闘機で突入しても入れねえ要塞だ。」

「お前入った事があるのか。」

「俺は子供の頃、その中の病院で皮膚の治療を受けた。顔が時々黒くなるのはその治療の後遺症なんだ。」

一体どんな病気の後遺症だ?

「ルパンの侵入経路が奴のアナログ地図で分かったのか?」

「いや場所は分からないが、多分病院のどっかだ。」

「病院の地図か、メモは?」

「そうじゃなくて病院で見たんだ、あの変な化学式みたいなヤツ。子供の頃、皮膚の移植手術を受ける時、ベッドの枕元で何度か見た。」

「お前、施設に預けられたと言ってたが、親がいるのか。」

「憶えてねえ。ごく小さい頃に何度か手術を受けたことは記憶にある。その病院を退院してから多分、俺のほんとの親父が施設に預けた。親父が行方不明になっちまって、18の時ガルベスが俺を引き取ったんだ。」

「お前の親父はその病院の関係者か。」

「まさか。そんなんだったら世間をコソコソ渡り歩いてねえさ。」

「ルパンが罠にはまったてのは確かか。」

「次元さん知らなかったのか、俺毎日あんたたちのアジトの前を通り過ぎてたんだ。」

「あの飲んだくれのオヤジはお前か。」

「その他にもピザ屋とか清掃員とか色々。」

「で、スパイしたのは俺たちだけじゃなくCIAもか。」

「奴らは毎日あのアジトを張ってた。次元さんに置いてけぼりくらったあの日に、ドアに挟まれた手書きのメモを見た。」

「何て。」

「先に行く、そのあと携帯電話の絵が描いてあって、9-4 3-2 3-1 次元さんの帽子の絵。」

「そりゃ俺が書いたモンじゃない。」

「暗号が簡単すぎるだろ。ルパンさん罠って気づいたかも。」

「いや、その暗号は新型だ。俺以外の誰かとの連絡手段にしてたかも。」

「じゃ、もう手遅れかな。」

「小僧、俺たちはプロだ、そうやすやすと捕まらねえ。」

「でも今、女連れてる。」

「女?」

次元は床に転がってるライフル銃を取りあげて、再び気まぐれに的を狙った。

「CIAのエージェント。カレンて名の。」

弾はど真ん中からわずかに数センチ右にそれて命中した。

「カレン、、、、。」

彼の脳裏に苦い思い出が蘇った。女は苦手だ。特に賢くてきれいな女は。

原子力潜水艦を操縦できる、同名の核物理学者の面影を思い出していた。彼女の死の記憶が彼の心の奥の開かずの扉をたたいた。

次元はルイスに銃を渡し、彼の姿勢を正す。

最後の1発にルイスは賭けた。

奇跡的、見事に弾はど真ん中、、。

だがそれはルイスが狙った的ではなく、その3つ向こうのやつだった。

「合格だね。」

得意げなルイス。

「まずは詳しくそこの事を話してくれ、小僧。」

潜入するにはまず情報だ。ルパンが調べてるルートは必ずしも信頼できるとは限らない。

何しろ、情報を流してくれた相手が忍び込む先の責任者なのだから。これほど詳しい人間もいないだろうが、データを改ざんして陥れるには適役というわけだ。

ルパンがまさかそんな奴からの情報だけを頼りに、この大仕事を進めているとは思わなかったが。

次回に続く。

追伸:ゆうチューブから抜粋していたお気に入りのルパン三世アニメを削除しました。著作権侵害にあたる可能性があるので。個人で楽しむ位はいいのでは、と思っていましたが、やっぱりこのサイトで見るより、買ったり借りたりしてじっくり楽しんでください。お金のない君は、無料の動画サイトもあるしね。ルパン三世はお金を払っても見る価値がある作品ばかりです。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (19)

(19) 「盗」飛行

ヘリは次元が差し向けたものだった。ルパンは自動操縦から手動に切り替え、運転しながら怯えて小刻みに震えているカレンを気使う。

「もう、大丈夫だ。奴らは俺を麻酔弾で眠らそうとしただけだ。」

こっくり頷く彼女。

「、、、逃げる必要はなかったのよ。あなたは私たちの要求通りにしてくれるんですもの。」

「奴らは俺にも次元と同じコトしようとしてた、違うか?」

「私はあなたをおびき出すという指令を受けただけ。まさかこんな陰謀があったなんて。」

「知らなかったのか。」

「ええ。」

相変わらず震えている彼女。

「君ほんとにCIAのエージェント?」

「、、、私、二重スパイみたいなものなの。でもこの計画を知らなかった。今までいた部署から転属になって新しい課に入ったんだけど、そこはCIA内部の陰謀や二重スパイを調査する部署なの。

