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2009年4月

ルパン三世長編小説第3弾 「見果てぬ夢」 (14)

(14)裏切りの荒野

遮る物がないソマリア砂漠のど真ん中で、砂漠の鷹とクワリ族の男は対峙していた。

と、空が一転かき曇り、年に一度あるかないかの雨がポツリと五エ門の頬に伝い落ちた。

急に風が出てきた。青かった空に白い雲が混じったかと思うと、もの凄い速さで黒雲が湧き上がった。とたんに風はびゅうと唸りを上げ、立っている十数人の男たちの着ている白い装束やマントが風にはためく。

五エ門は斬鉄剣を手に、固唾を飲んで、この戦いの成り行きを見守った。

稲光と同時に、野獣のような筋肉男が、鉄のサスマタのような武器を砂漠の鷹の腹目がけて突き刺そうとした。鷹は敏捷に武器を同じような武器で受け止め、突き上げると同時に素早く敵の後ろに回った。

後ろから軽々と跳び上がり、今度は自分の武器で相手の喉を突こうとする。すかさず野獣は翻り、武器で武器を跳ねのける。

二人の背後、まだ遠くに竜巻が見える。この地方で特有の砂漠に湧き上がる大竜巻だ。辺りの空気が、砂で黒々と霞んでゆく。

二人の戦士は一進一退。刺したり跳ねのけたりの繰り返し。大竜巻は少しずつこちらに向かってやって来る。砂嵐で目が開けられない程だ。だが、誰もこの戦いを中止しようとするそぶりも見せない。

周りにいた一人が、はためくマントの下に武器を隠し持っていたのが、五エ門の目にちらりと映った。もう一人が小さな吹き矢の筒を持っているのも。

見れば周りを囲む全ての男が同じように、こっそりと手斧か短刀のような、手元に隠せる武器を持って砂漠の鷹の様子を窺っている。

五エ門の心に義憤が沸き起こった。これは公明正大な果し合いではない。何かの陰謀で、奴一人を謀殺するのがねらいなのだ。

一瞬の差で鷹の持つ武器が野獣の喉元を押さえつけた。何処にそんな力があるかと思われる細腕で、押さえつけられる鋼(はがね)の体躯の大男。地面に転がってじたばたと抵抗する。そのまま砂に埋ずもれるように沈む。激しい咳をする。吹き荒れる強い風で砂が顔を覆いつくし、とどめを刺さないでも窒息死しそうだ。

いきなり周りの男たちが鷹に向かって跳びかかった。

たった一人の男に、これだけの数の男が騙し討ちとは、、。

五エ門は斬鉄剣をすらりと引き抜くと、男たちの塊に突っ込み、斬鉄剣が稲光のように霞んだ空にきらめいた。目にも留まらぬ速さで切り裂き、一人残らず真っ二つにした。

けだものたちが断末魔の悲鳴を上げて倒れる中、五エ門自身も力尽きてその場に跪いた。いつもの彼ならこれしきの事で、これほど消耗するはずはなかったが。

鷹は周囲から襲われ、おそらく十数か所は刺されて血を流していたが、果敢に暴徒を跳ね返した。勇者は五エ門の足元にやって来て、跪いて訊ねた。

「怪我はないか。」

五エ門はくらくらする頭で考えていた。

命とは何の為にあるのか。このけだものたちとて生きるために殺し、生きるために欺いた。拙者も同じ。皆、縁あってここで出会ったのに。

鷹が腕を脇に差し込み、五エ門を担ごうとした。

突然、細い筒から吹き矢が飛んで来た。まだ生き残りがいたのだ。

五エ門の目にはスローモーションで動く吹き矢の毒針の先に、鷹の顔が見えた。五エ門は反射的に身を投げ出した。

それはまともに、五エ門の喉に突き刺さった。この地方にある、獣を獲る猟に使う強力な毒矢だ。

五エ門の視野は一瞬にして真っ暗になった。そのまま戦士の胸に倒れ込んで意識を失った。

次回に続く。

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映画のパクリじゃないんで、、最後まで読んでくれよな!

最近、「デュプリシティ」とか「レインフォール」とか、CIAのスパイが活躍する映画がヒットしてます。

今連載中の作品にたまたまCIAのスパイが登場したり、暗殺に巻き込まれる話だったり、日系2世が出てきて活躍したりするんで、人気映画からネタをもらってるって言われて、凄くくやしい思いしてます。

自分としては、あくまで、映画が公開される以前に作った自分のオリジナルストーリーだと自負しています。

「ルパンVS複製人間」と「失われた記憶」が全く違う内容のクローン人間ストーリーだったように、今回の「見果てぬ夢」もぜんぜん違う内容ですので、最後までご期待下さい。

なんでだよ~。映画が出来るずっと前に、原稿ができてたんだぜえ~。 

いかに自分の作品にオリジナリティを持たせるかが魅せる作品作りの醍醐味です。モノマネ芸人さんだってただマネするだけじゃ飽きられちまう。 人のネタをどう料理して自分らしさを出すかも勝負どころ。

ユウチユーブで面白い映像見つけました。ものすごくたくさんの人が「ルパン三世のテーマ」を投稿する中、まさに個性的!

一緒に楽しもうや。アリガトな、投稿者君。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (13)

(13) 砂漠の鷹

体の痛みは心で乗り越えられる。しかし、心の痛みはこらえようとすればするほど、五エ門の清真な魂を蝕み、まるで膿を持って熱を発する刀傷のように彼を痛めつけた。

ソマリア共和国。内戦で家を失った人々が押し寄せる難民の住処。ボートを待つ数十万の老若男女。軍事政権とは名ばかりで、ほとんど無政府状態の国だ。

ケニア、ウガンダ、ソマリアと彼はたった一人、修行行脚の旅に出ていた。文明から取り残された村々を徒歩で回って。

貧しいというよりは、あまりにも悲惨な国々。内戦によって破壊された建物の瓦礫の間に未だに取り残された人々。主に10歳未満の子供、女と老人。

伝染病が蔓延し、小さな子供たちが病気を持ったまま路上で生活し、飢餓のために路上で死んでいった。

彼はここに来る前、難民キャンプの中にある診療所のボランティアとして働いていた。そこで亡くなった子供を二人ほど埋葬した。

所詮自分は、他国者であり修行者でしか生きられない、、、。

そこの医師の勧めを振り切って、再び旅に出た。あの心の痛みから逃れるには自分の肉体の限界まで身を焦がすしかない。

彼は自分なりの答えを見つけようと、この過酷な世界に踏み込んでいた。

40度以上の砂漠の熱と,飢えと渇きが彼を襲っていた。もう3日、何も食わず、飲み水といえば、ここに来る前にキャンプで分けてもらったペットボトルの水、別れのしるしに医師からもらった気付け薬用のウイスキーの一瓶。もうほとんど底をついていた。

拙者は何故、こんな所で、無意味な行脚を続けているのか、、、。

分からなかった。

ただ死んでいくだけの幾百人の虚ろな瞳は彼に向かって、何かを語りかけていた。

人は何の為に生まれ、生き、死ぬのか、、、。

彼は終わりなき旅を続けていた。死をも乗り越える何かを求めながら。

広大な砂漠の中、照りつける太陽に負け、五エ門は膝を折って、その場に倒れ臥した。

やがて見渡す限りの砂の向こうに、砂埃が上がった。それはだんだんと彼に近づいて来た。

「おい、イイモン持ってるぜ。こいつ。」

「変わった服着てるな、難民でもないようだ。」

3人組の、この土地独特の衣装を着た男たちだった。

砂漠に慣れたこの地方産のずんぐりした馬に乗っている。

「まだ生きてるみたいだぜ。服を剥ぐには早いな。」

ハゲタカのように、死ぬのを待って持ち物を奪う盗賊のようだ。

「こんな武器を持ってるって事は、奴らじゃないな。取り上げろ。」

一番年上らしく命令口調なのは、色白で優男の顔だ。あとは見るからに黒い、猛者の、悪の塊のような面ばかり。この国には種々雑多な民族や人種が住んでいる。アフリカ系もそうでないのも。

