ルパン三世長編小説 第3弾 「見果てぬ夢」 (2)
ルパン三世長編小説「見果てぬ夢」 (2) 星が瞬くイブの夕方。地球が暖まってしまったせいか、雪が降らない。
ニューヨークから少し離れた片田舎、セレブ族のセカンドハウスなどが立ち並ぶ別荘地。その一角にある、ごく普通のカントリーハウス。ここならアブナイ奴らの目を何とか誤魔化せるかもしれない。
バーボンのグラスを傾けながら、ほっと一息する泥棒二人。
次元はもちろんモクで。ルパンはロックが好みだ。冷凍庫に頭を突っ込むルパン。
「やっぱ、氷はこれでなくっちゃな。」 「おっと、南極の氷なんかの買い出しの付き添いはゴメンだぞ。絶対命がなくなる。」 「お・ま・か・せ。見なよこの完璧な武装。」
ドアを全開し、中を見せる。 ナイトホークス社にあった「アイスキューブ」と、MIX社製の「女神の涙」が仲良く並んで冷凍庫におすわりしていた。
一瞬、凍りつく次元。咄嗟に蝉のように、部屋の隅の柱に張り付く。
「何考えてんだ、こんなトコに。俺を道ズレにする気か!」 「氷だよ、氷。何、凍り付いてんの。五エ門に頼んで作ってもらったあれさ。」 「、、、、脅かしやがって!」 胸を撫で下ろす。
「爆弾なんかで人殺すほど、落ちぶれちゃいねえよ。集める趣味もねえ。」
アイスキューブを取り出し、グラスにポンと投げ込む。
「なんとか地図は取り戻せたが、あの若造の足取りはつかめたのか?」 「、、、、、。」(うまそうに飲んでるだけ。) 「ダッシュボードなんかに入れとくから、こんな目に遭うんじゃねえか、お前が盗難に遭うなんざ前代未聞だな、天国の爺さんに聞かせてやりてえよ。」 「いやあ、車ってキーだけで動くもんじゃないのねー。」 「あたりめえのこと言うな。」 「お前の面した奴が運転代わってくれるっつから、任せたたわけ。カワイコチャンに声かけてる数分の間よ。そいつに鍵渡すのを思い出す前に、車走っちゃってたもんね、俺お前がてっきり気利かして車移動して待っててくれると思ったんだよね。」 「どうやって車動かしたか気がついたころには、先様はトンズラしてらっしゃったてわけか。」 「わずか5分ほどで、配線つないでエンジンかけるなんざ、お見事。射撃の腕はからっきしだけどよ。それにアイツ、お前に化けて俺に近づくなんか、粋じゃねえの。俺てっきりお前の息子かと思ったぜ。どっかで、イイコトしたんじゃない?心当たりない?」 「ない。」 「ほんとに?」 「俺は誰かみてえに、女にはがっついてない。」 「いい男にはいい女が似合うってっけど、お前の周りには女なし、色気なしだもんなー。」 「お前に言われたくねえ。」 「それはそうとせっかくのイブだってのに、女っ気なしじゃ、つまんねえ。どっかこれから行ってパアッとやろうぜ。」 「不二子はどうした?いい男がついたのか?」 「俺との約束反故にして、あの宝の地図のことを詳しく調べたいからって、外国いっちまった。」 「どこへ?」 「アフリカの、ウガンダ。五エ門も一緒だと。」 「あいつがお前の誘い振り切るなんてヨッポドのわけ有りなんだろ、ま、俺はあんな疫病神いなくて幸い、このバーボンとさえいられりゃ、何処だって天国さ。女なんか掃いて捨てる程いるってのに、お前が今だにあんな性悪女と腐れ縁が切れねえのが、俺には不思議だね。」 「誰が性悪女なの?」
見れば不二子が白い毛皮のコートを身につけ、胸元あらわなドレスを覗かせながら、入り口に立っていた。
「あらま、ふ~じこちゃん、いらっしあい、ずっと待ってたのオ、寂しかったのオ。アフリカに発ったんじゃなかったの?」
横で次元があきれた顔をした。
「それがヤボ用が入ってね。」 「五エ門は?」 「あの通り究極のマイペース男でしょ。パスポートとビザ取ってあげたら、さっさとどっか消えちゃったのよ。ルパン、お宝の地図とり戻してくれた?」 「モチロン。」
取り出した例のモノ。先日、あの若造から奪い返したばかりだ。古い羊皮紙に描かれた宝の地図のはず。だが、なんの絵もかかれていない真っ白なただの紙だった。
「何よ、これ、またニセモノ掴まされたのね。」 「世紀の怪盗がなんの根拠もなくモノ盗むと思うかい?」
