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2009年6月

ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」 (26)

(26) カジノサバイバル(ルパンには恋を、銭形には?)

カジノの絢爛豪華な個室。今はテーブル席に移り、カードにうち興じる銭形とジョアン。

すでに手持ちの金は10万ドルを超えた。

一晩でここまで稼げる客はそう多くない。周りにはすでに見物人がたかり始め、5人のカード客の周りには、一人ひとりにファッションモデルと見まがうようなホステスや、愛人の風情した女が腕を絡ませている。

ゲームはもちろんポーカーだ。

ポーカーフェイスにはほど遠いあんぐり口した銭形の耳に、ジョアンが何ごとかを囁く。

「あと2枚。」

銭形の持ち札を予想して、しばらく勝負師たちは腹を探り合う。

賭け金がそれぞれ前に積まれた。銭形がストレートフラッシュで勝負を決め、周りからため息が上がる。

「私はもう降りる。」

隣の席にいたゴージャスな背広を着た、太った男が葉巻をくわえながら席を立った。

入れ替わりに黒髪で、数本の金色に染めた前髪をまばらに垂らし、涼しい瞳、黒いあごひげを蓄えた背の高いイケ面男がその席についた。

日本で今ブレイクしている人気グループ「猜疑心」の人気歌手の一人にそっくりな彼。アメリカでも人気なのか、数人のドレス姿の女性たちが歓声をあげながら彼の周りを取り囲んだ。

「ロックで。」

酒を注文するや否や、彼はダイナマイトボディの体の線を見せつけ、淡いピンクのドレスを纏った小柄な連れの女の手を取り、隣の席に座らせた。

彼女の頬に軽くキスする。周りの女たちは一様にがっかり、といった顔でそばを離れた。

「もう一枚ね。」

「私も。」

再びテーブルにカードが配られ始めた。

カレンはジョアンにそっと目配せする。だが、ジョアンは気づかない。まさかこんな所で姉に会うとは夢にも思っていないのだろう。

ルパンに合図するつもりで、そっとハイヒールのつま先で彼の足を触った。会話で銭形の気を引いて欲しいのだ。

「初めまして。僕、日本から来た神路と言います、よろしく。」

「ああ、日本の方ね。」

銭形はカードの組み合わせを思案している風で、こっちに関心がなさそうだ。

「あの、おたく日本の有名な警部さんに似てるって言われません?」

「ああ、僕よく言われるんだなア。」

「(ボクってツラかい。)もしかして、あの有名なルパン三世を追ってる、、、。」

「追ってる?」

「毛利小五郎さんて言いましたっけ、、。」

「ありゃ探偵だ、ボクは銭、イタッ!!!」

隣に座ってるジョアンが銭形の足をハイヒールの踵で踏みつけた。

「どうしました?」

「ダーリン。」

ジョアンが銭形の額をせわしなく拭く。

「、、、リアのレストランで修行しましてな。」

「ああ、フレンチのシェフね。」

「いや、そっちは趣味でして。今は日本の企業戦士ですわ。不況の煽りを食って今は海外研修の身です。」

「大変ですね今はどこも。で、ルパン三世なんかを捕まえる暇はない。」

「あんた、何でその泥棒の名を知ってる?」

「噂ですよ、CIAの美人エージェントを誘拐して逃げている怪盗。」

「じつは私、その泥棒を捕まえる、、。」

ジョアンは勢いよく隣に並んだ脛を蹴り上げた。

いってえ!

蹴り上げたものは銭形の脛ではなく、向かいにいるギャング風の男の股間だった。ふんぞり返っていたその男が飛び上がって、テーブルの上にあったものが飛び散った。

「何しやがんでえ!」

男たちがその場をとりなし、女たちはテーブルからこぼれた酒や飲み物で汚れたドレスを拭いて席を立った。

その喧騒の中、絶妙のタイミングでカレンは妹を賭博場から連れ出した。

次回に続く。

ありがとうございます。このブログへのアクセス数が2万を超えました。

最終回にはまだあと39回(最終回は第65章を予定しています。)ありますのでどこまでいけるんだろな、、。

このブログを訪れてくれる方に「面白かった、続きを読みたい。」と思っていただけるようにしたいですね。お一人でも楽しんでくださったら、あまりアクセス数なんかにこだわらないことにしようかな。

ありがとね、一人で2万回もアクセスしてくれた君。、、、たったひとりだとしても感謝です。君のためにこれからも真心込めて書くかんな。

蛇足:この小説を完成した頃は「羞恥心」はまだ解散していませんでした。もちろんアメリカの大統領はオバマさんと決まってなかった。少々ネタは古いですけどそれなりに笑えたかな?

アクセス2万回を記念して、今REDが特別企画を考えてます。乞うご期待!

次回、ま~た会おうぜ。

P.S 今知りました。「羞恥心」は復活するそうです。

ウソだろ、と「猜疑心」に満ちたあなたはニュースを見るべし!

紳助さん、どうせなら限定復活なんて言わないで3人が爺さんになるまでこのユニット応援してやってよ。カミジ君もツルノ君も、ノクボ君も解散なんかすんなよ。

「神路」のあとは「鶴野」を登場させて、このルパン小説でもっと宣伝しちゃうぜ。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(25)

(25) 恋のかけひき

「ほんとに連絡しなくてもいいのか?」

「ええ平気よ。もう本部じゃ裏切り者ってレッテル貼られて、あなた以上のお尋ね者になってるわ。」

「じゃ、君の腕を見込んで手伝って欲しい事があるんだ。」

「私が?」

国営カジノの地下1階、つまり二人の愛の巣の上の階で、かつてのカジノ中央管理ルーム。ここも今ではルパンのアジトの一部になっている。

全世界のギャングや泥棒、海千山千の悪党のブラックマーケットが集まるベガスの、まさか国営カジノの地下にこの大泥棒の秘密のアジトがあるとは、FBIでも気づかないだろう。

ここなら日本にある大型銭湯の地下アジトより安心だ。警察に踏み込まれる恐れもないし、出口を間違って女湯に紛れ込む心配もいらない。

カジノの営業を円滑にするために、何百箇所に配置された隠し監視カメラの映像を映し出すハイビジョンTVが何十も備え付けられている部屋。ルパンのアジトとなった今もまだ稼動している。あの勝鬨橋の近くの「紅屋」の地下の十倍の規模の設備が備わっていた。