五エ門はふらつく頭でそいつを仰ぎ見た。掠れ声で答えた。

「、、、拙者はただの修行者。理由あって日本からやって来た。お主らのような盗賊にこの名刀を渡すわけにはいかぬ。」

「死んでいく奴が何をほざく。俺たちがその名刀とやらを使ってやろう。どうせここで死んだら、サビだらけになっちまうシロモノだ。」

「拙者はここでは死なん。お前たちのような盗人の風上にも置けぬ輩を退治して、日本に帰る置き土産にする。」

「何を!」

「よせ。減らず愚痴たたいても、お前は所詮、ここで死ぬ運命さ、あれを見な。」

ふと盗賊たちの背後の地平線に目を移すと、遥かな稜線に、黒い点がいくつも表れた。点は繋がって一本の曲線になり、やがて姿がはっきり現れてきた。

それは馬に乗った多数の男たちだった。目の前の男たちと似通った服装をした戦うスタイルの猛者たち。

「何をするつもりだ。」

「お前のために来たんじゃない。ここはもうすぐ果し合いの場になるのさ。儀式の前のお前は生贄だ。」

立ち上がろうとした五エ門、あまりの空腹で立ちくらみがした。斬鉄剣を握る手もおぼつかない。

「長年縄張り争いしてきた俺たちハボ族と、クワリ族がここらの覇権を決める戦いをするんだ。」

「殺し合いか。」

「まさか、そんな馬鹿なことはしない、選ばれた戦士だけが戦うのさ。」

「相撲か、ボクシングのようなものか。」

色白の男はあきれた、というように肩をすくめた。

「お前殺すのは後だ、まずは見せてやる。」

馬に乗ってやって来たのは、3人と同じ「ハボ」という部族の首領と十数人の仲間だった。

ちょうど反対側の砂丘の尾根に沿って、馬に乗って現れた集団。おそらく「クワリ」族だ。集団はこちらに近づいてきた。

二つの部族の真ん中に囲まれて立っている二人が、選ばれた戦士らしい。顔を覆っていたスカーフかマフラーのような土色の布を取った。

二人のうち、ハボ族の戦士方は燃えるような赤く長い髪、透き通ったブルーグリーンの瞳。女のような白い肌の細面。まるでギリシャ彫刻のような端正な顔立ちの、美形だった。

馬から下り、着ていたマントのような服を脱ぎ捨てると、筋肉質の均整の取れた体が黒い鎧のような堅固なスーツに包まれて立っていた。どう見てももアフリカの人種ではない。

その男は、五エ門を囲んでいる3人に向けて、よく通る声で言った。

「最後まで誰も手出しするな、今日は私が戦士だ。」

五エ門には一目で分かった。奴は本物だ。彼のように長い間、戦いを生業(なりわい)として暮らしていると、顔を見れば使える相手かどうかが分かる。

対する相手の男は、真っ黒なヘラクレスだ。筋肉だけで出来ているような骨太の腕で、ほとんど裸の肉体を誇示し、持っていたサスマタのような鉄の武器を振りあげて相手を威嚇した。

砂漠のまっただ中で、まさかこんな見世物が始まるとは、、。

二つの部族は伝統の儀式を終え、いよいよその「戦い」が始められようとしていた。

五エ門の体力は尽き果てていたが、この戦いを目の当たりにして、再び気力がみなぎるのを感じた。この戦いを機に、妙案を思いついた。奴らが戦いに気を取られている隙に、誰か人質に取って身を守るのはどうだろう。卑怯な手だが、今は手段を選んでる場合ではない。

「天は自らを助くる者を助く、、、。」

日本語で呟いた五エ門、何かの呪文を唱えているように男たちには見えた。

盗賊の一人が五エ門に、変ににやついた顔を向けた。

「あれが俺たちの首領さ。」

真っ赤な髪の方を指して言う。

「奴の名は?」

「お前知らねえのか、、。砂漠の鷹を。」

次回に続く。

お待たせしました。やっと五エ門登場です。世間では初代石川五エ門が活躍する映画「GOEMON」がもてはやされています。

純粋な時代劇ではなく、どうもCGやSFXを駆使した最近のゲーム感覚のストーリーになりそうですね。

最近の人気映画の手法として、数人の主要人物が独立して活躍し、ストーリーが平行してそれぞれに進行、徐々に絡み合っていって、最後に一つに結びつくといった筋立てが人気です。

ルパンVSコナンでもその手法は取り入れられていましたね。ルパンの話、コナンの話、蘭と王女の逃避行、、。1つの映画で3本分楽しめるというアイデア。

この「見果てぬ夢」でも5人の主役の話がしばらくは平行して展開します。それぞれの世界に浸って楽しんで下さい。自分のお好きなキャラの回だけじっくり読むとか。

でも、謎解きには全て関わってきますので、全部じっくり読むほうが数倍面白いですよ。

まだ銭形が出てきませんが、乞うご期待!

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ルパン三世長編小説代3弾「見果てぬ夢」(12)

(12)次元爆弾

次元はマディソンスクエア・ガーデンに向かっていた。

あのアジトは放棄するしかない。あいつが忍び込めたならガルベスにも知れる。それにあの正体の分からない組織の連中にもやすやすと入り込めた。あの部屋のからくりもばれたにちがいない。

それにしてもルパンは何処へ行ってしまったのか。俺が誘拐されて、戻ってきてから何日もたつのに、アジトにも寄らず、何の連絡もしてこない。正月は一緒に飲むはずだったのに。もっともこんなのはよくある事なんだが。

携帯のコール音がした。自分のではない。フェニックスと名乗った男から受け取った方だ。

「次元。先日の件は考えてくれたかな。」

「ルパンがもう1週間戻って来なかったら、考えてもいい。だが、こちらもいろいろと準備がある。せめて殺る相手くらいは教えてくれ。」

「知ってどうする?」

「俺もプロだ。相手の事を知らなきゃ、作戦は立てられん。」

「作戦は全てこちらが指示する。」

「、、、なるほど。」

「相手については調べる必要はない。君のターゲットはアメリカの新大統領、ナラク・オハラだ。」

「、、、。」

「君の相棒はある場所に我々が安全に保護している。」

「保護?」

「そうだ。君がこの計画を完遂するまで、彼に死なれては困るのでね。」

「ルパンを人質に、俺を殺人マシーンに仕立て上げるってわけか。」

「以前にも言ったが、君を一流と見込んでのオファーだ。もう一つ言っておく、君の脳には特殊なチップが埋め込まれている。世界中どこへ逃げても、我々は君を追跡できる。きみが仕事を放棄すれば、数分後に君の脳は破壊され、原因も分からない病気として闇に葬られる。」

アレルギー反応の検査とは、チップの埋め込み手術のためだったのか。自分の後頭部に、3針ほど縫ったあとがあったのを思い出した。そこを触った。混乱しかけている次元にさらに畳みかけて言う。

「君のもう一人の親友の、あの若造だが、彼にも役割がある。それまでは殺さないでもらいたい。」

「、、、、、分かった。」

携帯が切れた。

どうやら居場所どころか、今までの行動は逐一お見通しのようだ。気づいて腹がたった。俺のプライバシーはどうなるんだ!