今はフェニックスのいる課に潜入して彼の最近の不審な動きを探る仕事。」

「なるほどね、奴は本来の仕事じゃなく誰かの陰謀の片棒を担いでるってわけか。」

「そうかも、、、。」

「ほんとのボスに報告するんだな、さもないと君の命が危うくなるぞ。」

「ええ。あの、、」

「、、、。」

「さっきの言葉はもしかして救助信号?」

「いい勘してるね。」

「何?しゅちにくりん、て。」

「ああ、あれね、助けに来いって次元に頼んだのさ。」

「じゃ、私に言わせたのは?」

「あ・はんが上に来い、うっふんが横につけろ。」

「じゃ、私の合図でヘリが来てくれたのね。」

彼女のほっとした顔を見て急ににこにこするルパン。

「何?」

「君さ、仕事してる時の顔と全然違うね。」

「え?」

「素顔がさ。」

「、、、。」

「ホテルで俺を誘惑してた女と別人みたいだ。」

「そうね、仕事だもの。あなたもよ。」

次元から連絡が入った。

「どうだ、俺のリモートコントロール技術は。」

「ジャストミート。いいタイミングだったぜ。ランバージャックの息子にも礼言っとかなきゃな、今度は故障しなかったって。」

「いつから女の声あんなに上手くなったんだ。」

「才能。それはそうと次元爆弾、炸裂しなかったみたいだな。」

「何で知ってる?」

「あのおっさんべらべらとしゃべってくれたよ。お前の居場所が分かってるなら何で俺たちを助けに向かってるのが分からなかったんだろう?」

「そうだな、、、。多分このチップ、携帯電話と一緒で場所によって電波が入らなくなるんじゃねえかな。」

「山奥とか、電波障害の起きやすい場所とか。」

「そうとしか考えられん。」

「今何処にいる?」

「盗聴されてるかもしれんから今は言えない。あの小僧を追跡してる。」

「分かった。また後で連絡くれ。」

カレンはもうずいぶん落ち着いていた。このヘリでデートしちゃいけないかな、などと言ったらぶん殴られそうなほどに。

彼女を連れて帰ったら次元はどんな顔をするだろう。だって「カレン」だもんな。それよりまず奴の脳みそが破裂しない方法を考えないと。

「ルパン、多分このヘリ追跡されてるわ。」

「大丈夫、知ってた?ルパン三世は最新のステルス戦闘機なみの装備持ってるんだ。」

「どういう事?」

「レーダー撹乱システム。つまりプラズマアンテナ搭載、電波吸収体でできたボディ。」

「どこで手に入れたの?」

「そりゃもう君の組織のお膝元よ。、、、このまま君の家まで送るけど、住所教えてくれ。」

「ロサンゼルス、サンタアナ5番街の22よ。」

「ひょっとしてディズニーランドは君ン家の庭だったりして。」

「そうね、庭と思ってもいいほど近いわね。」

「こっから4000キロ、それまでお互いをじっくり知り合えるってわけだ。」

「知り合ってどうするの?私たち敵同士なのに。」

「もう敵同士じゃない。君はスパイをやめて泥棒の一味に寝返る。」

「まだ分からないでしょ。もしかしたら私はあなたのことをスパイしようとしてついて来たかもしれないわ。」

「だとうれしいね。ずっと一緒にいられる。」

「女を口説くのが上手いって思ってるのね。」

「君みたいに賢くてきれいな人に言われると、ますます俺自信持っちゃう。」

「残念だけど私、誰とも付き合わないの。」

「へえ、彼氏に振られた?」

カレンが急に黙り込んだ。ヘリを運転するルパンがチラリと顔を見る。図星だったみたいだ。

無表情を装っているが、瞳がそれを語っていた。

「ごめん言い過ぎた。君を人質にして泥棒は盗飛行する。」

「逃避行?ほんとにロスまで行く気?」

「ああ、君の仕事なんだろ、ルパンについていってアジトを探れって。」

「あなた知ってて私を助けたの?」

「奴らみたいな人でなしが、君を生かしておくと思うかい?あそこで俺が捕まってたら君は間違いなく用済みで殺られてた。俺が逃げたから君は、、」

「私は組織にとってはただの使い捨て、、」

「ロスに俺のアジトがある。もし良かったら一緒に来ないか。」

「私は、、。」

「わーかってるって。君がスパイをやめたくなったらの話さ。君みたいな人が誰かを騙したり、人を殺したりする仕事してるなんて嘘みたいだな。」

「あなたこそ泥棒だなんて信じられないわ。」

「俺たち似た者同士ってか?」

二人は顔を見合わせて笑った。

次回に続く。

女性にも楽しんでいただきたいですね。このブログは家族で楽しめる、老若男女のエンタメでありたい、、。

なのでそうとうHなトラックバックは削除します。

最近トラックバックもコメントも増えたけど、すいませんね、消させていただきます。公開してあげるから「ルパン三世」と一言書いてくれや。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (18)

(18) 拉致

「君にここへ来てもらったのは、他でもない、君の親友の命を助けてもらいたいのだ。」

「次元はお前らに捕まるほど馬鹿じゃない。」

ボストンの郊外、空ビルの一角。もう使われなくなった廃ビルにみせかけたCIA支部。ここへルパンは呼び出されていた。武器を取りあげられ、椅子に座らされ、前で両腕に手錠をかけられて。

後ろにはピンクパンサーこと、カレンがルパンのワルサーを突きつけて立っていた。周りには覆面した男が3人。正面に立っているのは、声から察して彼女と連絡を取っていた男だ。

「ところが20日ほど前、次元大介は我々の医療施設で、ある手術を受けた。」

男はPSPか何かの映像プレーヤーを出して、映っている映像を見せた。

眠っている次元の後ろ頭にあたる場所の脳内に小さなチップを埋め込む手術の映像だ。そこは脳幹と言われ、生命を維持するのに欠かせない領域だと、素人ながらもルパンは思い起こした。

「彼の脳に埋め込まれたチップは、マイクロフィルム大だが、高性能のGPS機能(地球規模の位置監視システム)で居場所の探知が可能だ。加えて遠隔操作で決められた時刻に破壊することもできる。」

例え小さなチップでも、脳の一番大切な、生命維持機能に密着している物が破壊されたら、、。

「あいつでなけりゃ出来ねえ仕事なら、あいつに頼みな。CIAがこんなギャングまがいの脅迫する様になったんじゃ、世も終わりだな。」

「なぜ、我々がCIAと?」

「ジャの道はランチジャーってね。俺は泥棒だかんな、同業者かそうでないかは匂いで分かる。俺を捕まえるのにこんな手の込んだ事するなら、次元より先に俺にチップ埋めとくんだったな。」