たびたび命を救ってくれたルパンに、カレンは感謝以上の感情を持った。少なくとも彼は体を張って彼女を助けたと信じているに違いない。

だが実は、ルパンを誘惑して籠絡し、味方についたと見せかけて行動を逐一報告する指令を受けていた。つまり恋人になったと思わせ、ルパンのこれからの計画と宝の地図の秘密を探り出す任務だ。

ハネムーンのような甘い関係を偽装しながら、後ろめたい気持ちと彼に惹かれていく気持ちでカレンは日々揺れ動いていた。

今夜の二人はちょいとシビアに、これからの盗みの計画を練っていた。カジノのTV映像を部屋全体に映し出しながら、ルパンのノートパソコンの画面に見入った。

「どう思う?この映像。」

「一体これ、どこなの?」

「ZEDの中にある古い病院の跡。つまりペンタゴン・CIAが持ってるかつての医学的な研究資料や秘密の開発薬品、生物兵器の倉庫の名残ってわけさ。」

空撮した巨大企業の敷地全体の写真や、たくさんの建物の配置、建物の建築見取り図、設計図、3Dで示されたそれぞれの建物の空調施設、排水管、電気系統の配線図、ガスや水道の配管。

つまり泥棒が盗みに入る前に調べておくあらゆる情報が立体映像になって一つのファイルに収まり、最も適切な侵入ルートを示す線が赤く光って示されていた。

「こんな極秘のデータをどこから盗んできたの、ルパン。」

「この情報が信頼できるかどうか調べて欲しいんだ。」

「待って、この空撮写真は簡単に手に入るわ、私は本部の情報管理室にいたことがある。もしかしたらサイトに侵入して、パスワード入れればこのデータの一部が取れるかも、、。」

彼女はてきぱきとサイトにアクセスし、プロの腕で15分ほどかけてデータを探した。

「あったわ、同じファイルの一部。どうやらデータは本物みたい。ZEDにあるCIA管轄の、かつては軍の病院やCIAの研究施設のあった建物の地下。

今は戦争に悪用されては困る生物兵器、劇物や秘密の開発薬品が厳重にしまってある地下倉庫よ。

でもこのパスワードでもこれ以上詳しいことは調べられないわ。サイトを開けられないようにすごいセキュリティがかかってる。」

彼女はふと、ルパンの目がきらきらし、じっと彼女を見つめているのに気づいて微笑んだ。

「どうしたの?」

「すごいんだ、君って。悪党や泥棒なんか捕まえる仕事より、ネットで商売すれば世界中を相手にできる。いい男が言い寄って来るぜ。」

「でもここへ入り込むのは至難の業よ。」

画像を見ながらさらに情報を引き出すカレン。

「へ~えそうなんだ。よく見せてよ。」

言いながらカレンの肩に後ろから手を置き、彼女が振り向いた弾みにキスしようとする。

そうはさせまいと体をそらして避けるカレン。

「この基地に入るまでにレーダーで探知されてしまうのよ。例え内部に入れても何十ものセキュリティを突破しなけりゃ。」

「それも君に協力して欲しいんだ。」

いかにルパン三世と言えど、ギャングや一般企業とはケタ違いにセキュリティや防衛施設が整っているCIAの秘密基地に潜入するのだ、相当の計画を練らなければならないだろう。

おそらく世界一難攻不落の、最高水準のハイテクな技術力を持った施設に、潜り込もうというのだ。

「こんなデータを一体どこから手に入れたの?」

「ナインシュタインが博物館に置いたニセ地図の羊皮紙の中に、マイクロチップが埋め込んであった。それがこれさ。」

「あなたが盗み出すのを知ってて?」

「俺に盗み出させたかったのさ。こんなに厳重な金庫にしまってある、ある物を。」

「彼の経歴は見たでしょう。あそこの主任研究者なのよ。それなのに自分で持ち出すことができなかったの?」

「奴はCIAに何かの理由でマークされてる。怪しまれるような事をして、国家反逆罪にでもなったらこれまでのキャリアが台無しになるんだろ。この男を知ってる?」

ルパンが差し出したのは、かつての宿敵「白乾児(パイカル)」の顔写真だった。

「十数年前、俺はこの男にすんでのところで殺られるところだった。この男はその当時全く知られていなかった技術で俺を脅かした。

体に塗った薬品のおかげで、弾を通さない超硬質の皮膚を持っていた。俺はその謎を解き、奴の持ってた化学式で合成した薬を全身に塗っていたおかげで命が助かった。このデータには、なぜか、あの薬の化学式が添付されていた。」

「本部で過去の内部の犯罪者のファイルを整理したことがある。確かZEDの、当時は軍専属の病院から特殊な薬品を盗んで、行方不明になった男の履歴を整理したことがあったわ。その男に似てるかも。」