ルパンが捕まってるとしても、そう長い間おとなしくしてるわけがない。問題は体内の時限爆弾をどうやって取り出すかだ。

最近見た映画の中で、ある男が極悪非道なボスに、携帯電話兼時限爆弾を体中に埋め込まれる場面を思い出した。ぞっとする光景だった。まさか俺がそんな目に遭うなんて、、、。

ルパンが自力で抜け出して来るまでにまだ時間がかかる。暗殺の日時はほぼ検討がつく。

3月末にある大統領就任祝賀パレードだ。暗殺の手段が狙撃ならこの時しかない。この計画を仕組んだのが誰であれ、大統領の政敵なら、一番効果がある方法を選ぶはずだ。毒殺でもテロでもない、世界中の人間が見ている前で殺す。かつての「ケネディ大統領暗殺事件」の再来。

次元がそこまで考えた時、もう一つの携帯が鳴った。

「いや、わりいわりい、おまっとさん、ちょいとヤボ用入っちまった。」

「、、、おめえ、ルパンか?」

「どうしたい?なんかあったのか?」

「約束の時間から48時間以上遅れたら、おめえの女ならこう言うぜ。」

「?」

「馬鹿野郎!!今何処にいる、心配させやがって!もう2週間だ!」

「わーるかった、わーるかったって、次元ちゃん、これには深~い理由(わけ)がよ~。」

「おめえが遅れるわけは一つしかねえ、女に入れ上げて、俺との約束を忘れた。」

「わーすれるわけねえよ。それより今はゆっくり話ができねえ、取り合えず、こっちから連絡するまで待ってくれ、それから合言葉の変更。」

「女の名前はやめろ。」

「ジャッカルなんてどう?」

「ケネディを殺した男のコードネームがか。趣味の悪い映画見やがって。」

「いい名前じゃねえの、お前にピッタリ、決まりだ。ところであのボウズに鈴つけたか?」

「ああ、お前のイモムシ、アイツの上着の裏にちゃあんと張り付いてら。」

「OK。あ、それと、俺が連絡するまでに、リモコンヘリ一台用意しといてくれ。目的地の地図を送る。ボストンだ。」

ルパンはその後、メールでいくつかの暗語(別の意味を示す暗号がわりの言葉)を指定した。

「よし、やれ!」は「そこはだめよ。」

「ちょっとまて。」は「そこよ、そこ。」

「右につけろ」、は、、。「助けにこい。」は、、、。多すぎてメモにでも取らなけりゃ忘れちまう。とりあえず写し取って、メールは消去だ。

そこで次元はふと思った。どうやらルパンは奴らに捕まっていない。これ以上長話すれば俺の体内にある装置で、ルパンの居場所を知られるおそれがある。それにもし、ルパンに自分が脅迫されている内容を話せば、俺を助けるために、今張ってるヤマを振り出しに戻そうとするだろう。

暗殺の日までまだ日がある。それまでに何とか、俺の脳内にあるチップを取り出せば、ずらかっても問題はないわけだ。自分のした事の始末は自分でつける。

そう思って、彼はルパンに秘密を打ち明けるのをやめた。

次回に続く。

注:ナラク・オハラって有名なあの方の名前と似てますけど、この話はあくまでフィクションです。実在の人物とは何ら関わりありません。ご存知かと思いますが、念のため。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (11)

(11) 合言葉

俺は殺し屋じゃない。今さら金で雇われて人殺しなんかする気は毛頭ない。ただルパンの消息を確かめておきたかった。あいつらの言うことが出任せかどうか知りたい、ルパンがほんとにどっかに連れ去られたなら、仲間になったふりして行方を捜し、救い出すつもりでいた。

あの一味はギャングやシンジケートではない、何か巨大な組織を感じさせた。俺を拉致し、解放するまでの鮮やかな手口は、今まで出会ったどんな凶悪な組織のやり口にも似ていなかった。

誰を殺そうというのか。そもそも暗殺の手段が他になかったのだろうか。あんなに巨大な組織なら、銃で撃つ以外の何らかの手が打てるはずだ、俺を薬で殺さなかったのも不思議なくらいだ。

アジトに誰か入ってくる音が聞こえた。この場所を知ってるなら不二子かルパンしか考えられない。

明かりをつけずにソファーに寝転んでいた次元は、戸口に立っている男に聞いた。

「合言葉。人生は?」

「華麗なる暇つぶし。」

「俺の好きな野球チームは?」

「レッドソックス。」

「お前の好みの女のタイプ。」

「女なら誰でもいい。」

「よし、入りな。ついでに明かりつけろ。」

ルパンが明かりをつけようと入り口の壁にあるスイッチを押した。とたんにガタンと大きな音がして、入り口の2畳分の床板が落ち、ぽっかり穴があいた。彼らのアジトには必ずこの仕掛けがしてある。

「お前やっぱりネズミだな。」

次元が穴に向かって覗き込む。ネズミは穴にはかかっていなかった。腕時計の明かりで穴を探す次元の真上から覆いかぶさってきた。敏捷に天井にはりついて助かったらしい。見たらやっぱりルパンだった。

「あ、わりい、わりい、そこにいた?」

次元にサルのようにおぶさるルパン。

「お前、自分で仕掛け作ったの、忘れちまったのかよ。」

「ああ、そうだったな。」

「おかしな奴だな、お前、誰かにとっ捕まったって聞いたぜ。」

「誰に?」

「お前がパンツ一丁で写真に写ってるとこみたら、もしかって思ったのさ。」

シケモクくわえながら、あったことを話した。次元はルパンに話せば、謎を解く鍵を与えてくれるはずと考えていた。ルパンも空港で逃げた状況と、不二子の裏切りについて話した。

「お前を捕まえた組織と俺を捕まえ損なった連中は違うな。」

次元の相手は、ガルベスの手下にしては手際が良すぎた。それに簡単に開放してくれたのには何か裏がある。

ルパンはそれ以上何も言わず、部屋の奥にある金庫に向かった。

「欲しかったのは俺たちなのか、俺たちの持ってる情報なのか、、。」

「それを確かめるためには、博士に会って、あの地図を解読してもらうより、手はねえんじゃねえかな。」

ルパンは黙って金庫についてる装置にセキュリティコードをインプットし、電子ロックのかかっている金庫を開けようとする。しかし、なぜか開けられない。

「おととい、コードかえたっていったろ。」

「そうだな、で何番だったっけな。」

「何言ってんだ、モンローのパンティの色って、お前が決めたくせに。」

「そうだな、で、何色?」

「、、、、。」

次元は黙って金庫の真ん中にあるもうひとつのダミーのダイヤルを示す。泥棒よけに作った見せかけのダイヤルだ。

「こいつを回せ。」

「?」

「回せば分かる。」

ダイヤルを回すと、金庫の扉が簡単にあいた。中を覗き込もうとしたルパンの真上から、強力なワイヤで出来た巨大な網が、蜘蛛の巣のように襲ってきた。そのまま蜘蛛の巣はルパンをすっぽり包むと、天井の四隅から立ち上がった強力な、しなう竹のような鉄の柱にハンモックのように吊り上げた。

まるで地引網に引かれた魚か、それともタコつぼにはまったタコだ。

「おい、何すんだよ、次元。」

「気安く呼ぶな、ボウズ。性懲りもなく、俺たちのアジトにもぐりこんでまた地図を盗もうってんなら、見当違いだ。」

「チクショウ、気づいてたのか。」

「好きな野球チームはマリナーズで、色はWHITEだ。」

「いつ変えたんだ。」

「お前が逃げたあと、ルパンがメールで決めた。」

「女の名前は合言葉か。」

「泥棒なら、簡単に開く金庫なんか信用しねえこった、ボウズ。」

「ボウズなんて呼ぶな、不二子の居所を教えるから、こっから出してくれ。」

「その前に正直に言いな、不二子とつるんで、博物館から地図を盗んだのはおめえか。」

「、、そうだ。」

「その地図はどこにある?」

「不二子が持ってった。」

「嘘つけ。おめえがそんなドジ踏むか。」

「俺じゃ地図が読めねえ、不二子が解読できる人に頼むんだ。」

「ルパンに渡した地図はニセモンか、どっちだ。」

「俺が盗んだやつさ。ニセモンに決まってるだろ。もともと、奴が持ってたのがニセモンなんだから。」

「お前の親父はそういわなかったぞ。」

「何で知ってる?」

「俺がルパンだからさ。」

「、、、。」

「なわけねえだろ。おめえが正直に話してくれれば、俺も無茶なことはしねえ。俺たちはシロートさんには迷惑をかけねえ主義なんだ。」

「、、、」

「どうした?」

鋼鉄の網の中でもがいていた奴がうめき声をあげ始めた。形状記憶合金でできたこの網は、もがけばもがくほど稲縄かコルセットのように強力に体を締め付けて、身動きできないようにする仕掛けになっていた。締め付けられすぎて若造は息ができなくなってきていた。