「君にはそんな事をする必要はない。」

別の映像がそのプレーヤーに映し出された。不二子が半裸で縛られた映像だった。

ベッドに仰向けで体を縛られている。スケスケのネグリジェの下にショーツ一枚も身に着けずに。角度によってはあられもない格好が写しだされそうになる映像。

もっとも本人は結構楽しんでる感じにも見えたが。

「ああ~よしなさいっつの!このオ、ドスケベ野郎!俺が今助けに行くからな、待ってろよ不二子オ!」

聞こえるはずのない画面の相手に向かって叫ぶルパン。手錠したまま素早くPSPを奪い取って画面を手でおおい隠す。抜け目なくそれをポケットにしまう。

「君の親友にはあることを依頼した。」

「新大統領の暗殺かい。」

「どうやら君には何でもお見通しのようだね。」

「暗殺なんて不可能だね。だいたい1000人ものエージェントが守り、装甲車なみの鋼鉄の車に乗ってる奴をどう狙撃すれば当たるんだ。テロリスト助っ人にして、ホワイトハウスにでも押し入って殺らせるか。」

「犯人が捕まるね。」

「俺を人質にして次元をそそのかしてスケープゴート(生贄)にしようって腹ならお断りだ。」

「次元は捕まらない。我々が責任を持って安全な場所に逃がす。身代わりの男がいる。」

「どっちみち俺はあんたらの手先にはならない。」

「君への依頼は別の件だ。峰不二子が持っている地図のうち2枚しか本物ではない。」

「知ってるさ、俺の爺さんが俺に残した地図と、俺がアフリカで盗み出した地図。あとの1枚は不二子の作った駄作で、ボウズを介してガルベスが持ってたニセさ。」

「ニセのもう1枚は博士が博物館に寄贈したもので、君が盗みだして本物と入れ替えた。」

「ところが不二子たちは知らずに、俺の置いた本物を盗んで、代わりに博士のニセを元通りにおいといた。それがあんたらが取り戻したいモンなんだろ。」

「ナインシュタインは裏切り者だ。我々の重要機密を君の祖父の地図にそっくり似せた紙に収めて博物館に隠した。」

「宝の地図と見せかけて、俺の手に渡るようにな。」

「本物の地図は、今では君の祖父の物ではない。フランスからアメリカ政府が譲り受けた財産だ。宝の地図なんかではない、第二次大戦中の機密事項を記したものだ。」

「何であんなに手の込んだ仕掛けで俺に残した?」

「それは言えない。」

「俺はそのニセモンは再び博物館から盗み出してあんたに渡す。だが爺さんの地図は奴から取り戻す、お前らには指一本触れさせねえ。」

「ルパン、我々は君に地図の秘密を解いて欲しいのだ。」

「博士に頼んだらどうだ。」

「彼には解けなかった。」

「へん、俺にしか解けねえよ、ちいっと奴の助けがいるがな。」

「協力はする。」

「なら不二子を解放し、次元のチップを取り出せ。」

「それは出来ない。分かってるだろう、この話は軍、いや国家の最重要機密だ、君を信用して打ち明けたのだ。その担保は取る。」

「、、、分かった。一つ聞いていいか。あんたらCIAなのに、なんで大統領の暗殺が仕事なんだ?」

「泥棒に政治の話はしない。」

「確かに俺にゃ関係ねえ。がもし二人に何かあったらただじゃおかねえぞ。」

突然、ルパンの携帯に「ルパン三世のテーマ」が鳴った。次元からだ。

「どうだ、そっちの居心地は。」

「ああ、何つうかもう、、、。」

周りの男たちが目配せし、ルパンを目で脅す。

「そらもう酒も女もじゃんじゃん、酒池肉林。俺もうヘロヘロ、、。」

話しながらルパン、隣にいるカレンに目配せし、彼女の耳元で何かを囁く。

声を元の大きさに戻して言う。

「ちょっと色っぽい声出してくんない?怪しまれっからさ。」

自分の携帯を渡す。

「あはん。」

電話口に向かって色っぽい声を入れる。こんな感じでいいのかしら、といかにも嫌々ながらの彼女。

「何でえ、やっぱり女の館でお楽しみか。今度は若返りの薬、盗って来いよ。」

次元は何か勘違いしているようだ。

「ナインシュタインの居場所はここだ。」

真ん中の男が住所のメモを差し出す。

「俺のやり方でやる。口出しはすんな。」

その手を払いのけ、話は済んだという様にルパンは立ち上がった。瞬時に手錠を外していた。縛られてる芝居に疲れたよといった風に軽く肩を回す。

ワルサーを返してもらおうとカレンの方に手を出すと、彼女は即座に言った。

「私たちのアジトを知ったあなたをすぐには解放できないのよ。」

足元目がけてワルサーから弾が一発、、、

と思いきや、銃口からアメリカの国旗が飛び出してきた。ルパンはすかさず愛銃を取り戻し、男たちへ向ける。

「君みたいに愛国心を持った立派な警察官がこんなコトしていいのかい?」

「私は組織の一員なのよ。命じられた仕事をするだけ。」

「何にも縛られずに生きる代償は自分で落とし前をつける事さ。だがそれもいいもんだぜ、俺と一緒に来ないか。」

「女を口説く暇があったら命の心配しな。」

左横の覆面の男が銃を向けながら言った。言い終わらないうちにそいつは下あごにパンチを食らい、もんどりうって倒れた。

ルパンの敏捷な動きが残りの2人の判断を迷わせた。狭い部屋では味方を撃つ危険も考えなければならない。

壁を背にしてルパンはカレンの腕を捕まえ、後ろに回るとその体を盾にして彼女の頭にワルサーを突きつける。

「おっと、優秀なエージェントを失いたくなかったら銃を捨てろ。」

「貴様に女が撃てるのか。」

フェニックスはせせら笑った。

ルパンの片眉が吊り上がった。

「俺が何の準備もなしに乗り込んで来ると思うなよ。」