「名前は分かるか?」

「よく憶えてない。確か日本人で、、、カリタとかカバタとか、、。」

「鎌田?」

「そうそう、そんな名前。」

日本人、多分あの化学式と薬を盗み出した男。優秀な研究員だった男が、なぜキャリアを棒に振ってまで盗み出さねばならなかったのか。

「その病院での過去の研究とか、入院患者とかのリストは調べられる?」

「できなくはないけど、、、かなり高度になるわね。産業スパイどころじゃない犯罪行為になるけど、、。」

「やってくれよ。」

「、、、、あのね、あなた私を何だと思ってるの、泥棒の片棒を担がせる気?」

彼を振り返り、腕を組んで言うカレン。口調とは裏腹に目が笑っている。

「もと優秀なCIAエージェント。今は泥棒の恋人兼普通の女の子、、、、になりかけてる。」

今度は肩をおさえ逃げられないようにして、ま正面から額にキス。

「自惚れてるのね。」

再び背を向けて、画面を見つめたまま、後ろに手をのばして彼のモミアゲを触る。

「普通の女の子に戻るんじゃないのかい?この仕事が終わったら。」

後ろから首筋や両頬にキス。カレンがその気になるまでありとあらゆるサインを送る。

「じゃ私にも、協力してちょうだい。」

パソコン画面を見ながらそれ以上キスさせまいと彼の頬に手をあて、彼が掴んでいる片手を振りほどいて言う。

「何を?」

「前に話してた行方不明になってる父を探し出すの。あの巨大基地で働いてて、行方が分からなくなった、、、。」

「お!」

カジノの様子を映し出してるTV画面をチラリと見たルパンが声を上げた。

「父つあん!なーんでこんなとこまで来て遊んでんのオ~。俺を捕まえに来たんじゃねえのかい。」

画面に映っているのは、カジノのルーレットで馬鹿勝ちし、山のような札とチップかかえて高笑いしている銭形だった。がらにもなくタキシード姿。蝶ネクタイがダサすぎ。

何と隣には美しくドレスアップした女まで連れている。

「いやあ、父つあんもやるねえ。」

イカサマなんてワザ、父つあんに出来っこない。でも俺でさえ、あそこまで勝つのは実力では無理だ。

よく見たらその隣で笑いながら父つあんにキスを浴びせているのは、いつかアンデスで引っ掛けて騙した麻薬取締り捜査官、不二子とつるんで俺を拉致しようとしたあの女だった。

「こりゃ参った。とうとう父つあんも、おさまるとこにおさまるってか。」

幸運を祈る、とばかりにTVのスイッチを切ろうとする。

カレンの様子がおかしい。

「どうした?」

「別に、、。」

「隠し事はよそうぜ、俺は君に何もかも話したつもりだ。俺たちが信頼できるパートナーになれなきゃいい仕事は出来っこない、君のやろうとしてる事にもうまく協力できない。」

「あの子、私の妹なの。」

「誰?」

「あの日本人の隣に座ってる子は、私が高校生の時家出した、二つ下の妹よ。」

「CIAのジョアン・スミスが?」

「所属してるのは本部の情報で知ってた。麻薬取締り捜査官は組織管轄が全く違うの。でもまさか、こんな所で会うなんて。」

たちまち大粒の涙をはらはらと落とした。大きな瞳はまばたきもせずに前を見つめている。何か過去の辛い出来事を思い出しているのだ。

横顔をしばらく見つめていたルパン、彼女が愛おしくてたまらなくなった。後ろから彼女を包むように抱きしめた。彼女はされるがままに涙を流している。

自分には分からない彼女の苦しみを、いっときでも忘れさせてやりたかった。頬に唇を押しつけると涙のしょっぱい味がした。

とうとうカレンは彼の胸に顔を埋めて泣き出した。

超フェミニストはどう慰めていいのか分からない。彼女をそばにあったソファーに横たえた。

今日までこの男にしては紳士のマナーを守ってきた。が、惚れた女とここまで四六時中一緒にいるなんて初めてだ。

孫悟空は自分に課していた心の箍(タガ)を、手錠もどきに一瞬にして外してしまった。

「ここでいい?」

「、、、いいわ。」

自分も脱ぎながら手際よく彼女の服を脱がす。

再び唇が近づいてきた時、カレンは観念したように目を閉じた。

しばらく時が過ぎた。

カレンは脱がされた服で体をそっと包まれた。

「一緒に行こ、上へ。」

カレンが目を開けると、彼は後ろを向いたままカジノに行く正装に着替えるところだった。

「スパイなんてやめっちまいな。そんな無理してるとは思わなかったな。ターゲットじゃなくて男としてつきあってくれるまで何にもしないよ。」

「ごめんなさい、そんなつもりじゃ、、。」

彼を嫌いなわけがなかった。でも何も言えない。

「別れた妹がこの上にいるんなら、是非会いに行かなきゃな。」

ジョアンと一緒にいるのは、ルパンを命がけで追っている男だと聞いた。

私のために?誰にも捕まらないため、殺されないためにあなたはここに潜んでいるのに、、。

カレンは起き上がって裸のまま後ろから彼を抱きしめた。そうせずにはいられなかった。

ネクタイ締めていたルパンの方が驚いて、彼女を振り返った。

そしてにっこり笑って言った。

「大丈夫、父つあんにも、君の組織にも気づかれないようにうまく会わせてあげる。」

「私、服持ってないわ、この前のドレス破れてるし。カジノに行くのにこれじゃ、、、。」

「まっかせ~なさ~い。」

隣の部屋から用意していた衣装を一揃い持ってきた。淡いチェリーピンクのカクテルドレス。パールのチョーカーとイヤリング。白い可愛らしいハイヒールパンプス。黒は好きではない。

「君とカジノで楽しもうと思って用意しといた。あ、それとこれも、、。」

一緒に揃えたドレスと同色のランジェリーも渡す。サイズまできっちり調べて。本人の言う通り女にはマメ・マメな性質(たち)らしい。

たちまち真っ赤になるカレン。毎夜ベッドを共にしている男相手に小娘みたいに初心(うぶ)な女だ。

それを見つめる純情男、もうメロメロ。

二人はカジノにふさわしいスタイルに着替え、腕を組んで上へ上がっていった。

もちろんルパンのほうは素顔と言うわけにはいかなかったが。

次回に続く。

日本の銭湯の地下にあるルパンアジトの構造は山上正月さんのお描きになってるルパン三世Yの6巻第23話でお確かめ下さい。

次元と五エ門が出口を間違えて、女湯の方へ上がってしまうという話。

ルパン三世のYとかMとか、モンキーパンチさんのルパンじゃないと思ってる人が結構いるけど山上さんのストーリーは粋で奇想天外で好きですね。

ルパンがいい男過ぎてちょっとTVアニメの主人公のルパンとイメージ違いますけどはまりますよ。

毎回見に来てる君、ありがとよ。来週は俺が父つあんと絡む話だ。題して「カジノ・サバイバル」だ。

え、古い映画の題名みたいってか?