「頼む、、。」

次元は苦しむ人間の顔を見続けることができない男だった。金庫のダイヤルを元に戻すと、網は底の部分がさらりと解けた。どさりと床に転がる新米の泥棒。

よく見ると、仮面をはいだ顔の、自分の若い頃そっくり、ふてぶてしく、どこか飢えた瞳がこっちを向いていた。

「おめえじゃルパン4世にゃ役不足だな。」

こめかみに銃を押し付けながら言う。

「うるせえ、さっさと殺せ!」

「まだ、聞きたいことがある。おめえが返した地図、ルパンがもともと持ってた物だとして、何か地図のことで不二子に聞かなかったか。」

「別に。」

「不二子が持ってるのはおめえと一緒に盗み出した地図と、ルパンから取り上げた地図だが、他に地図を持ってるとか、、、。」

「俺が知ってるのは「博士」って人しか、あの地図が本物かどうか分かる人はいないってことだ。不二子はその人のところにいる。」

「なるほど、でお前は何で、金庫の中身が知りたいんだ。」

「あの地図は全部ニセモンだ、それに3枚揃わなけりゃ、意味がないんだ、つまり俺にニセモンを掴ませ、残りの一枚ももう手に入れてるんだろーが。」

「中見てみろ。」

次元は立ち上がって、セキュリティコードをインプットし、ダミーの脇にある本棚の形をした本当の金庫の蓋をあけて中を見せた。

空っぽだった。

「罠にはめたな。」

「という事になるのかな。」

次元にそっくりな若者はとたんに跳ね起きて次元に蹴りをかました。が、空発。敏捷によけた次元は持っていたマグナムでそいつの頭と腕を思い切り何度も殴った。力なく崩れおれる青二才。

「修行してきな、若いの。」

「ニセモンつかまされた不二子が黙ってると思うかい。」

へらへらと笑い、切れた唇の端をなめながら言う。

「あれは本物じゃねえ。俺は何度も調べた。あぶり出しだって事までは分かってたから、丹念にあぶって。だが、浮き出た地図はどこの国の地形でもない、出鱈目だ。キャプテンクックの印のドクロもない。」

「おめえが分かるのはそこまでさ。俺たちは上をいく。今度俺たちにちょっかいだせば、命の保証はねえぞ。」

「俺は何度でも来るさ。お前らが地図を解読して、お宝を掘り出す前に、寝首をかかれねえように気をつけな。」

次元は嘯く男の口に銃口を突っ込んだ。喉の奥へ押し込む。

「いいか小僧、この道に足を突っ込むなら、ハンパにするな。お前の命を守るモンは口じゃねえ、ビビッてる間に尻の穴からでも逃げ出す方法考えるんだ。」

物も言えず、目を白黒させてる男を蹴り倒した。

「あばよ、ボウヤ。家業ついでギャングにでもなっとけばお前を殺さずに済むかもな。」

蹴り倒された男は再び反撃に出た。ナイフ片手に無謀にも向かってきた。次元はうんざりしたといったふうに手を振った。

「まだやるのかい、ママのお膝に座って甘えたほうがいいんじゃねえか。」

投げつけたナイフが次元の頬をかすめ、後ろの壁に突き刺さった。マグナムの口から火が出て、天井のボタンに弾が当たり、水ではなく激しく煙が出始めた。火災報知機が鳴った。部屋に煙が充満したと思ったら、次元は消えていた。

あいつは邪魔な俺を殺すことも、捕まえてサツに突き出すこともできた、、、。

ルイスは初めて、今まで出会ったこともない強大な敵に身震いした。

「おもしれえ、ルパン三世に次元大介、お前らを絶対超えてやるぜ。」

にやりと笑ってカラ元気。

次回に続く。

次元母の会、友の会その他熱烈な次元ファンのあなた、申し訳ございません。大変下品な次元を書いてしまいました。本来の彼はもっとフェミニストで繊細な、ダンディな男です。今、危機に瀕して神経質になってるだけです。

こんな話はいやだ、、なんて思わないで最後まで読んで気を取り直してくれや。かっこいいシーンこの先用意してるかんな。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (10)

(10) スナイパー

次元は朦朧とした意識の中で、幾度となく妹の名前を呼んでいた。3つ年下の幸子だ。

夢の中は故郷の秋田の町だった。

秋祭りのお囃子の笛や太鼓が響く中、夜店の前を歩いていた。9歳の彼はおどおどとあたりを見回しながら、人ごみを抜けて、どこかへ行こうとしていた。何かを探しながら。

ふと気付くと、一緒にいたはずの幸子が人ごみにまぎれて見当たらない。大声で妹を呼んだ、何度も、何度も。

振り返ると、幸子は指を噛みながら、大きな瞳で彼を見ていた。彼に劣らずおどおどとあたりの様子を伺っていた。

目の前に眩しい灯りのついた夜店が見えた。探していた店だ。

「おい、何してんだ、孤児(みなしご)が!」周りを取り囲んだのは町のワルガキ3人だった。

反射的に地面にしゃがみ、泥を掴んで投げつけようとする彼を、3人はもみくちゃにした。彼は大声で悪態をついた。奴らの手を振りほどき、幸子の腕をつかんだ。

「走れ!」

そこで彼は自分の声に驚いて目覚めた。あの医務室だった。

ここは、一体何処なんだ。俺は何でこんな事に、、。声を発することも出来ず、混乱したままの次元。

「血圧、心拍数、脳波異常ありません、ドクター。」

そばにいた看護士がきびきびといった。

「結構。アレルギー反応も良好だ。」

「おい、俺に何をした!」

ベッドから跳ね起きようとする彼の四肢には、厚い皮製のバンドが取りつけられベッドに貼り付けられていた。さらに激しく抵抗する次元。白衣を着た医師がやって来て言う。

「落ち着いて聞きなさい。我々は君の命まで奪ったりしない。静かに話を聞いて、こちらの条件を受け入れてくれれば、解放してあげる。」

四肢の枷がゆっくりと外された。

次元がベッドから起き上がると、そこはそのままソファーに早変わりし、病室は暗くなり、正面にある白い壁がスクリーンになって、突然映画が始まった。それは次元の思い出したくない記憶を蘇らせる映像ばかりだった。

世界に一つしかない金貨を狙って軍事政権国家に潜入。脱出までの時間はあとわずかだった。遅れて脱出する次元のために、ルパンが道しるべがわりに荒野にばらまいたのは彼の愛銃、コンバットマグナムの部品。

敵のガンマンの追撃をからくも避けながら、それをひとつひとつ拾い上げ、組み立ててついに敵を倒した。もちろん国境の門が閉まる寸前まで、ルパンは彼を信じて待ち続けていた。

世界一のガンマンとの死闘。かつて世界一と謳われたミネソタ・ファッツは、彼のトレードマークの帽子を全て焼き捨て、騙し討ちにしようとした。奴は雪山で自分が撃った一発の拳銃の音で、引き起こされた雪崩に巻き込まれて命を落とした。