そばにあった100円ライターで羊皮紙をさっとあぶる。それは「あぶり出し」だった。
「長い間人から人の手へ渡った地図が、おいそれと解読できるわけねえよ。仕掛けが色々施されてると考えたほうがいいんじゃねえか?」
あぶりだされた地図は、見たことがない地形をしていた。倍率も分からないその地図の地形を世界中から探しださなければ何も始まらない。不思議にも、冷えるとまたもとの白紙だった。
「アフリカ沿岸の地形だって、どうして分かるの?」 「この地図の出所が、証拠さ。」
19世紀、東インド会社が、アフリカ南端を回って中国とアヘンの取引をはじめ、莫大な利益をあげたことは歴史に名高い。中国産の金銀が船団に積み込まれ、アフリカ沿岸を回ってヨーロッパの繁栄をもたらした。 アジアの香料や金銀と、のちにはアフリカの奴隷で、ヨーロッパとアメリカの発展が築きあげられた。
その頃の船は今と比べれば、信じがたいほど、初歩的な技術で作られていた。羅針盤や正確な地図もなく、嵐やハリケーン、座礁のために志なかばで沈んでしまう船も多かった。
20世紀始め、スエズ運河が開通するまでは、アフリカ沿岸を回るのがその当時は一番安全で、分かりやすい航路だった。
その貿易の黄金時代に座礁し、難破した多くの船に詰まれた財宝を、当時最高の船団を持っていたと言われるクック船長が、掘り出してどこかに埋めたという伝説がある。
その場所を示す地図は「キャプテン・クックの地図」として世界の海賊に名前が知られていた。あのスターゲイトでさえ、ありかを探し求めているほどの財宝の地図である。 今もなお、その地図は行方知れずになっていた。
「もしこれが、「キャプテンクックの地図」なら、解読すれば、あたしたち死んでも使い切れないほどの大金持ちになれるのね。」
不二子は無邪気に言った。頬が紅潮してきた。お金の話をすればするほどきれいになる女だ。
「これが3枚全部そろえばね。」 「じゃまだ、なんの値打ちもないのね!」 「そうねー、他の1枚は、スミソニアン博物館の展示室に「大航海時代の謎の地図」として納まってたがね。あ、不二子、俺の作った地図のニセモンどうした?」 「あなた持ってたんじゃないの?えっと、昨日のニュースよ、確か、今までにおいてあった本物が、ニセの地図に摩り替えられてたって。、、ていうか摩り替わったかどうかは分からないけど、資料室や展示ケースが荒らされたらしいわよ。」
なぜか不二子はしどろもどろだ。
「俺たちが捕まえそこなった新米の泥棒が、多分盗んでいったんだろう。」と次元。 「天下のルパン三世がそんなチンピラにまさか、抜け駆けされて引っ込んでいるわけないわよね。」
ルパン、だんだんと痺れを切らし始めた。不二子のそばにすり寄っていく。
「フ~ジコオ。ちゃんとお宝持ってきたし、そろそろ、、、、。俺ホントに命捧げちゃうから、ね、ね。」 「俺、帰って寝る。イブにはゆっくりコイツと過ごしたい。」
バーボンの瓶を持って、部屋から出て行こうとする次元。
「じゃね、モテモテのガンマン。あの若造の顔写真見せてあげましょうか。」
不二子が取り出したのは警察署発行の、お尋ね者のポスターだった。
ルイス・K・鎌田。日系2世。ニューヨークで窃盗を働く泥棒。おもに自動車の窃盗で犯罪暦数十件。1度刑務所に入っていた。ごく最近高級車の窃盗で捕まった際、警察官に発砲し、そのまま逃走。ざっとそんな話が載っていた。 次元に顔立ちや背格好がそっくりで、あご髭をつけたら次元2世とルパンが言っていたのはまんざら嘘でもなかった。
「次元よオ、そういうわけだから、そいつのコトはまた、ゆっくりとな、、。」
もう完全にさかりのついたオス猫。こんな晩は仕事の話にならない。
「けえっ、勝手にしな、この仕事下りるぜ、不二子がかんでる仕事はお断りって言ったろ。」
あかんべえする不二子の間に入って取りなすルパン。
「まあまあ、次元ちゃん。」
次元はバタンと戸を閉めて出て行った。
「こっちは究極のKY男ね。、、、ねえ、ルパン、今夜はあたしと、、。あなたのためにドレスアップしてきたのよ。」