映画より面白いんだな、これが。

次回、ま~た会おうぜ!(山田康雄さんの声で)

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(24)

(24)天国と地獄

カレンが頭を上げると、車からほんの1メートル先に、ルパンの腕と銃があった。

「お待たせ。」

何事も無かったかのように、平然とした顔で銃を懐にしまう。

カレンははっとして後ろを見た。

追いすがって来た悪漢が、30メートルほど後方で仰向けに血を流して倒れていた。

下りて確かめる。男の額のど真ん中に穴。多分即死だ。

「殺さなくても、、。」

「こっちが殺されてたら、んなこた言えねえだろ。」

軽々と車に跳び乗ってきた。

「良かった、車に傷つけなくて。」

「かまうこたねえ、どうせ借りモンだ。」

この男やっぱり極悪非道、正真正銘の悪党だ。

「ところで運転と撃つのとどっちがいい?」

「殺さない方。」

「じゃ、ハンドル頼む。」

「OK。」

泥棒とスパイはそれぞれ役割分担を果たした。

外へ出るとオープンカーに向けてヘリの男が爆弾を投げてきた。カレンが巧みなハンドルさばきで右に左に避け、ルパンが悪漢を狙い撃ちだ。

ヘリの運転席側のガラスにひびが入る。車は低い屋根のあるアーケード街に突っ込む。ヘリは追撃したが、浮上しそこなって屋根の一部に激突、炎上。迷走しながらどこかへ遠ざかっていった。

車はにぎやかな歩行者天国の道路を突っ走る。人々は逃げ惑い、真っ赤なポルシェは人の波を押しのけて闊歩した。そのまま街の大通りへ抜け、まっしぐらに走って国営カジノの重厚な宮殿の前に到着。

スタッフは恭しく待ち受けてドアを開けてくれた。

ところがルパンは車を預けると、正面玄関へではなく反対側の従業員用の駐車場へカレンの手を引っ張って行った。

「表から入るには、俺は有名すぎるんでね。」

従業員用の立体駐車場の隅に隠れ家直通のエレベータがあった。それに乗る。ルパンは地下2階のスイッチを押した。

個室の薄暗い照明に照らし出される男の無表情な横顔。不気味なほど寡黙だ。それは陽気で脳天気な芸人でも、さっきまで彼女をエスコートしていたセレブなイケ面でもなかった。

一体、幾つの顔を持っているのだろう。外見だけでなく人格さえ一瞬にして変えてしまう恐るべき男。

彼からは血の匂いがした。追って来る敵をその手で殺したのだ、おそらく全員。

カレンはつないでいた手をそっと離した。

アジトについて行くのは果たして安全だろうか。アジトを知る自分を弄んでから始末するか、監禁して人質に取るつもりでは、、、。

彼はさっきからずっと押し黙ったままだ。

ドアが開き、アジトへ向かう薄暗い通路が現れた。少し遅れて歩きながら、カレンはこの静寂を何とかしたかった。

「私を殺すの?」

「まさか。ここで君と生き延びるためさ。」

「私はあなたを轢き殺したかもしれないのに。」

「君は俺を殺さない。」

「悪党は、、、、みんな死んだの?」

「君を助けたかった。殺らなけりゃ殺られちまう。」

「人を殺したら天国へは行けないわ。」

「天国がほんとにあるんなら、君と行きたい。」

ふと、彼が立ち止まって彼女のほうへ振り向く。

「君は殺さない?誰も?」

ふいに見えない弾丸が彼女の心に撃ち込まれた。

「誰も、、、、、誰も殺したくない。」

この仕事についてから今まで数え切れないほど嘘をついてきた。悪党を罠にはめるためだ。嘘をつかなければ殺される、殺さなければ殺される。

でも今は彼に嘘をつくのがこんなにも辛い。心臓に打ち込まれた楔を彼にだけは気づかれてはならない、、、、、、。

「一緒に死ねたら地獄から脱獄して君を盗みに行くかな。でもそれじゃ君が幸せになれないね。」

彼は私のために命賭けで人殺しまでした。私を先に行かせたのはその場を見せたくなかったからだ。ケダモノじゃない、心を持った人間だ。残虐行為をした自分を呪い、心に傷を負って血を流している。この無表情は癒えない痛みを隠すマスクなのだ。