得意の煙幕を一発。煙が部屋中に充満する。煙の中のルパンに銃弾が浴びせられた。

ご存知、それは風船ルパン人形だ。

エージェント3人が無音の弾をぶちこんでいる間に、ワルサーの残りの7発で真上にある天窓を正確に四角にぶち抜く。

ガラス戸が落ち、空いた穴からヘリコプターの胴体がのぞいた。自動操縦のヘリだ。

ワイヤーを投げ上げ、機体に引っ掛ける。カレンの体を守りながら。

だがいくら防弾服でも、もう限界だ。

「カレン、俺につかまれ!」

「ルパン、、。」

「早く!」

カレンはルパンの首っ玉にしがみついた。彼女をしっかり抱くと、二人はそのまま天井の穴から外へ引っ張り上げられていった。

部屋の扉をぶち破り、屋上への階段を駆け上がるエージェントたち。しかしヘリはすでにビルから100メートルも遠ざかっていた。

連絡を取るエージェント、コードネームはフェニックス。

「ルパンは取り逃がしましたが、取引成立しました。あとは奴が謎を解いて、こちらに接触するのを待つだけです。」

「ええ大丈夫です、奴を泳がせます。あと始末も万全です。」

次回に続く。

やっとルパン三世小説らしくなってきたぜ、来週も見逃すなよ、ほいじゃま。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(16)(17)

(16) 潜入捜査

「部長、どうしても人員配置していただけんのでしょうか。ルパンのアジトはすでに突き止められ、踏み込んでふんじばるだけなんですぞ!」

「銭形君、君はそんな風に先走って独りよがりに勇み足をするから、いつもルパンにもう少しという所で逃げられてきたんじゃないのかね。」

「しかし、奴があのビルに潜んでいるのは確かです。」

「だが今回CIAからの要請で、アメリカでの奴の事件は全て向こうの権限で捜査が進められるように協定が結ばれている。」

「警視総監のご判断ですか、それは。」

「もちろん。」

「では私はICPOの捜査官として、この捜査にCIAと共同作戦で向かいます。」

「ICPOの本部長とも協議した。きみは当分の間出向を取りやめ、警視庁本来の任務に戻ってくれ。」

「それも警視総監の任命書が届いたらですな。」

「任命書はここだ。」

「、、、。」

「いいか、君はしばらく休暇をとりたまえ。」

「、、、。」

「と言っても、聞かんだろうからな、それは表向きの話だ。」

言いながら、警視庁の広域犯罪の最高責任者、1課特別捜査班作戦班長兼国際刑事部の部長はアメリカ行きのパスポートを渡す。

顔写真は銭形だが、妻帯者で名前が違っていた。木戸トオルとなっている。

「今回の君の任務はあくまでサポートだ。アメリカでルパン三世の情報収集にあたる。」

「情報収集?」

「そうだ、逮捕ではない。」

「誰が逮捕するんですかな?」

「君の今回の相棒、CIAから派遣されたエージェントを紹介しよう。」

警視庁の一室に入って来た男を振り返って見つめた。男ではなかった。あの、アンデスの山奥でともに一夜を過ごした女性、ジョアン・スミスだった。

「よろしく、ゼニガタ。」

あの時と同じブロンズ像のような赤銅色の頬を染め、肩まで流れる金髪をなびかせ、あの時とは打って変わって、はにかみながら言った。

「いつかはごめんなさい。」

何か謝らなければならない事を、彼女はしたんだろうか。銭形はあの一夜の出来事を思い出し、またもや背中に汗が流れた。下半身がおかしくなってきた。

「君は、彼女と新婚旅行でアメリカのラスベガスに行く事になっている。そこのCIA支局長にも連絡を取ってある。」

「な、、、。」

「君たちは木戸とその妻のまりやだ。君は、シリコンバレーにある巨大複合産業「ZED」に企業研修に行く日本人商社員。新婚旅行も兼ねていく。詳しい事は、スミスと支局長から指示がある。」

「ルパンがそこで何かを企んでいるんですな。」

「潜入捜査をすると聞いた。君たちは夫婦でラスベガスに滞在して、ルパンのニューヨークでの足取りと、ベガスでの奴の企みの狙いを探り出す任務だ。」

銭形には全く話が飲み込めない。何で、ニューヨークで奴を捕まえないのか。何を奴は企んでいて、一体CIAは奴を泳がせて何を知るつもりなのか。

ジョアンと銭形はその夜の便でラスベガスに向かって旅立った。

(17) 陰謀の主

話は少し過去に遡る。CIA本部、長官ジム・ケインの執務室。長官は今、エージェントからかかってきた携帯電話を受けている。

分刻みの彼のスケジュールのうち、例の極秘計画に割ける時間は僅かだが万全を期していた。彼の政治生命の命運を賭けているといっても過言ではなかった。それにはある男がうまく捕まる事と、彼が彼の友人のために働いてくれる事が不可欠だ。

「こちらエージェントフェニックス。例の手術は成功しました。現在ターゲットJとは交渉中です。ターゲットLの捕捉には失敗。しかし、ピンクパンサーの交渉で、自発的に我々と接触する意志があるという連絡が入りました。ボストンの支部ビルの一角で会う予定になっています。」

「OK。そこで確実に捕捉するんだ。」

そこまで話した時、国務長官Mが訪れた。今度就任する新大統領の就任式とパレードのための護衛計画の書類を持って。パソコンが普及した今でも、閣僚とは重要な案件は対面で検討することになっている。

ケインはざっと書類に目を通した。数千人の参列者と、沿道の数十万人の安全を守る計画。新米大統領ナラク・オハラの命を守る1000人のエージェントの指揮を、彼は任されていた。3月27日まで、いよいよ2ヶ月を切った。