そこまで映像が進んだとき、背後に医師とは別のスーツ姿の男が現れた。

「ようこそ、世界一のスナイパー、次元大介。」

「人違いだ。そんな凄腕がお前らみてえな薄汚ねえ根性の奴らにやすやすと捕まらねえだろう。こんな安物の映画におさまるわけねえ。」

いきり立つ様子もなく、平然とその男は言葉を続けた。

「君に会いたがってる人がいる。会わせてやりたいが。」

「女なら人違いだね。」

「男だ、君の相棒。」

次に見せられたのは、すっぱだかで大きなトランクに押し込められようとしているルパンの写真だった。あのパンツの柄はルパンのに間違いない。彼は次元のように同じ柄のを何枚も持つ趣味はない、いつものハート印のを除いては。

確か、穿いてるとこを初めて見たのは、不二子に会う前の晩だった。マリリンモンローの絵柄の入ってるのを特注したと自慢げに見せびらかしていた。唇マークのついた下品なピンク色のだ。

こんなのを穿く男が奴以外にいたら会ってみたい。そう思いながらシラを切りとおす法を考えていた。

「君が誘拐された日に、ルパン三世も我々が別の場所に誘拐した。」

「何のために。」

「君に頼みたいことがある。」

「ルパンにじゃないのか?」

「彼にもしてもらうことはあるが、君にまず、我々の計画の一部に参加してもらう。」

「、、、、、、。」

「我々はある男を君に抹殺してもらいたい。」

「、、、。」

「もし、うまくいけば、君の親友は解放し、君へは報酬を支払う。相当額のね。」

男はそう言うと小切手に金額を書きこみ、次元にそれを見せた。雇われ仕事の報酬としては見た事がないほどの高額だ。

「我々は先ほどの映像をある筋から入手した。世界中探したが君ほどの名手は、他にいない。我々の作戦を成功させる人材として、最適と考えてだ。」

「、、、次元なんて男は知らない。」

「君がこれほどの条件を断るほど馬鹿な男ではないと信じている。2日ほど猶予をやる。もし気が変わったらその間に知らせてくれ。君の親友は君が仕事をうまくやりおおせたら解放する。」

「俺が次元だとしたら、ルパン三世がやすやすとお前らに捕まるなんて信じねえな。」

「信じるかどうかは君の自由だ。」

次元は腹をくくった。

「誰を殺る?」

「時が来たら指示する。それまでは待機してくれ。」

男は携帯電話を渡した。

「これで連絡してくれ。私につながる。」

「あんたに名を聞いても無駄かな。」

「私の名はフェニックスだ。次元大介。」

次の瞬間、次元は気を失い、気がついた時は、アジトの一室だった。ベッド脇の机に愛銃もおいてあった。これは絶対に夢ではない。

だが、なんのために?誰を、、、、。

次回に続く。

だんだん次回が楽しみになってきましたね。謎解き満載のストーリーですから、最後まで読まないとストレスたまりますよ。

五エ門ももう少しで登場します。五エ門ファンの方、お待たせしてすみませんね。

注:TV2NDシリーズ第99話「荒野に散ったコンバットマグナム」と第152話「次元と帽子と拳銃と」を参考にさせていただきました。どちらも面白い話なので、まだ見ていない君、ぜひ。

次元が秋田出身とか、身寄りがなくて、妹の名が幸子というのは全くのフィクションです。妹がいるのはモンキーパンチさんのコミックの中で判明しています。

秋田出身ではないか?とするのは、カリオストロの城の話の中で、「大司教様のためならば。」というセリフの「言い回し」から作者が想像しました。秋田出身の方、「チガウヨ~。」とおっしゃるかもしれません、どうかお許しを。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (8) (9)

(8) 軟禁

次元がボンヤリと目覚めると、そこは病院の医務室か手術室のような部屋だった。

四肢がベッドに固定され、身動きができない。白衣を着た男がやってきて、彼の顔を覗き込み、健康状態を確認しながら、カルテに何かを書き込んだ。

その後また、数人の白衣がやってきて、彼の様子を話していたが、彼の知らない言語だった。

朦朧とした意識のなかで、彼らが自分についていろいろな事を調べているのが分かった。

彼は再び、深い眠りのなかに落ちていった。

(9)       ニセ地図  

不二子は日本の自分のアジトに客を呼んでいた。アメリカの高名な化学者であり皮膚移植に長けた外科医ナインシュタイン博士。

世界中の皮膚移植学会の権威たちが京都の大学に集まって、今シンポジウムが開かれている。不二子の新しいペントハウスはその会場の近くにあった。

3枚の地図のうち、2枚を手に入れた彼女は、彼に鑑定を依頼しようとしていた。念のために、ガルベスから受け取った「本物」だという地図も一緒に。

彼は医者である他に、世界にちらばる古地図を研究するアマチュア研究家としても知られていた。19世紀に作られた不思議な地図を発見し、スミソニアン博物館に寄贈したのも彼である。

不二子は博物館の職員を装って彼に近づき、今までに様々な情報を得てきていた。

「こんな所でまたあなたにお会いできるとは。世の中不思議なものですな。」

「奇遇ですわ。私の祖父が学会に籍をおいているものですから、博士のご来日を知って、ぜひ、自宅へお招きしたいと思いましたの。」

「なんとおっしゃいますかな。」

「え?」

「そのお爺様は?」

「ええっと、京都大学の鎌田作蔵と申します。」

「あの、日本の皮膚医学の権威ですか。」

「ええ、あの、早速ですが、これをある筋から手に入れたのですが、、、。」

不二子はブリーフケースから2枚の地図を取り出し、差し出す。

「本物かどうか、見ていただけますか。」

博士は身を乗り出した。あの博物館には、これまでずっと偽者が展示されていたはずだ。捜し求めていた物が見られるかもという期待に博士の心は震えた。

不二子はその2枚とは別に、寸分違わない大きさと色のもう1枚も一緒に添えた。

博士は紙質をていねいに拡大鏡で調べた。そして首を振っていった。残念ながら、、と。つまりルパンがルイスから取り返した物も、自分がスミソニアン博物館からこっそり盗み出したものも、ガルベスから渡されたものも、全て後世の贋作者が作った精巧な贋作だと。

まんざら嘘をついているのでもなさそうだ。博士の失望の顔で感じ取った。

「3枚のうち、2枚は羊皮紙ですが、残りの1枚は明らかに、現代の技術で作り出しまがい物です。」

不二子はふと思った。もしかしたら、これらは全て、ルパンが考えた芝居ではないかと。あの次元にそっくりな若造を騙し、ニセの地図を餌にして彼をおびき出した。

同様にして不二子にニセを掴ませ、3枚揃わないと宝のありかが分からないなどと出任せを言って、ここで博士に会わせて博士の計画を探らせようとしたのではないかと。

つまり本物はまだ、ルパンの手にあるのだ。

少なくとも不二子を介して博士と接触を図ろうとしているに違いない。ルパンは博士がこの地図に関心を持っていることを以前から知っていた。ニセ地図を掴ませることで、彼の地図についての知識がどの位かを見極めようとしている。

それなら、あたしにも考えがある、、。

ところが博士はそのニセの地図を見て言った。

「しかし、この3枚がいつごろ作られたのかには興味がありますな。しばらく、これを預からせていただきたい。」

一週間のちに返却することを約束して、博士はその30センチ四方の3枚の紙をちょうど入るくらいの大きさのブリーフケースに納め、大事そうに抱えて去っていった。

不二子は博士と、その夜にある学会の晩餐会に出席することを約束した。彼と親密になり、是非とも地図の秘密を探らねばならない、もちろんルパンよりも先に。

次回に続く。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(6) (7)