痛みはストレートに跳ね返って彼女の心にも大きな傷を負わせた。

涙が頬を幾筋も伝ってポタポタ落ちた。大きな瞳から心も一緒に溢れた。

「私のために堕ちるんなら、地獄までついてくわ。」

彼が息を飲んで彼女を見つめる。

感情のうねりが二人の中で同時に堰を切った。

暗がりで互いに唇を貪りあう。カレンは地獄の業火で彼とともに焼かれる自分を感じていた。

うっすらと瞳を開けると、心がむき出しの狼の眼がそこにあった。

抱き合ったまま、ルパンが壁の隠しスイッチに手を触れる。

アジトの扉が開いた。

「ようこそ姫君、難攻不落の俺の城へ。」

狼は胸に手を当て、不埒なほど馬鹿丁寧なお辞儀をした。手を取って彼女を迎え入れる。

地下2階にあるアジトは何でも揃った快適な住まいだった。厳重なセキュリティシステムで守られているほかはパリのアパルトマンにでもいるようなたたずまいだ。

10分後、シャワールームでシャワーを浴びているカレン。

案の定、ルパンがあとから無理やり押し入ってきた。あわてて胸を隠すカレン。

「ここ狭いから二人は無理よ。ちょっと待ってて。」

「あのホテルでの続きするはずだったろ?」

「え、そんな約束、、、、だめよ、、だめなの。」

キスしようとするルパン、手で彼の口を押さえるカレン。

「俺はだめ?」

「そうじゃなくて、、、、、。」

ルパンはもう彼女を体ごと抱きしめていた。

お湯が二人の体の隙間を激しく流れ落ちていく。

「こういうの苦手なの。私あんまり感じないって、、」

「そう?俺も。だから気にすんなよ。」

言いながら首筋にキスする。

カレンが可笑しそうに笑い、指で黒々としたモミアゲをつまむ。

「嘘つきねえ、あなたって。」

「泥棒は嘘つきの始まり、いやその逆だってか。感じないって誰に言われたの?」

彼女のその指を握りしめ、ほっそりした白い指を口に入れてなめ回すルパン。

シャワーのお湯のせいではなく、体の芯から熱いものがこみ上げてきた。

「前に付き合ってた人。」

「そりゃひどいね。でも俺なんかもっとひどい事言われた事ある。」

「なんて?」

「この色ボケ変態スケベオヤジ、変なとこ握らないでよ!」

いきなりカレンの声がルパンの口から飛び出した。

カレンはしばらくあっけにとられ、やがて大口開けて笑い出す。笑い声がシャワールームに響き渡る。

「俺そん時まだ電車のつり革しか握ってなかったのに。」

あんまり笑いすぎて涙を拭くカレン。

「確かにひどいわね、今同じ事言おうと思ってた。」

「だよな。きれいなモンに触りたいのが男だよ。スケベと違う、サービス精神旺盛。君も元カレを見返してやれよ。アタシは男をその気にさせる天下一のお色気娘よって。」

「そう思う?」

「だからそれ証明しようや、俺と。」

カレンがまた大口をあけて笑ったので、ルパンは口で口に蓋をしてから背中を思い切りくすぐった。カレンはルパンの頭からお湯を浴びせて応戦した。そのまま二人は絡まり合う。

これで3度もこのおかしな悪党に驚かされた。でもなぜか丸め込まれても抵抗できない。彼となら地獄の底ででも楽しめそうだ。

シャワールームの刷りガラスに映る二人のシルエット。カレンは乱れ、このまま天国へ駆け上ってしまいそうな感覚に酔いしれていた。

彼に抱かれてベッドルームに運ばれていくのも気づかないほどに。

次回に続く。

ルパン三世母の会、友の会の奥様、こんな破廉恥なルパンを書いてしまって誠に申し訳ございません。ほんとのルパン三世は、、、、、、もっと破廉恥です。(笑)

日本全国8千万のアダルトの諸君、こんな中途半端でこの章を終えてすんません。お楽しみはハイこれまでよ。

青少年、良い子のみんな、もう寝る時間だゾオ。次回を楽しみにな。

ほいじゃま。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(23)

(23)泥棒VS女スパイ

結局、カフェでの夕食の約束をすっぽかしてしまった。めったに人との約束を破ったことのないカレンだったが、急に仕事が入って待ち合わせ場所に行けなくなってしまった。断りのメールを送っても、相手はしょっちゅうメルアドを変えているらしくて連絡がつかなかったのだ。

帰りがけに自宅のポストを見ると、ルパンの手書きの招待状が入っていた。またしても真紅のバラの花束が添えられて。

あきれるほどしつこい男だ。でもすっぽかした分の埋め合わせだけはしなくては。

正装でと書かれていたので、彼女の持ってるのでは最高のドレスを身に着けて来た。

今夜の夜空の色、踝まである無地のシルクサテンのドレス。照明の当たり方によって銀河が流れるように、岸辺の小波のようにきらきら光っている。

ふわりと羽織った薄地のストールの下に白い肩が透けているが、それほど大胆に胸元はあいていない、上品な仕上がりだ。

アクセサリーはパールネックレスだけ。仕事柄アクセサリーは邪魔になることがあるからだ。

「こないだは待たせて悪かったね。」

ビル最上階、高級レストランの入り口にあるVIPルームで待っていたカレンが目を上げると、レモンイエローの花束を持った白いタキシード姿の男が、人懐こい笑顔を浮かべて立っていた。

胸に小さな生花のコサージュをつけた申し分ないスタイル、イケ面と言ってもいい程の男だ。

誰かしら、まさか彼じゃないと思うけど。

「あの、、。」

「やあ、お久しぶりです。これナマの俺ですけど、、、、分かる?」

手を出して握手を求めるイケ面男。

「あなた、、、、この前の人?」

化かされてる気分のカレン。

「実はルパンに化けたゴリラだったりして。」

彼の瞳が茶目っ気たっぷりに踊っている。

そもそも最初の出会いが悪すぎた。安宿でナンパする男と引っ掛けられる女だもの。目の前にいる男はどう見ても資産家の御曹司か、メルセデスベンツなんかを乗り回す大会社の若社長といったところ、多分イタリア系だわ。

カレンは今までこんな豪奢なホテルのレストランに一人だけ招かれたことがなかった。

ここはラスベガスでも有名なシェフが取り仕切る超高級レストランだ。金曜日だというのに広いフロアに人は思いのほか少なく、窓側は二人の貸切状態。実はルパンが窓側10テーブルを借り切っていた。

最上階の一番窓側の席から、カジノの街の「1000万ドルの夜景」が宝石のように煌いているのが見える。

ルパンに花束を渡され、エスコートされて予約の席についたカレンは何となく落ち着かない。

椅子を引いてくれて席に着いた時から最後のデザートまでの2時間、映画か夢の中のような時が過ぎた。

テーブルの中央の丸いワイングラスの中に色とりどりのキャンドルの炎が燃えて、ファンタスティックだ。

最後のメニューが運ばれてくるとフロアの灯りが落とされ、窓の外の市街地の灯りが二人の足元に絨毯のように広がった。

「あなたとの取り引きがまだすんでなかったわ。」

フルコースのディナーが終わるや否や持って来た資料を渡そうとする。

「もういいんだ。それ、口実。」

「何の?」

「君に見せたいものがある。」

「見せたいもの?」

「こっち来て。」

ルパンがカレンの椅子を引いて窓際へ誘う。足元まである窓だ。外に広がる宝石をばらまいたような光の絨毯と煌く星を並んで見つめる。今夜は晴天、どこまでも澄み切った夜空だ。

「きれいね、、。」

カレンはため息をつく。それ以外の言葉が見つからない。

「だろ。ここがベガスで一番の場所なんだ。君と一緒に見たかった。」

しばらく二人で眺める。

彼がいつの間にかカレンの腰を包むように抱き、彼女は自然に寄り添う。

が、ふとカレンは我に返り、彼の腕を振りほどく。窓のそばに離れて立つ。

「あなた、私を味方に引き入れて何をしようとしてるの?」

「俺の顔、そんなに極悪人って書いてある?」

後ろからそっと寄って、彼女の栗色のストレートヘアに触る。今日はアップにして後ろでまとめている。おくれ髪がサラ、となびいて、右の耳の後ろにそっと何かが触った。彼女がちょっと緊張するのが分かる。