不二子は着ていた白いゴージャスな毛皮をぬぎすて、ロイヤルブルーのサテンドレスの前をはだけるようにして、ソファーに座った。
「もちろん、一緒にイブの夜を過ごしてくれる約束、果たしてくれんでしょ。」
横から手を伸ばし、不二子に抱きつかんばかりのルパン。腰を抱かせながら、唇を払いのけ、微笑みを浮かべる不二子。
「ウフン、、あなたにとっておきのワイン持ってきたの。」
シャトー・ル・パン1969年もの。ビンテージワインだ。ルパンはワインには女同様に目がない。 トロトロにとろけそうな顔のルパン。
「じゃ、ひとまず乾杯ね。」
ワインをあけ、グラスに注いで、乾杯。
「もう一枚の地図の場所、あたし、知ってるのよ。でも、、。」
赤いルビーの様なワインを片手に、不二子の腰を抱くルパン。
「こんな夜はそんな事より、あなたとあの夜みたいに過ごしたいわ、、、。」
言うが早いかルパンは着ている服を脱ぎ捨て、、、というか蝉が脱皮するように服から抜け出る。パンツ一丁で不二子に襲いかかる。
「地図はあげるから、ふ~じこちゃんの大事なお宝みしてチョーダイ、、、。」
バコン!
最後まで言わせず、後ろから何かがルパンの後頭部を直撃した。目から火花を出して気絶する。
殴りつけたのは、いつものボクシンググローブではなく、ソファーの後ろに隠れていた別の女のフライパン。 長めのブロンド、目はきつい感じ、肌は赤銅色の、彫りの深い美形。
「不二子、ここまでしなくてもいいんじゃない?彼、事情を話せばおとなしく捕まってくれるかもよ。」
さっきワインに入れた、強力な睡眠薬の効き目を確かめる不二子。
「いいのよ、後でゆっくり話すから。あと3時間くらいは眠ってるから、その間にそのトランクに詰めて空港まで運ぶのよ。」
大きなトランクが用意されていた。
ブロンドの女はそっとルパンを抱き起こし、シャツを着せようとする。眠ったままのルパンの腕が豊かな彼女の胸をまさぐる。ぐっすり眠ってる男のいやらしい手をはたくブロンド女。
「mmmm、、フジコオ、、。」ZZZZ。 「チョットオ、あなた着せてくれない?」
美女はまるで汚いものでも見るように気絶した裸のルパンを見る。
「このままじゃ、まずいかしら。彼、このカッコでも十分生きてると思うけど。」 「そうね、風邪なんかひかない、不死身の男だもの。」 顔に似合わず、無慈悲な女たち。
「気絶してる男って気持ち悪いわ。」 「あなた、男嫌いがなおってないわね。」 「あなたこそ、男の趣味悪いのはなおってないのね、コレほんとにあの、世界一の泥棒なの?」 「悪かったわね、彼の良さを分かる女なんてそんなにいないわ。」 「不二子ゾッコンなの?」 「まさか、彼の方が、よ。」
ルパンは裸のまま大きなトランクに詰め込まれた。不二子はルパンに変装し、女は不二子に変装して、そのカントリーハウスを後にした。
「急がないと飛行機に遅れるわ。」
次回に続く。
出ました。不二子の「オヤクソク」。
これが出ないと、カメハメハ光線の出ないドラゴンボール、「印籠」の出ない水戸黄門みたいなモンです。
最初に出しときゃ、最後にはもう出ません、、絶対。
先日のルパンVSコナンでもちゃんとやってくれました。日本全国8000万のアダルトの皆様、お楽しみいただけましたか?
注1:18世紀に実在したキャプテンクックは、19世紀には死んでました。アフリカ沿岸を荒らした海賊ではなく、イギリス海軍の船長で、世界一周をし、途中でオーストラリアとニュージーランドを発見しました。この「キャプテン・クック」はフィクションです。
注2:1969年ものがビンテージワインかどうか作者は知りません、「神の雫」かなんかを読んで確かめてくれ。
芸能人の方からのトラックバックありがとうございます。大変ありがたく思いますが、原則、「ルパン三世」についての記事をお書きになって、トラックバックをお願いします。サイトを拝見させていただき、削除させていただく場合もございます。あしからずご了承下さい。
なわけで、田代まさし様ごめんなさい。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)














最近のコメント