(6)誘拐

 「だから女の名前はよせって言ったんだ。」

次元は珍しくいらついていた。ルパンとのお宝探しが、今度もまた不二子の割り込みで最悪な事態を招きそうな予感がした。

それに今、彼には怪しい奴らの尾行がついていた、7人も。彼の銃は6発しか発射できない。いくら早撃ち0,3秒の彼でも、弾を込めなおすには1秒以上はかかってしまう。

1発で2人、、、どう料理するか、、。

バーボンウイスキーをしたたかに飲んだあくる朝、携帯にメールが入っていた。

「次元、あたし寂しいわ、、、マディソン・スクエア・ガーデンで待ってるから。リンダ」

なんで俺を呼び出すのが女の名前なんだ。それもカレンとか、モニカとかリンダとか、、。スコッチとかラオチュウとか他にいろいろあるじゃないか。やな名前だぜ、全く。

過去の苦い思い出が脳裏をよぎる。

彼がルパンの指定した広場のベンチに座ってから、数分でさらにいやな予感がした。

ビール缶片手の職人風の男、よたってるホームレス、口紅を拾い上げてる女、となりで居眠りしてこけそうになってる老人、広場で清掃にあたってる制服、みんなこっちの気配をうかがってる。

あと2人は次元が歩き出してからこの5人に加わった、町を歩いてる二人の警官姿。こんな数の尾行にあったことがなかった。

全員をまく自信はあったが、誰がなんのために仕組んでるのか知りたくもあった。

ビル街が入り組んでる2ブロック先までゆっくりと歩いた。思ったとおり7人は彼の歩調に合わせてついてきた。

ビルに挟まれた狭い路地の一角。次元は立ち止まる。人の気配が数人。

次元はゆっくりポケットに手を入れ、ライターを取り出した。タバコに火をつけるふりしてあたりを伺う。まだ取り囲む気配はない。

口にくわえたタバコに火をつけ、そのまま道端に放り投げる。タバコが激しい火花を放って炸裂し、ネズミ花火のように回転した。煙があたりに充満する。

次元の黒い帽子が煙の中に掻き消えた。

はっと気づいた尾行の男たち、煙の周りを取り囲む。煙の中に次元がいないことに気づいて、あたりを探し回る。

一方、次元、ビルの角に潜んでいた女の口を素早く押さえ、後ろから羽交い絞めにする。激しく抵抗する女。次元は拳銃を突きつけ、耳元で囁く。

「静かに俺の話を聞けば、命は助けてやる。」

こめかみに当てられた銃にびっしょりと汗をかく女。

「これでもフェミニストなんだ。が、性悪女には容赦しない。あんたのボスは誰で、目的は何だ?」

突然後ろから背の高い男に銃を突きつけられた。もう一人尾行がいたのに気づかなかった。

「我々におとなしくついてきてもらえば分かる。」

男の腕をひねり上げようとして掴むと自分の手首がちくりとした。薬を打たれたらしい。猛烈な眠気がおそってきて、次元はその場にくたくたと倒れた。

(7) 女スパイ

   

「ねえ、君、ほんとに俺と会ったことない?」

ベッドにすっぱだかで横たわるルパン。もちろんあの後、ずっと裸でいたわけではない。今脱いでいるのは不二子とはまた別の女性のために、である。

次元にメール送った後、安宿に帰ってみたら、階を間違えたとか言って、カワイコチャンがこの部屋に紛れ込んでいた。

せっかくなので、色々とナニしようと口説いているうちに、つい成り行きでこうなったわけで、次元には約束の時刻に遅れた埋め合わせはするつもりだ。

扉を半ば開けたまま、隣でシャワーを浴びているのは栗色のストレートヘア、キュートなダイナマイトボディーのアジア系美人。日本人かもしれない。すりガラスに映るボディーラインをうっとり眺めるルパン。

「そうね、空港のどっかだったかしら。」

「フライトアテンダントなら、なん回か日本航空の便の中で会ってるかも。」

「あなたみたいなセクシーな人、そう忘れるわけないわね。」

「俺、有名人だから。」

「あなた、もしかしてテレビに出たことない?日本で。」

「まあね、そうちょくちょくじゃないけどさ。」

彼女は色っぽいシナを作りながら、タオルを巻きつけてベッドへやってきた。彼は彼女の腰に手を回して引き寄せる。

「あ。思い出したわ、三人で歌ってるグループの「猜疑心」の一人。」

「ざ~んねんでした。俺、歌わない、どっちかつうと俳優ね。」

「あ~山田ヤスオのモノマネしてる、あの人。」

「刷多贋一?」

「違う違う、彼はルパン三世のモノマネでしょ。」

「俺、ルパン三世のモノマネも得意よ。」

「え~じゃ、マネしてみて。」

「つうか、本人なんだけっども、、。」

「またあ、あなたみたいなハンサムボーイ、あんなサル面にぜんぜん似てないわ。」

「うれしいね、素顔でそんなコト言われたのは初めてだな~。」

キスしようと彼女に迫るルパン。

「あなたの付き合ってきた人、見る目がないのね、」

言いながら上目遣いに彼を見つめ、隠し持っていたオーデコロンのビンから液体を吹き付けた。あっという間にベッドにひっくり返るルパン三世。

彼が動かなくなったのを確認すると、フフと笑って女は枕元に置いた彼の携帯を手に取る。用心のために電源を切っておく。

「大泥棒も女には弱いらしいわね。」

バッグの中から自分の携帯を出して連絡する。

「こちらピンクパンサー。ターゲットは捕捉した。国外には出ていない。」

連絡を切ったその手をルパンが掴んだ。小さな鼻栓が二つポロリと落ちた。彼女の携帯を取り上げ、楽しそうにいう。

「君みたいに可愛くて、純真な女の子、俺好みなんだ。さっきの続きがしたいけど、その前に君のボスに会いたいな。」

「会ってどうするつもり。」

「まず、しつこく俺をつけまわしてるわけを聞く。次に忠告して、お仕置きする。俺を怒らせっとどんな目に遭うかってな。」

彼の目が光り、眉がつりあがる。

後ろに跳びすさる女、手には小型のピストルが。ずり落ちそうになったバスタオルを必死で手で押さえる。ルパンとたんに顔がくずれる。

「せっかくいいコトしようってのにそんな危ないもん、しまっときなよ、俺、君のためなら何でもするからさー。」

女が銃を発射しようとすると、ルパンはすでに抜き取っていた弾倉を彼女に投げ渡した。そして撃ってくれというように両手を挙げた。

「降参するからってボスに言ってくれ。」

「ほんとに?」

「その前にさっきの続きしてかない?」

ビンタ張られる前に今度はルパンが後ろへ飛びすさった。下もすっぱだか。もちろん下半身は元気いっぱい、準備OKだ。

彼女が顔を真っ赤にして横を向く。

「じゃ、後でゆっくり考えるとして、取り合えずこれで連絡してくれや。」彼女の携帯を返す。

「何て。」

「ルパンを捕まえた。今からあんたのアジトまで連れていくってね。ついでに外で見張ってるこわ~いおっさんたちに、とっとと帰れって言ってくれる?ピンクパンサーちゃん。」

「私の名はカレンよ。」

カレンは、ただちにボスへ連絡を取った。

次回に続く。

あっという間に第7章まで来ました。なかなか面白いアクションシーンまでたどりつかないんで、退屈してる君、もうちょっとだかんな、我慢して読んじゃってくれや。

さて、金曜ロードショー「ルパン三世VS名探偵コナン」について、感想を書いたサイトを見つけたぜえ、読んでみる?