「これ似合うよ。今夜の君は最高だ、とても警官には見えない。」

彼が胸の生花を彼女の髪にそっと挟んでいた。香りのよいフリージア。もちろん発信機などは付けてない。

「あの時は必死だったから、、。」

「君に会いたくてあれからずっと馬鹿みたいにつけ回してた。」

「泥棒なのに警官をつけ回すの?」

「泥棒だからさ、君のハートを盗みたい。」

後ろから再び髪に触ろうとした彼からすり抜けるカレン。

「あのね、あなたに助けてもらって感謝してる、だけど仕事の付き合いよこれは。」

「これからは仕事抜きに付き合うっての、どう?」

「考えとく。」

「君、スパイにも警官にも向いてない。」

「あなたこそ、こんな人生してたら命がいくつあっても足りないでしょ。」

「この前君ん家からの帰りにあいつらにすれ違った。何とかまいたが、今度行ったら嗅ぎ付けられて君も危ないかも。」

「恨まれるような、何したの?」

「まあね、恨まれるって程じゃないが、あいつらの金塊320トン(約9600億円相当)頂いちまって。」

「彼らはそれを取り戻そうとしてるの?」

「いや、もうない。」

「どこへ、、、」

「ばらまいちまった。世界中の良い子のクリスマスプレゼントに。」

データに記されていた。世界的な海賊、広域テロ組織に指定されているあの「スターゲイト」が世界中から集めて隠そうとした金塊を、まんまと盗み出し一夜にして世界中にばらまいた男。

ではこれは怨恨による復讐なのか。

しつこく毎日のようにルパンを尾行する男たちは、同じようにしつこく足繁くカレンの家に通い詰める彼の足取りを追って、いつか彼女の事も知るに違いない。命の危険は彼と同じくらいある事になる。

「で、頼みがある。」

「たまに食事をするのはいいけれど、5分おきにメールくれたり、毎日家へ花束を届けるのはやめてくれる?」

「君の命が危ないんだ。俺と一緒にある場所へ避難してくれないか。」

何処へと言いかけた途端、ルパンの携帯のコール音がした。見知らぬ男からだ。

「ルパン、俺たちをコケにしてのうのうと生きていられると思うな、今度こそ終わりだ!」

夜景を映し出していた厚い窓の向こうに、黒光りの飛翔する物体が見えた、それは二人の立っていた場所の真向かいで静止した。

「伏せろカレン!」

分厚いガラスが粉々になって飛び散った。ルパンはカレンの体の上に被い被さって身を守った。迷彩色のヘリが真正面から機銃掃射してきた。レストランの客やスタッフの上げる悲鳴。エレベータに向かって避難を始める。

ルパンは機敏に彼女の前にテーブルや椅子を組み倒した。自分もその後ろに隠れながら、相手の様子を覗う。ほんの数十秒の間、掃射がやむ。カレンを抱き起こし、フロアの反対側にあったエレベータに向かって走る。

「こっちに乗れ!」

右端をさす。3台のうちの右端はVIP専用。直通で下まで降りられる。ただし4名までしか乗れない小型だ。

ルパンはVIP専用のカードを持っていた。カードでドアを開けた。二人が乗ろうとすると、隣のエレベータには従業員など人がいっぱいだった。一般のエレベータの方に乗れそうもないお客が4名ほど取り残されてこっちを見ていた。

「早く!」

その時カレンが辛そうな顔をしてルパンを見た。

自分たちだけこれに乗ってはだめ。

彼女の瞳がそう言っていた。2人がそのままぐずぐずしてると、4人が先にVIP用に乗りこんでしまった。もう満員だ。

ルパンはカレンの腕を引っつかむと別の道へ回った。あとは階段を行くしかない。二人は屋内階段を駆け下りた。

最上階といえ28階しかない、そう思って油断したのがいけなかった。屋上に降り立ったヘリから、階段を通じて悪漢が追いかけてきた。カレンを連れ、回り階段を必死で駆け下りる。

上から数人の男が弾をぶち込んでくる。駆け下りながら応戦するルパン。

ここで弾切れだ。いったん階段の隅に隠れて、弾を装填しながらカレンに言う。

「先に地下へ降りてて、これ車のキー、行けば分かる。今からアジトに向かう。」

「私も持ってる。」

カレンが自分の愛銃ブローニングを見せる。

「先に行ってくれ、頼む!」

カレンは後も見ずに一人で非常階段を駆け下りた。彼なら大丈夫だ。

途中で悲鳴が聞こえ、誰かが吹き抜けを下まで落ちていったが、そっちに目を向けないで駆け抜けた。

彼じゃない、絶対に。

1階から地下のガレージに抜けた。彼のキーには番号がついている。キーレスエントリー式の車だ、鍵が開いた車が彼のに違いない。

広い地下ガレージを走り回ってどの車かを確かめようとした

駐車場の通路を横切ろうとした彼女の前にハイスピードで灰色の車が突っ込んできた。とっさに身を翻したが、すんでのところで轢かれるところだった。その車から2人男が下りてきてカレンを追いかけた。

ドレスにハイヒールでは追いかけっこに勝ち目はない。ゆっくりと手を上げて降参するふりをした。向こうが女一人と思って油断したその隙に一人の顎を蹴り上げ、ひっくり返って落とした男の銃をさらに遠くに蹴飛ばし、もう一人の男が銃を自分に向ける前に言い放った。

「女一人になんてザマなの?」

一瞬の隙をついて、男より早く彼女の愛銃が火を噴いた。心臓ではなく肩を打ち抜かれて男はそばの柱にすがりついた。素早く手錠をかけ、柱に縛り付ける手際はさすがCIAだ。

その瞬間、彼女が弾よけにすがっていた真っ赤なオープンカー、ポルシェのロックが解除された。鍵についてる番号と足元に書かれている番号が同じだ。

跳び乗って鍵を鍵穴に差し込むと、自動でどこかにランプがつき、車止めがコンクリートの床下に沈んだ。車を発信させ、出口に向かう。

もう一人の敵が再び彼女を追いすがる。

と、100メートル先の駐車場の出口でポルシェと同じ派手な色のジャケット姿のルパンが立っていた。

良かった、無事だった。

彼を乗せるためにアクセルを緩める。

ところが彼は懐からワルサーP38を取り出し、真正面にいるカレンに向かって狙いを定めた。

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片方の眉を吊り上げ唇の端を曲げた男、あれはニセ者?

