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ルパン三世長編小説「炎のたからもの」第42回

(56)

追いついてクラリスの燃え尽きた車の前に立ちすくむ、ルパンと次元。

唇をかみ締めて車内を調べる。

あいつの企みを見抜けなかった。クラリス、許してくれ、、、。

車内に残された黒焦げの死体を確かめた。

どうも様子がおかしい。どう見てもそれはクラリスではなく、身代わりの、男の死体だった。魔法のように忽然と消えてしまった彼女。

その時ルパンは気づいた。

「おい、次元、バックだ。」

「えっ?」

「さっきの分かれ道まで戻れ。」

別れ道まで戻ると、そこにはシトロエンらしいタイヤの轍が2方向に向かって延びていた。

つまり、クラリスの運転する車は右に分かれ、右から出て左へ向かったおとりの車をルパンたちは追いかけていた。後ろから迫る3台に気を取られて、クラリスの車が右のわき道へそれたのに気づかなかったのだ。

ところがその道を追っても追っても、車の影も形も見つからなかった。轍は途中で消えていた。さほどスピードは上げていなかったはずだ。クラリスはいったい何処へ消えてしまったのか。

一方、不二子は単車を駆って先回りし、すでにクラリスの館へ忍び込んでいた。

城の上空あたりをマクベスのヘリが飛ぶのを見つけた彼女は、クラリスもこの館のどこかに既にいると確信していた。

思ったとおり、彼女は館にいた。何かを飲まされたのか、寝室のベッドで昏々と眠っている。

扉の向こうでマクベスの声が聞こえてきた。急いですぐ奥にあるクローゼットへ隠れる。

執事のジョドーも一緒だった。

「どうだ、薬は飲ませたか。」

「確かに、4、5分ほど前に。よく休みになっておられます。」

「お前が俺の側についたのは利口だったな、ジョドー。」

「我ら「カゲ」の一族は、先祖代々この城の主をお守りするのが宿命。あなた様が主になられたあかつきにも、同様にお守り申し上げるのが私の役目でございます。」

「クラリスの夫の命令ならば言うことを聞く、というわけか。」

「さて、もうすぐここに盗賊の一味が押し寄せてくる、餌に群がって。夕方までに始末をつける。手はずは整ってるな。」

目で答えると、ジョドーは静かに立ち去る。

天使のような顔を上向けて、何も知らずに夢を見ているクラリス。

マクベスはその横顔にしばらく見入っていた、もうすぐ己のものとなるはずの獲物を品定めするように。

「俺の船の賓客が、美しい花嫁の登場を待ち焦がれている。」

つと、傍へやってきて、その手に唇をやり、口づけする。

マクベスが去っていった後、不二子はクローゼットから這い出し、ベッドのそばにある薬ビンを調べた。彼女は一目見て、クラリスが飲まされた錠剤が、ある種の麻薬であることに気づいた。

その後不二子は、かねてからの計画を再び実行するために、ルパンと連絡を取った。

次回に続く。

交差する山道を利用してルパンが銭形にトリックを仕掛け、まんまと車に乗っている宝石を盗み取るというネタは確か、TVファーストシリーズ「雨の日の午後はヤバイぜ」の話で出てきました。

もしかしてルパンは、自分の使ったトリックを思い出して、気づいたのかもしれませんね。

この道のりはかつてクラリスが城から逃れて町へ向かっていく時の逆コース。きっとルパンは追いかけていく途中で、初めてクラリスとすれ違った場所も覚えていることでしょう。

「で、どっちにつく?」(次元)

「女!」(ルパン)

崖の下に落ちていくクラリスを助け、「俺の花嫁。」とつぶやいた、あの時からの運命の出会いはまだ終わっていない、まあちゃん1115はそう思っています。

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