国務長官Mは優秀なCIAのトップと2時間ほどかけて就任式の警備の入念な打ち合わせをした。

「長官、やはりこの計画では不完全だ、もう200人沿道の警官とエージェントを増やしてくれ。」

「分かった、何とかする。」

「別件だが、例の薬はいつ実用化される?見通しを知らせて欲しい。」

「軍に応用できる時期はまだ先だ。完成すれば重要機密となるので、漏洩を防ぐ手立てを先に講じている。」

「ではよろしく頼む。」

Mが去っていくと次にナインシュタイン博士と連絡を取った。彼に依頼している試薬の実験はあらかた成功し、実用化を待つだけだった。

だが、ある不都合な事態のために、マスコミや世間はおろか政府閣僚にさえもまだ秘密にしておく必要があった。

「博士、私だ。例の試薬を使っていよいよ実用化を始めたい。」

「まだ人体に応用するには早すぎる。」

「何故だ、ぐずぐずしていては秘密がいつ漏洩し敵の手に渡るやもしれない。先手必勝、実用化されればこっちのものだ。」

「だが、失敗すれば被験者は死に至る恐れがある。」

「時代に先駆ける者は、多少のリスクを負わなければ先に進めない。」

「あなたが被験者ならそうは言わないでしょうな。」

「もちろんだ。」

中央情報局の長官と軍付属病院の医学研究室主任は詳しい打ち合わせを後日持つことに決めた。

ケインの机にあったのは、オハラ大統領の就任パレードで使うオープンカーの仕様図、就任式祝賀パレードの際の警備全体計画、全ての車両の行程図だった。

次回に続く。

連休中にも関わらず、たくさんの方に来ていただいてありがとさん。

次回から話が本題に進みます。今まではお膳立て、前哨戦。退屈してた君、ルパン三世が登場します。八面六臂の活躍、お楽しみに。

追伸:

初めて来てくれた君のために、サイドバーに「見果てぬ夢」最初から読めるサイトをリンクしました。読みやすいのでよかったら入ってみて。ざっと今までの話が分かります。

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ルパン三世長編小説第3弾 「見果てぬ夢」 (15)

(15) 女の武器

不二子は今シャワー浴びている男の部屋で、彼のパソコンにログインしていた。女の武器を駆使し、パスワードを聞き出して。彼のメール交信データをまんまと持ってきたUSBメモリにコピーし、そ知らぬ顔でまたベッドに横たわった。

裸の男が、タオルを腰に巻きつけてバスルームから出てきた。

男とはアルバート・ナインシュタイン博士。ドイツ人だが、祖父の代にアメリカに移住し、今はアメリカの皮膚医学の研究者だ。

古地図の研究家としても名高い博士は、男盛りの40代。

学者にしてはよく日焼けし、逞しい体つきのセクシーボディ。もちろん医師としての優秀な頭脳も兼ね備えていた。

が、さすがの彼も、不二子の色香に惑わされてあの晩餐会の日以来、懇意となり、長年の研究の秘密を打ち明けていた。

「それで、3枚の地図は本物だったの?」

不二子は彼がやって来てベッドに座ると起き上がり、手を伸ばして後ろから抱きついた。

「キャプテンクックの地図かと聞かれればノーだね。」

抱き寄せながら彼はじらす。

「じゃ、偽者なの、やっぱり。」

「いいや。」

ベッドに仰向けになる博士。

「どういう意味?ウ~ン、アルバートったら、ほんとの事教えてン。」

同じようにバスタオル一枚で、ほぼ100センチのバストを相手の胸に押し付け、仰向けの博士にかがみこんで頬や顎にキスしながら聞く。

「君がこんなに古地図に関心があるとは思わなかったよ。」

「だって、昔の海賊の宝物が隠されてる地図なんでしょ、女なら誰でも憧れるわ。金銀宝石に囲まれた自分を想像するだけで胸が苦しくなる。」

真っ赤な唇を彼の耳に近づけ、そっと耳たぶを噛む。

「君が美しくなるのに必要なことなら、何でもするよ。」

起き上がって今度は彼が上になり、顔や首筋にキスを浴びせながら言う。

「じゃ、もっと詳しく教えて。」

博士はゆっくりと起き上がり、冷蔵庫に向かって行って、ビールを取ってきた。二つのコップに注ぎ、不二子にも渡して一気に飲み干す。

「あの地図は前にも言ったとおり、1枚は真っ赤なニセだが、2枚は第二次大戦後に作られた比較的新しい地図だ。」

「まあ、じゃお宝の地図じゃないのね。」

不二子はコップを持ったままだ。酒に強くない彼女は仕事中は飲まないことにしている。

「いや、キャプテンクックの地図は、もうこの世にない。」

「何ですって。」

「私が調べたところによると、19世紀に作られたキャプテン・クックの地図3枚は2度の大戦を経て全て失われ、その莫大な宝の行方を記した資料はもうない。

かの世界的な怪盗アルセーヌ・ルパンがその地図を探し出し、すでにクックの莫大な財宝を探り当てて、その宝を再び隠した。

実はありかを記す新しい地図を作ったと、彼自身の日記に書かれているんだ。私は長年の研究で突き止めた。」

「じゃ、あなたに渡したのは、その新しい地図ってわけ?」

「彼は宝を掘り出してどこかに埋めた。戦争が激化したためか、何か他の理由で掘り出すことが出来なくなったのか、子孫に宝を残そうとしたのか、新しい地図を残して亡くなった。