いいえ、絶対に本人だわ。すると初めからこれは彼の計略だった。私を油断させ、ここで始末するために。

、、、、だったらやるしかない、、。

緩めたアクセルを再び踏んだ。フルスピードで突っ込んでいく。むろん轢き殺すつもりなどない、相手がどんな凶悪犯であっても。

車で突っ込めば避けるに決まってる。それが彼女の狙いだった。

対するルパン、片手でワルサーを構えたまま全く動じる気配はない。

キューン!

弾の発射とともにカレンは身を伏せ、そのままルパンの直前でブレーキを踏んだ。

地下駐車場に怪物の悲鳴のようなタイヤの軋み音が響きわたった。

次回に続く。

この小説は特に女性に楽しんでいただけるように書きました。でも男にも面白いシーンが次回あるかんな、乞うご期待。

ほいじゃま。

テロ組織「スターゲイト」とルパンの確執は、俺の創作小説「炎のたからもの」をお読みいただけば分かります。まだ読んでない君は、右サイトバーにある小説のサイト入り口から入ってお読み下さい。10編の作品、どれも傑作です。自分で言うのも自慢ですが。

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ルパン三世長編小説第3弾「見果てぬ夢」(22)

(22)泥棒の休日

「ヒャッホー!も~う最高!君と一緒だもんな!」

カレンはあきれ顔で隣にいるゴリラを見た。

奴の格好といったら本物の猿以下だ。首から下は毛むくじゃら、どう見ても着膨れした類人猿と言うしかない姿で、鉄のバーに肩と腰を縛り付けられている。

ディズニーランドではなく、米国ユニバーサルスタジオ最新のジェットコースターに乗ってさっき360度回転したばかりだ。肩と腰を固定されてるだけの乗り物で、宙づりの両足は浮いたまま。逆さになっても文字通り手放しで喜んでいる。

カレンの方は同じ乗り物に4回で、さすがに飽きた。こちらは「キャー」とも言わない肝の据わった女。

その日指定されたベンチに座って待っていたら、ゴリラの着ぐるみが愛想良く手を振って近づいてきた。そいつはパントマイムで隣の席に座っていいかと聞く。

「いいわ、少しこっち詰めてね、そこは指定席なの。」

毛むくじゃらのでかい尻を振って腰を下ろすと、カレンがベンチからずり落ちそうになった。

「俺が指定したんだけっども、二人で座るには狭すぎたな。」

カパッと着ぐるみの頭の蓋が開いたと思ったら、泥棒の素顔が笑っていた。

「お待たせ、10分遅れですまない。やっかいな奴らをまくのに手間取っちまって。」

「変装の名人て聞いてたけど。誰かにつけられてたの?」

「デートの相手に素顔で会えないなんて悲しいもんな。」

素顔には違いないが首から下はゴリラだ。初デートの日に動物の着ぐるみを着て現れる男なんて彼以外にはきっといない。

「さってと、お約束。ジェットコースターがいい?それとも飯にする?」

「例のデータ持ってきたわ、先に話を終わらせましょ。」

「こんなデート日和に仕事の話?」

「先に面倒な事済ませてからね。」

「分かったよ。じゃ済んだらデートしてくれよ。」

「仕方ないわ、約束ですものね。私の携帯に120回もメール送って54回留守電入れたのはあなたでしょ。」

「121回目さっきすぐそばで入れたんだ、分かった?」

「え?あ、そう?」

カレン、自分の携帯メールを見る。I LOVE YOUと15回書かれたあとに「3タク選べ。1、ジェットコースター 2、お茶か飯 3、映画」となっていた。

カレンは急いで1を選んで返信した。

こんな変てこな男と長居は禁物だわ。

メールを見ている間に変てこな男はカキ氷を買ってきた。カレンにレモン色の方を渡す。自分のは何もかかっていない氷だ。

ビール缶を腹のポケットから取り出した。

それでお腹を冷やすつもり?

どうするのか見ていると缶をあけ、カキ氷にビールをかけて食べ始めた。

唖然とした。食べるのを忘れて見入るカレン。

「も~暑くて暑くて、、、どうした?早く食べなよ溶けちまうぜ、やっぱ氷はこれでなくっちゃ。どう?君も。」

その後ゴリラの着ぐるみを来たままの相手に連れられ、ジェットコースターに乗る羽目になってしまった。乗り場でスタッフとすったもんだした挙句。

「お客さん、そんな服装で乗るのは困ります。」

「でもね、この下な~んもつけてないのよ。」

「だから着替えてまた出直して、、。」

「だあってこれが彼女と人生最初で最後のデートかもしんないでしょ。明日はもう会えないかも知れない人と一生の思い出作りに乗りたいんだと言ったら許してくれるよな、お兄さん。」

スタッフが答える前にさっさとジェットコースターのベルトを締めて座ってしまった。

ジェットコースターから下りたとたん、暑苦しいスーツ姿の怪しい男たち数人が向こうからやって来るのが見えた。

とっさにルパンはゴリラの頭を被って周りの子供たちにパントマイムで愛想を振りまいた。うっほうっほとやりながら、そばにあった屋台のフルーツショップから勝手にバナナを3本掴み、そのままバナナでジャグリングを始めた。そのうちバナナはもう1本増えて4本になった。

子供たちだけでなく大人や家族など、あたりに人だかりが出来始めた。人の波に気づいてか、スーツ男達は一人ずつ消えてゆく。

今度は3本ジャグリングしたまま、1本のバナナを左右に持ち替えながら皮をだんだんむいていき、最後に中身を着ぐるみの口に放り込んで食べた。皮だけになったのを捨てて、3本を後ろ手に放り投げて前で受け止め、深くお辞儀。大拍手。

バナナ屋のオヤジがモンク言いに来た。

「金払ってよ、あんた。」

その場で残り3本のバナナの皮を剥くと、ま、細かいこと言わずにと嫌がるオヤジを捕まえて無理やり口に突っ込み食べさせる。爆笑が起こり、この大道芸は店の宣伝と思った人たちが少しばかりバナナを買って去って行った。