いいこと言うねえと思うやつもある。

批判は批判でもいいが、俺的には、プラス思考でいきたいもんです。よりよい作品を作ってもらえるように、ルパンアニメのスタッフさん、作り手さんにも納得してもらえる書き方をしたいね。

グーグル検索による「ルパン三世VS名探偵コナン」の感想ブログ入り口

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(4) (5)

金曜ロードショーを見逃した君のために、とっておきのプレゼント。この話を最後まで読んでから見てくれ。

(4) ライバル    

空港の待合室のトイレの個室で、本物のルパンは下半身パンツいっちょで震えていた。

もちろん、3時間ぐっすりと眠っているほど馬鹿ではない。睡眠薬で眠ったふりをしながら抜け目なく不二子と友達の女に盗聴器をつけ、大きなトランクには内側から鍵を開ける仕掛けを取り付けておいた。

トランクが空港の荷物を運ぶベルトコンベアーに乗り、別室に入ったところで脱出。が、さすがに裸では目立ちすぎる。通りかかった空港のポーターを捕まえて服を脅し取ったのはいいが、ズボンをもらい損ねた。ポーターを追いかけてる間に、美女を見失った。

「ヘエックショイ!今日13日の金曜日?天中殺?」

トイレの個室で不二子とガルベスの会話を盗聴する。

「クソ、俺の名を騙って、めんどくせえ仕事勝手に引き受けやがって、、、。」

その頃不二子、変装を解いて、友人を空港で探す。不二子の友人は出発ロビーで待っていた。

「ルパンに逃げられたわ、まんまと。」

「一応想定内の事態よ、これも。」

「あの黒服たちはなんだったの?」

「あなたが追ってる組織の連中。」

「ルパンも狙われてるの?」

「今、彼を欲しがってる組織はごまんといるわ。ひとまず今日は日本に引き上げ。」

「待って、あの人、あたしたちをじっと見てるけど、、。」

次元がこちらに向かって歩いていた。

「不二子、ルパンの居所知ってるか。」

「あら、あなたたち、一緒じゃなかったの?」

「連絡が取れないんだ。見つかったら教えてくれ、ここで待ってるから。」

市内のホテルの住所を書いた紙切れを渡す。

不二子は気づいた、コイツは次元じゃない。にっこりと受け取って言う。

「用があるなら、どうどうと素顔であったらどう?彼はあなたみたいな小物には会ってくれないかも知れないわよ。」

「ちぇ、ばれちまったか。ルパンに言ってくれ、どっちが世界一にふさわしいか、賭けしようって。」

「賭けるものがあるの?」

「お宝の地図は俺がいただく。最後にお宝のありかをみつけたモンが世界一の証拠さ。あんたがルパンに寝返って、俺を裏切ったことを後悔させてやるぜ。」

(本物の地図はアタシの股の間よ。)大股にかっこつけて去っていくルイスの背を見送りながら、不二子はほくそえんだ。ガルベスがくれたのが本物なら、だ。

一方、空港トイレにこもって聞いていたルパンも、にっと笑って独り言を言った。

「ただお宝を見つけるだけじゃ、ホントの世界一とはいえねえんだぜ、ボウズ。」

数分後、トイレ掃除にやってきたおっさんが、下半身パンツいっちょの男が個室から出てきたのに驚いた。彼は愛想よくおっさんに手を振って出て行った。

不二子とその友人は日本に向かって飛んだ。

(5) 美人捜査官

  

真夜中の旅客機の座席。並んで会話する峰不二子とその友人のブロンド美人。

「ジョアン、ほんとにあたしに協力してくれるんでしょうね。」

「もちろんよ、あたしたちはずっと友達よ。今、CはIに借りを作りたくない。ぜひLを逮捕し、Iに引き渡して今までの借りを帳消しにしたいの。」

CはCIA、IはICPO。Lはもちろん例のあの彼。

「あなたと古い馴染みで良かったわ。彼が捕まってくれたら、あたしはずいぶん仕事がはかどるし、あなたはあなたで、お手柄昇進ものだしね。」

「うまく彼を捕まえられればね。」

「アンデスでの作戦は痛かったものね。」

「麻薬取締りの作戦は振り出しにもどるわ、助っ人で入った仕事であいつを逃がすわ、、あれがもとであたしはリストラされちゃったのよ。」

「彼を恨んでるの?」

「まあね。知恵比べで負けたのは私のせい、仕方ないわ。で、今は派遣なの。この仕事がうまくいけば復帰できるかも。リベンジは考えてる。」

「あなたみたいな凄腕を手放すなんて、Cは馬鹿よ。」

「政府も財政難なんでしょ。」

ジョアン、本部との連絡用につけていたペンダントの盗聴器兼発信機の電源をオフにしたかを確かめながら言う。

あの時不二子は銭形を欺くルパンの作戦を知りながら、彼女にそれを知らせなかった。

あの時点ではまさか、CIAのエージェント「ジョアン・スミス」が、かつてのミネアポリス射撃訓練学校での同期生とは気付かなかった。

アメリカで知り合った不二子の旧友だったが、写真を見ても気付かなかった。かつて小麦色の彼女の肌の色はなぜか濃い赤銅色に変わっていたからだ。今見ても別人と思ってもいい位だ。

「銭形って女に弱いってデータ出てたけど、全然あたしの言いなりにはならなかったわよ。」

「あなたに魅力がないって事じゃないの。そういう男なのよ。」

「あんな男に命がけで付き纏われて、Lはよく捕まらなかったわね。」

「捕まったんだけど、逃げちゃってるの。かれこれ数十回。手錠を掛けられたのはもう、無数。」

「あなたも一味だったんですって。今度は脱獄の手助けなんかしないでよ。」

「分かってるわ。」

「ところで日本で何するつもりなの?」

不二子は昨晩手に入れた厚い羊皮紙の地図を、太ももに巻きつけ、その上にストッキンングを履いて隠していた。親友にもその秘密は漏らさなかったが、そっと自分の腿に手を置きながら答えた。

「ある秘密を知ってる人に会うの。」

実はもう1枚もすでに手に入れていた。スミソニアン博物館にあったのをルイスと一緒に盗み、以前ルパンがくれたニセモノと摩り替えて博物館に置いた。その後ルイスには不二子手製のニセをつかませておいたので、ガルベスから戻って来たのが本物かは怪しいが。

ルパンがくれたばかりの1枚と、自分で盗んだ1枚。ガルベスからのは果たして本物か?地図は3枚揃わなくてはとルパンが言っていた。後は本物かどうか鑑定できる人物に会う必要がある。

ルパンを捕まえたがってるCIAの友達と出会ったのはラッキーだった。彼を捕まえてくれたら、脱獄するまでに時間が稼げる。今回は彼と組めないわけがある。この大航海時代に作られた宝の地図は、昔、アルセーヌ・ルパンのコレクションだったらしい。

その孫は地図をくれても、不二子にはその謎は明かさないだろう。彼の祖父に対するリスペクトは不二子への愛情を超えていた。彼女は今までの経験からそれを知っていた。もしニセモノを掴まされたなら、自分で本物を見つけるつもりだ。

それに最近のルパンは、得体のしれない連中にしょっちゅう命をつけ狙われてる。今までもそうだったが、アジトさえ狙われるようになった。あたしがうまくやって日本の警察の安全な檻に入れとかなきゃ、謎を聞き出す前に殺されちゃう。

一方、ジョアンは、ルパンと接触しようとしているニューヨークマフィアを一網打尽にする任務を負っていた。ルパンを追えば、奴らの居所が分かる。またはルパンをつかまえて日本の警察に協力し、ギャングのアジトを探ることが今回の彼女の仕事だった。

当初の計画ではトランクにつめたルパンを、日本で待っている銭形に引き渡すはずだった。それが失敗した今、彼に協力してもらってルパンを捕まえる必要があった。

ジョアンは銭形と過ごしたあのアンデスの山小屋の一夜を思った。一晩中あんなに迫ったのに、彼はついにあたしをものにしなかった。あんなに男気のある、ナイーブな男に彼女は出あったことがなかった。