子孫以外には見つけられないように、ある細工を施してね。」

「という事は、新しい地図を解読すればいいのね。」

「多分、オリジナルのとそっくりに作った新しい地図にはニセの情報と、真の情報が混じっているんだ。」

「その見分け方は?」

「多分ルパンの家系にしか伝えられていない。」

「あなたは地図の解読のために、ルパンをおびきだそうと画策してきた。」

「スミソニアン博物館にあったのは私が偽者を寄付した。彼に盗ませるために。」

「ルパンは自分でも祖父の地図を持っていたのよ。なのに謎を解くことができなかったの?」

「奴は最近まで地図を一枚しか持っていなかった。ルパンが他の地図を手に入れたのはほんの最近なんだ。」

「1枚は自分が盗んだと言ってた。アフリカのウガンダにいる医者から。それを若造の泥棒が盗み、ルパンがまた取り返したのをあたしが頂いて来た。もう一枚は確かに博物館にあった物よ。」

「なるほど、それならこういう事だ、私は地図1のニセ物を寄贈した。ルパンはニセ1を盗んで、もともと自分が持っていた本物2を置いておいた。

それを知らずに君が盗んで、ルパンからもらった私のニセ1を再び博物館に戻したんだ。君が私の所へ、残りを持ってくるのも計算のうちだ。」

「何でそんなめんどくさい事。」

「私のニセ物1を奴はある目的のために手に入れる必要があった。それと私に届けたかったのさ、奴が受けついだ地図2と、ウガンダの医者の所有していた地図3を。」

「なぜ彼が直接あなたに会って渡さないの?」

「わざと君の手を通してよこしたのは、私が本物を見分けられるかどうか、謎が解けるかどうか試しているんだよ、ルパン三世の一味、裏切りの常習犯の峰不二子。」

「、、、、知ってたの、、。」

「君にお近づきになれたのも、奴のおかげだな。長年アルセーヌ・ルパンの隠し財宝を探してきた私だからね。」

「そうと分かれば話は早いわ。ねえ、あたしと手を組まない?」

不二子は博士に手を伸ばし、また博士が不二子の上に重なった。彼はゆっくりと不二子のバスタオルの前をはだけ、豊かな裸の胸に顔を埋めた。

「君がうまくルパンに取り入って宝の地図の解き方を聞き出してくれるなら、だ。」

「もう一枚の地図1の本物はあなたが持ってるんでしょ。」

「もちろんさ、私の祖父の代からの言い伝えだ。」

「何て。」

「3枚の地図を手に入れ、その謎を解くことができた者は、世界を支配する力を持つ。」

博士は不二子の体を愛撫し始めた。

この男とルパンは3代にわたる因縁の対決をしようとしているのか。一体この男の正体は何者なんだろう。ルパンは地図の真相を知っててあたしをこの男に差し向けた。大切な祖父の宝の地図をあたしに預けてまで。

彼の唇を唇に受けながら、不二子はまた戦略の変更を考えなければならなかった。

ナインシュタインのほうは、当初からある秘密の計画があった。ただ今後この女が敵に回るのか、味方につくのか、、、、、。

どっちにせよ、この女は本心から自分のものにはならないだろう。それなら一時のお楽しみもいいかもしれない、、。

この狡猾な男女はそれぞれの思惑を胸に、朝まで楽しむことに決めた。

寝室でこっそり隠しカメラが回され、ある場所に送信されている事も知らずに。

次回に続く。

追伸1:

またまたどっかで聞いたことのある人の名前。苗字のアとナの違いですが「ア」の方とは全くかかわりはございません。念のため。

追伸2:

最近ルパン三世オフィシャルマガジン20を買って読みましたら、特別インタビューのコーナーでモンキーパンチさんが、ご自分がはまってるDVDに、「エイリアス」って言ってらっしゃって、1~5まで全巻買ったって。(全巻確か40~50巻あります。)

REDもちょうどはまってまして、全巻録画取って、毎晩夜中まで見てます。

超面白いようですので、連休中にオススメ。この映画、海外のテレビドラマなんですけど、これ、またまたCIAの女スパイが活躍する話。

俺のストーリーと似た場面があるらしいですけど、言っときます。絶対ネタ取ってません。あっちの方がパクリです、ほんと。

追伸3:

そ~んなにパクリ気にすることねんだよな、ルパン三世パクッてねえのはモンキーパンチさんだけじゃねえの。

宮崎さんだって、大川さんだって、アンタの敬愛する大和屋さんだって、100パーセントオリジナルじゃねんだからさ。面白けりゃ、どんどん俺の名前使ってくれよな。

んで、楽しんじゃってくれや、世界の怪盗は何だって盗んじまうんだから、人の話盗むぐれえ、朝飯前なんだっつの!

(ルパン三世より)

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ルパン三世長編小説第3弾 「見果てぬ夢」 (14)

(14)裏切りの荒野

遮る物がないソマリア砂漠のど真ん中で、砂漠の鷹とクワリ族の男は対峙していた。

と、空が一転かき曇り、年に一度あるかないかの雨がポツリと五エ門の頬に伝い落ちた。

急に風が出てきた。青かった空に白い雲が混じったかと思うと、もの凄い速さで黒雲が湧き上がった。とたんに風はびゅうと唸りを上げ、立っている十数人の男たちの着ている白い装束やマントが風にはためく。

五エ門は斬鉄剣を手に、固唾を飲んで、この戦いの成り行きを見守った。

稲光と同時に、野獣のような筋肉男が、鉄のサスマタのような武器を砂漠の鷹の腹目がけて突き刺そうとした。鷹は敏捷に武器を同じような武器で受け止め、突き上げると同時に素早く敵の後ろに回った。

後ろから軽々と跳び上がり、今度は自分の武器で相手の喉を突こうとする。すかさず野獣は翻り、武器で武器を跳ねのける。

二人の背後、まだ遠くに竜巻が見える。この地方で特有の砂漠に湧き上がる大竜巻だ。辺りの空気が、砂で黒々と霞んでゆく。

二人の戦士は一進一退。刺したり跳ねのけたりの繰り返し。大竜巻は少しずつこちらに向かってやって来る。砂嵐で目が開けられない程だ。だが、誰もこの戦いを中止しようとするそぶりも見せない。