拍手に気をよくした大道芸人はお調子に乗って着ぐるみのまま側転、バック転と大サービス。再び拍手が沸き起こった。愛想を振りまき、観客に向かって10回投げキッス。途端に捨てたバナナの皮でズルリと滑ってドタリとこける。

バナナの皮を引っぱたき、自分のお尻触って痛そうにしているうちにバナナの皮が跡形もなく消える。消えた皮に驚いてそこら中探しまくるオバカなゴリラの演技。あっと指差すと一人の観客の背中あたりから皮が出てくる。爆笑、再び拍手。

やがて日が傾き、観客は一人また一人と去っていった。

芸人はお辞儀をしながらあたりを見回した。デートの相手はとっくに帰ってしまったに違いないとガッカリしながら。

カレンは最初に会った時のベンチに座って一部始終を見守っていた。

ルパンはほっとしながら彼女に近づいた。ゴリラの面をカパとあける。全身汗びっしょり、クタクタ、ヘトヘトだ。

「カレン、ゆっくり話できないから今晩ここで待っててくれ。」

晩飯のレストランの住所を渡す。

「あなたって不思議な人。正体が知りたくなったわ。」

彼は笑った。

「俺の事だんだん好きになってきた?」

「あの黒服の人たち、なぜあなたをしつこくつけ回すの?」

「さあね、昔悪い事して俺にやられた奴が仕返しでもすんじゃねえの?」

「あっちが極悪人なのか、あなたがよっぽど悪い人なのか、、、。」

ふと気づくと、そばに5歳くらいの男の子がひとり立って、ルパンを待ち受けている。

「どうした、ボウズ。」

ルパンはその子に寄ってしゃがみ、人懐こい笑顔を向けた。

「おじさん、あしたもやるよね。」

「さっきのか?」

こっくりと頷く。

「明日は、、、もうやらないんだ。」

「どうして?」

男の子の顔がこわばり、泣きそうに見えた。

「ボウズ、どうしても見たいか?」

もう一度頷く。

「分かった、じゃそこで見てな。」

ルパンは面を開けたまま、3回側転、続けて2回バック転し、向こうへ行ったかと思ったら、すごい勢いで走って帰ってきた。つるつるの路面を膝で滑り込んできて止まり、そのまま男の子を肩車した。

「ボウズ、遠くはよく見えるか?」

「ウン。」

「さっき俺がやってた時よく見えなかったんだよな。」

「そう。」

「今度から、前の方で見せてって言いな。」

「ウン、分かった。」

「俺の肩車特別サービスだかんな、あすこの木に登ったら終わりだ。言うこと聞かねえとあのお姉さん魔女だから、お前に魔法をかけちゃうぞ。」

腰の高さの木の枝に男の子を座らせた。彼はお姉さんの方を目を丸くして見つめ続けた。

ルパンはカレンに向かって軽くウィンクすると人ごみに消えていった。

今日の取引はルパンが必要とするデータを渡す見返りに、彼のこれからの計画を聞き、地図の秘密を探る事だった。アルバート・ナインシュタイン博士の過去の経歴と現在の研究の内容をルパンに渡すはずだった。

CIA(中央情報局)の中枢で勤務している彼女は、ほとんど全ての関係者のデータを取り出せる部署に、以前は所属していた。

ルパンはそれを知って自分に接近して来たのだろうか。

彼の経歴は十分調べてきたつもりだった。女たらしのくせに次々と女に言い寄っては振られ、女に貢いでは捨てられ、最近は一味と言われる女にさえ裏切られたらしい。

今までに殺した人間は数知れず、マフィアのドンよりも裏社会では恐れられている世界的な怪盗。

本当にあれが世界に暗躍する凶悪犯なのだろうか。

彼のメモにあるのは彼女の自宅近くの行きつけのカフェレストラン。向こうも私の事を詳しく調べてるのかしら。

カレンはターゲットだからというだけではない好奇心をそそられ始めた。

この非情な仕事を始めてからそれだけは絶対にしないと自分に言い聞かせてきた。

それなのに、、、。

次回に続く。

ルパンが「殺しと善人の金には手をつけない」というポリシーを通してるのは「盗み」の手段としてであって、実際には殺した悪党の数なんて自分でも覚えていないほどだと思いますね。

あるオタク本によれば96人以上殺してるんだって。

どうやってそこまで数えたのか、どの作品までのトータルなのかを調べてみたいと思います。

、、、んな暇なことするわけねえだろ。

殺し屋じゃないにしても、捕まったら生きてるうちに牢屋から出られそうにないほどの犯罪者であることは確かです。正当防衛とは言えない状況で女だって大量に殺してるんですから。

ひとりにつき懲役15年としても1440年。(国によっては終身刑とか死刑とかじゃなくって、量刑を通算するらしいです。)殺しも殺したり、ほんとに極悪人。こんな男に惚れる女は最悪な人生でしょう。一緒に地獄へ行ける不二子のようなタフな女じゃなけりゃ。

ルパンがゴリラに扮する話は二つ。一つは「バビロンの黄金伝説」。ゴリラからだんだんチンパンジーに変身してますね、確か。

もう一つはTV2NDシリーズの第35話「ゴリラギャングを追っかけろ」で、ゴリラに扮した不二子の手下に騙され、仕返しに一杯食わせた話だったと思います。(違ってたらごめん。確認します。

ルパンは優れた軽業師でもあります。その腕前は「生きていた魔術師」でご覧になった方はお分かりでしょう。ジャグリングやトンボ返りはもちろん、綱渡り、マジックなどもプロ中のプロです。

このOVA「生きていた、、」は他の作品とは一味違った独特の雰囲気を持っていて、自分は大好きなんですが、あまり高く評価されていなくて残念です。

ピエロに扮したルパンが様々なマジックを披露しながら、ニセ銭形を翻弄する場面はとてもアーティスティック。他の作品にない「ビジュアルな美しさ」を堪能できると思います。まだ見てない人見てくれや。言っとくが、アクション期待してる君には向かないぜ。

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