見かけはよくても、一皮むけばケダモノのようになる男を彼女はいやというほど知っていた。肌の色や外見だけで人を判断するような人間も大勢見てきた。

彼は違っていた。あの日以来彼女は、しきりと銭形のことが思い出された。

注:ジョアン・スミスと銭形のアンデスでの馴れ初めは、ルパン三世小説「告白のチャンスは一度」の方に書いていますので、より深く楽しみたいあなたは、右サイドバー、小説のコーナーよりお入り下さい。

金曜ロードショー「ルパン三世VS名探偵コナン」良かったらご覧下さい。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (3)

(3) ギャングの思惑

      

ケネディ国際空港。

搭乗口でニセのパスポート「異船見張留(イセンミハル)」を差し出す変装した不二子。後ろにはもちろん例の不二子に変装したブロンド美人が「富士峰子」のパスポートを持って連れ立っている。

搭乗口から出ようとした二人に、6人のスーツ姿の男が立ちはだかる。

「何か。」

「すみませんが、パスポートに不備があります。空港詰め所まで、ご同行下さい。」

慇懃だが、断固とした口調で、その中の一人が言った。

「何か書類上のミスでも、、。」

6人の男は空港詰め所とは反対方向へ二人を誘導しようとする。

不二子、連れに目配せして小声で言う。

「これ、空港のガードマンじゃない。あなた先に行って。例の物頼むわね。」

不二子鮮やかな手つきで近くにいた男にパンチを食らわし、両側の男に鋭いケリを入れ、近くにあった公衆トイレに駆け込む。女性用だ。ブロンド美人は不二子が男を相手にしている隙に、搭乗口から発着ロビーへと滑り込んで、悪者をまいた。

不審な男たち、いっせいに不二子のいるトイレに駆け込む。中にいる数人の女性たち、男たちの手に持っているピストルに驚いて、悲鳴を上げて逃げ去る。

不二子男装から素顔に戻ろうとするが、間に合わない、あっという間に入り込んだ男たちに外へ連れ出された。

「なんの用だ。」

「抵抗しなければ殺しはしない。お前に会いたがってる人がいる。日本に帰る前に会ってもらう。」

昔会ったことがある。が、思い出せない。

スーツ姿の男たちに囲まれて不二子はあたりを見回した。幸い、不二子に変装した友人は捕らえられてはいないようだ。ひとまず安心して一緒に用意された車に乗った。

目隠しされて1時間。どうやら同じ場所をぐるぐると回ってから、とある屋敷についた。

案内された場所は、ヨーロッパの家具調度品が所狭しと並べられた、豪邸だった。

「久しぶりだな、ルパン。」

現れたのはガルベス。ニューヨークマフィアの重鎮。以前ルパンが痛い目にあわせたことがあり、銭形ら、ICPOに捕らえられ、1年ほど臭い飯をくらった後、保釈金を積んで出所していた。もちろん足を洗うつもりなど毛頭ないに違いない。あれから時は過ぎ、長いこと会っていなかった。

積年の恨みを晴らすつもりだろうか。

「何のことか、分からんね、俺は日本から商用で来た。」

「とぼけなくとも分かってるさ、ルパン三世。お前があのお宝を追って、アメリカに来てることも、スミソニアン博物館にあるもう一枚の地図を狙ってあのアジトに住んでたことも、お見通しなんだ。」

一文字に噛み締めた口の端を歪めて言った。

「用は何だ。宝の地図は夕べこそ泥に持って行かれた。もう俺の手にはない。」

「分かってる。実はお前にその地図を返す。」

「、、、。」

「お前が今持ってるやつはニセモノだ。こっちが本物で、あともう一枚のありかもわしは突き止めた。」

「ニセモノってどうして分かる?」

「盗んだ奴が教えてくれた、わしの息子だ。信用できる。」

「ル、、、俺が逃がした男はお前の息子か。」

「いい男だろう、わしの女に生き写しだ。アイツがお前から地図と車を盗み出したと聞いて、わしがどんなに愉快だったか、、、。」

「手短かに用件を言ってくれ、飛行機に乗りたいんだ。」

「本物を返すから、わしの頼みを聞いてくれ。あんたを男と見込んで、頼みがある。」

「?」

「わしの息子に、泥棒になるのをあきらめさせてくれ、、。」

「、、、。」

「話せば長い話になる。わしはあんたを宿敵として組織を立て直し、恨みを晴らすつもりでいた。ところが跡取り息子がわしの願いも聞かず、家を出て行った。

今は中古車会社のバイトだ。この不景気で解雇され、高級車の窃盗なんぞで、警察のご厄介になっとる。そこらのゴロツキどもと変わらん。

何とか、わしが立ち上げた組織をあいつに継がせたい。」

「俺にどういう関係がある?」

「あんたを崇拝してるんだ、よりによって、世界一の泥棒になって、あんたを打ち負かすなんぞと嘯いてな。」

「俺でなくても、、、」

「あんたでなくてはいかんのだ、世界一の泥棒のあんたになら、あいつをあきらめさすことが出来る。」

「孝行息子に後を継がせるなんて夢を、お前があきらめるんだな。」

「この地図が欲しくないのか。」

「それが本物なら、。」

「本物だ、そのしるしが、この地図には記されている。」

ガルベスはルパンが持っていた物と寸分変わらない厚い皮のような紙を取り出して偽ルパンの不二子に渡した。

その時、バタンと部屋の戸が開き、その孝行息子が入ってきた。手には自動小銃を抱えていた。

「親父、俺を裏切ったな、もうお前ら組織の人形にゃならねえ。」

「地図が欲しいなら、力づくで奪って行け!」

ガルベスは発狂したかと思うような形相で、そばにいた手下を使い、息子の足元に弾をあられのようにぶち込んだ。不二子は身軽にその場に伏せ、家具の間に体をすべり込ませて防いだ。

親子で骨肉の争いが始まった。戦場のような轟音とともに蜂の巣ができる室内。弾切れした跡取り息子めがけて襲い掛かるマフィアたち。ついに押さえつけられ、羽交い絞めされ、銃を取り上げられた。

「これ位で済むと思うな、クソ親父!」

息子は大勢に押さえられた腕を振り解くと、ドアを蹴飛ばして出て行った。

穴だらけの部屋の隅からガルベスが立ち上がる。

「頼む、わしの願いを聞いてくれたら、この地図だけでなく、ルーイが盗んだもう一枚のありかも、、。」

「約束が果たされたら、確かにもらう保証は。」

「あいつがわしのところにもどって来さえすれば、あと1枚をあんたのアジトに届けさす。」

「なぜ、地図をくれる?」

「ギャングが持っていても仕方がない。わしにはその秘密を解く力はない。宝が見つかるかどうかはあんたの力量しだいだ。」

「なるほど。」

「あんたのアジトはもう奴らに嗅ぎ付けられているかもしれんが、ルーイさえ戻ってくれれば、連絡をつける。」

「奴らとは?」

「今に分かる。」

「俺がルパンじゃなかったら。」

「その辺は抜かりない。あんたがルパンだろうと無かろうと、必ずルパンには伝わる。」

「分かった。この件承知した。」

ニセルパンを空港へ送ったあと、ガルベスと子分たちは思案した。

「ボス、あのルパン三世が、うまうまと罠に引っかかるとは思えませんぜ。」

「だが、犀は投げられた、どっちみち奴は本物の地図を手に入れただろうからな。」

「時間を省いてやったってことですかい。」

「若大将にはこの話は伝わっているんですかい?」

「いや、あいつは本気だ。そこがこの芝居のミソなんだ。分かるかお前ら。」

そこでギャングたちはほくそえんだ。

次回に続く。

注:イセンミハルはルパン三世の偽名の一つで、モンキーパンチさんの作品に登場してます。ヤクザです確か。フジミネコはご存知「ルパン三世VS名探偵コナン」に出てた不二子の偽名。この名前じゃ、偽名の役割をほとんど果たしていませんね。

ガルベスはご存知、ファーストコンタクトに出てくるギャング。

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