周りにいた一人が、はためくマントの下に武器を隠し持っていたのが、五エ門の目にちらりと映った。もう一人が小さな吹き矢の筒を持っているのも。

見れば周りを囲む全ての男が同じように、こっそりと手斧か短刀のような、手元に隠せる武器を持って砂漠の鷹の様子を窺っている。

五エ門の心に義憤が沸き起こった。これは公明正大な果し合いではない。何かの陰謀で、奴一人を謀殺するのがねらいなのだ。

一瞬の差で鷹の持つ武器が野獣の喉元を押さえつけた。何処にそんな力があるかと思われる細腕で、押さえつけられる鋼(はがね)の体躯の大男。地面に転がってじたばたと抵抗する。そのまま砂に埋ずもれるように沈む。激しい咳をする。吹き荒れる強い風で砂が顔を覆いつくし、とどめを刺さないでも窒息死しそうだ。

いきなり周りの男たちが鷹に向かって跳びかかった。

たった一人の男に、これだけの数の男が騙し討ちとは、、。

五エ門は斬鉄剣をすらりと引き抜くと、男たちの塊に突っ込み、斬鉄剣が稲光のように霞んだ空にきらめいた。目にも留まらぬ速さで切り裂き、一人残らず真っ二つにした。

けだものたちが断末魔の悲鳴を上げて倒れる中、五エ門自身も力尽きてその場に跪いた。いつもの彼ならこれしきの事で、これほど消耗するはずはなかったが。

鷹は周囲から襲われ、おそらく十数か所は刺されて血を流していたが、果敢に暴徒を跳ね返した。勇者は五エ門の足元にやって来て、跪いて訊ねた。

「怪我はないか。」

五エ門はくらくらする頭で考えていた。

命とは何の為にあるのか。このけだものたちとて生きるために殺し、生きるために欺いた。拙者も同じ。皆、縁あってここで出会ったのに。

鷹が腕を脇に差し込み、五エ門を担ごうとした。

突然、細い筒から吹き矢が飛んで来た。まだ生き残りがいたのだ。

五エ門の目にはスローモーションで動く吹き矢の毒針の先に、鷹の顔が見えた。五エ門は反射的に身を投げ出した。

それはまともに、五エ門の喉に突き刺さった。この地方にある、獣を獲る猟に使う強力な毒矢だ。

五エ門の視野は一瞬にして真っ暗になった。そのまま戦士の胸に倒れ込んで意識を失った。

次回に続く。

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映画のパクリじゃないんで、、最後まで読んでくれよな!

最近、「デュプリシティ」とか「レインフォール」とか、CIAのスパイが活躍する映画がヒットしてます。

今連載中の作品にたまたまCIAのスパイが登場したり、暗殺に巻き込まれる話だったり、日系2世が出てきて活躍したりするんで、人気映画からネタをもらってるって言われて、凄くくやしい思いしてます。

自分としては、あくまで、映画が公開される以前に作った自分のオリジナルストーリーだと自負しています。

「ルパンVS複製人間」と「失われた記憶」が全く違う内容のクローン人間ストーリーだったように、今回の「見果てぬ夢」もぜんぜん違う内容ですので、最後までご期待下さい。

なんでだよ~。映画が出来るずっと前に、原稿ができてたんだぜえ~。 

いかに自分の作品にオリジナリティを持たせるかが魅せる作品作りの醍醐味です。モノマネ芸人さんだってただマネするだけじゃ飽きられちまう。 人のネタをどう料理して自分らしさを出すかも勝負どころ。

ユウチユーブで面白い映像見つけました。ものすごくたくさんの人が「ルパン三世のテーマ」を投稿する中、まさに個性的!

一緒に楽しもうや。アリガトな、投稿者君。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (13)

(13) 砂漠の鷹

体の痛みは心で乗り越えられる。しかし、心の痛みはこらえようとすればするほど、五エ門の清真な魂を蝕み、まるで膿を持って熱を発する刀傷のように彼を痛めつけた。

ソマリア共和国。内戦で家を失った人々が押し寄せる難民の住処。ボートを待つ数十万の老若男女。軍事政権とは名ばかりで、ほとんど無政府状態の国だ。

ケニア、ウガンダ、ソマリアと彼はたった一人、修行行脚の旅に出ていた。文明から取り残された村々を徒歩で回って。

貧しいというよりは、あまりにも悲惨な国々。内戦によって破壊された建物の瓦礫の間に未だに取り残された人々。主に10歳未満の子供、女と老人。

伝染病が蔓延し、小さな子供たちが病気を持ったまま路上で生活し、飢餓のために路上で死んでいった。

彼はここに来る前、難民キャンプの中にある診療所のボランティアとして働いていた。そこで亡くなった子供を二人ほど埋葬した。

所詮自分は、他国者であり修行者でしか生きられない、、、。

そこの医師の勧めを振り切って、再び旅に出た。あの心の痛みから逃れるには自分の肉体の限界まで身を焦がすしかない。

彼は自分なりの答えを見つけようと、この過酷な世界に踏み込んでいた。

40度以上の砂漠の熱と,飢えと渇きが彼を襲っていた。もう3日、何も食わず、飲み水といえば、ここに来る前にキャンプで分けてもらったペットボトルの水、別れのしるしに医師からもらった気付け薬用のウイスキーの一瓶。もうほとんど底をついていた。

拙者は何故、こんな所で、無意味な行脚を続けているのか、、、。

分からなかった。

ただ死んでいくだけの幾百人の虚ろな瞳は彼に向かって、何かを語りかけていた。

人は何の為に生まれ、生き、死ぬのか、、、。

彼は終わりなき旅を続けていた。死をも乗り越える何かを求めながら。

広大な砂漠の中、照りつける太陽に負け、五エ門は膝を折って、その場に倒れ臥した。

やがて見渡す限りの砂の向こうに、砂埃が上がった。それはだんだんと彼に近づいて来た。

「おい、イイモン持ってるぜ。こいつ。」

「変わった服着てるな、難民でもないようだ。」

3人組の、この土地独特の衣装を着た男たちだった。

砂漠に慣れたこの地方産のずんぐりした馬に乗っている。

「まだ生きてるみたいだぜ。服を剥ぐには早いな。」

ハゲタカのように、死ぬのを待って持ち物を奪う盗賊のようだ。

「こんな武器を持ってるって事は、奴らじゃないな。取り上げろ。」

一番年上らしく命令口調なのは、色白で優男の顔だ。あとは見るからに黒い、猛者の、悪の塊のような面ばかり。この国には種々雑多な民族や人種が住んでいる。アフリカ系もそうでないのも。

五エ門はふらつく頭でそいつを仰ぎ見た。掠れ声で答えた。

「、、、拙者はただの修行者。理由あって日本からやって来た。お主らのような盗賊にこの名刀を渡すわけにはいかぬ。」

「死んでいく奴が何をほざく。俺たちがその名刀とやらを使ってやろう。どうせここで死んだら、サビだらけになっちまうシロモノだ。」

「拙者はここでは死なん。お前たちのような盗人の風上にも置けぬ輩を退治して、日本に帰る置き土産にする。」

「何を!」

「よせ。減らず愚痴たたいても、お前は所詮、ここで死ぬ運命さ、あれを見な。」

ふと盗賊たちの背後の地平線に目を移すと、遥かな稜線に、黒い点がいくつも表れた。点は繋がって一本の曲線になり、やがて姿がはっきり現れてきた。

それは馬に乗った多数の男たちだった。目の前の男たちと似通った服装をした戦うスタイルの猛者たち。

「何をするつもりだ。」

「お前のために来たんじゃない。ここはもうすぐ果し合いの場になるのさ。儀式の前のお前は生贄だ。」

立ち上がろうとした五エ門、あまりの空腹で立ちくらみがした。斬鉄剣を握る手もおぼつかない。

「長年縄張り争いしてきた俺たちハボ族と、クワリ族がここらの覇権を決める戦いをするんだ。」

「殺し合いか。」

「まさか、そんな馬鹿なことはしない、選ばれた戦士だけが戦うのさ。」

「相撲か、ボクシングのようなものか。」

色白の男はあきれた、というように肩をすくめた。

「お前殺すのは後だ、まずは見せてやる。」

馬に乗ってやって来たのは、3人と同じ「ハボ」という部族の首領と十数人の仲間だった。

ちょうど反対側の砂丘の尾根に沿って、馬に乗って現れた集団。おそらく「クワリ」族だ。集団はこちらに近づいてきた。

二つの部族の真ん中に囲まれて立っている二人が、選ばれた戦士らしい。顔を覆っていたスカーフかマフラーのような土色の布を取った。

二人のうち、ハボ族の戦士方は燃えるような赤く長い髪、透き通ったブルーグリーンの瞳。女のような白い肌の細面。まるでギリシャ彫刻のような端正な顔立ちの、美形だった。

馬から下り、着ていたマントのような服を脱ぎ捨てると、筋肉質の均整の取れた体が黒い鎧のような堅固なスーツに包まれて立っていた。どう見てももアフリカの人種ではない。

その男は、五エ門を囲んでいる3人に向けて、よく通る声で言った。

「最後まで誰も手出しするな、今日は私が戦士だ。」

五エ門には一目で分かった。奴は本物だ。彼のように長い間、戦いを生業(なりわい)として暮らしていると、顔を見れば使える相手かどうかが分かる。

対する相手の男は、真っ黒なヘラクレスだ。筋肉だけで出来ているような骨太の腕で、ほとんど裸の肉体を誇示し、持っていたサスマタのような鉄の武器を振りあげて相手を威嚇した。

砂漠のまっただ中で、まさかこんな見世物が始まるとは、、。

二つの部族は伝統の儀式を終え、いよいよその「戦い」が始められようとしていた。

五エ門の体力は尽き果てていたが、この戦いを目の当たりにして、再び気力がみなぎるのを感じた。この戦いを機に、妙案を思いついた。奴らが戦いに気を取られている隙に、誰か人質に取って身を守るのはどうだろう。卑怯な手だが、今は手段を選んでる場合ではない。

「天は自らを助くる者を助く、、、。」

日本語で呟いた五エ門、何かの呪文を唱えているように男たちには見えた。

盗賊の一人が五エ門に、変ににやついた顔を向けた。

「あれが俺たちの首領さ。」

真っ赤な髪の方を指して言う。

「奴の名は?」

「お前知らねえのか、、。砂漠の鷹を。」

次回に続く。

お待たせしました。やっと五エ門登場です。世間では初代石川五エ門が活躍する映画「GOEMON」がもてはやされています。

純粋な時代劇ではなく、どうもCGやSFXを駆使した最近のゲーム感覚のストーリーになりそうですね。

最近の人気映画の手法として、数人の主要人物が独立して活躍し、ストーリーが平行してそれぞれに進行、徐々に絡み合っていって、最後に一つに結びつくといった筋立てが人気です。

ルパンVSコナンでもその手法は取り入れられていましたね。ルパンの話、コナンの話、蘭と王女の逃避行、、。1つの映画で3本分楽しめるというアイデア。

この「見果てぬ夢」でも5人の主役の話がしばらくは平行して展開します。それぞれの世界に浸って楽しんで下さい。自分のお好きなキャラの回だけじっくり読むとか。

でも、謎解きには全て関わってきますので、全部じっくり読むほうが数倍面白いですよ。

まだ銭形が出てきませんが、乞うご期待!

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